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焦点:ドル高是正の協調介入、米政府は静観 足元の混乱懸念せず

[ワシントン 29日 ロイター] - 英国と日本に起因する形で金融市場に混乱が生じているが、現時点ではまだ米財務省にポンドないし円を支えるための協調介入を促す局面ではないようだ。複数の米当局者は緊急的に行動する必要性はないと表明。専門家は、混乱の範囲が今よりずっと大きくならない限り、米国の静観姿勢は続く公算が大きいとみている。

 9月29日、英国と日本に起因する形で金融市場に混乱が生じているが、現時点ではまだ米財務省にポンドないし円を支えるための協調介入を促す局面ではないようだ。写真はドル紙幣とポンド紙幣。2021年5月撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic/Illustration)

米財務省からは今のところ、市場のボラティリティーが協調介入を要するほど高まることを懸念する声はほとんど聞こえてこない。痛手を受けているのはポンド建てと円建ての金融資産に限定されているからだ。

米連邦準備理事会(FRB)も当惑する様子は見えない。クリーブランド地区連銀のメスター総裁は29日、米国市場には大幅利上げでインフレを抑え込もうとするFRBの政策運営に軌道修正を迫るような動きは見当たらないと発言した。

そもそもポンドの急落は、トラス英新政権が打ち出した大型減税などが財政圧迫につながると受け止められたことが原因だ。一方、円安が進んだのは、FRBや他の主要中銀が利上げに動くのと極めて対照的に、日銀が超緩和的な政策を厳守している状況に関係している。

かつて米財務省高官や国際通貨基金(IMF)職員を務め、現在はシンクタンクの公的通貨金融機関フォーラム(OMFIF)米国議長のマーク・ソベル氏は、協調介入は何年かに1回あるかないかという深刻な危機だけに発動する伝家の宝刀としてずっと温存されていると分析。さらに各国の政策の方向性が大きくかい離している場合、成功する確率は下がってしまうと説明する。

ソベル氏は「市場が極端に無秩序で不安定になれば、(協調)為替介入の妥当性が得られてもおかしくない。しかし今のように金融政策の足並みがそろっていない中で介入しても、天に唾するようにかえって弊害を生むだろう」と述べた。

実際に過去2日間のバイデン政権高官らによる発言からは、ドル高の流れを止めようという意欲はほとんど感じられなかった。また米国はIMFと同じく、英国の積極財政方針に不賛成で、インフレ退治のための取り組みの効果を弱める政策は自重してほしいと考えていることが分かる。

レモンド米商務長官は28日、英国の財政計画は「想定外で大きな動き」だったが、市場は予測可能性を求めていると指摘。「ビジネス関係者は世界の指導者がインフレを非常に深刻に受け止めるよう望んでいる。英新政権にそうした姿勢を見て取るのは難しい。減税と同時に支出を拡大する政策は短期的にはインフレとの闘いに適さない」と発言した。

ホワイトハウスのある高官は、バイデン政権が英国に対し、IMFの助言を聞き入れて財政計画の修正に動くよう説得するかどうか聞かれると「われわれは世界経済情勢に関して英国や他の国際的パートナーとのやり取りを続けていく」とだけ答えた。

27日にはイエレン財務長官が記者団に、市場は順調に機能しており、金融安定のリスクを示唆する流動性問題は見当たらないと語った。

ディーズ国家経済会議(NEC)委員長は同じ日、ドル高を阻止するために主要7カ国(G7)による1985年のプラザ合意の再現はあるのかと質問されると、「われわれがそこに向かっているとは予想していない」と一蹴した。

<ドル高長期化に伴うリスク>

複数の専門家の話では、現実問題として米国のインフレを抑えるという意味で、ドル高はFRBの利上げほどではないものの、一定の貢献をしてきている。

プラザ合意前は、米国の産業界や労働者団体、農家など、特に自動車業界にドル高で輸出競争力が低下していると強い不満が広がっていた。しかし足元でそれほどの苦情は出ておらず、これまでドル高が米国の輸出に幅広い打撃を与えているわけでもない。

商務省のデータを見ると、今年1─7月の財・サービス輸出は前年比20%、輸入は22%それぞれ増加し、新型コロナウイルスのパンデミックで損なわれた貿易活動が着実に回復している流れが読み取れる。

ただバイデン政権1年目に米通商代表部(USTR)のシニアアドバイザーだったブラッド・セスター氏は、ドル高局面が長くなるほど、輸出が重圧を受けて波及リスクが蓄積される可能性が高まってくると警告する。

セスター氏は「ある段階ではインフレとの闘いが経済の最優先課題だが、別の段階になれば、世界経済の不安定化を増大させつつあるドル高が及ぼす影響について米国が完全に無関心でいられるとは思わない」と述べた。

同氏によると、今後ドル高がもたらす重大なリスクとして挙げられるのは、中国が大幅な元安誘導を決断することだ。そうなると市場にさまざまな影響が出てくるためで、「今のドル高は中国がどこまで通貨の安定にコミットするのかを試している」という。

(David Lawder記者)

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