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焦点:中国ファーウェイは対米戦略転換か、巨額特許料要求の訳

[ワシントン 14日 ロイター] - 中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]は米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズVZ.Nに対し、同社の特許技術に関するライセンス料として10億ドル(約1080億円)を支払うよう要求している。

 6月14日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズに対し、特許料10億ドル(約1080億円)を支払うよう要求しているが、これは同社の対米戦略転換だろうか。中国深センで1月撮影(2019年 ロイター/Aly Song)

これは窮地に追い込まれたファーウェイの米国市場戦略が変化している可能性を示唆するものだ。

この件に詳しい人物によると、ファーウェイ幹部は2月に送付した書簡でこの要求を行ったという。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は12日、この書簡について初めて報道。要求金額は、230件以上の特許に関するライセンス料に対するものだという。

ベライゾンの広報担当者リッチ・ヤング氏は、「司法が絡む可能性があるため」コメントを拒否した。

ただし、「こうした問題はベライゾン1社にとどまらない。地政学的背景を考えれば、ファーウェイを巡るどんな問題もわれわれの産業全体に影響を与え、国家的・国際的な関心を呼ぶことになる」とヤング氏は語った。

ファーウェイにもコメントを求めたが、回答は得られなかった。

以下に、こうした特許紛争が特に異例ではない理由と、どのような解決法があり得るかを説明する。

●特許技術のライセンス供与は一般的か

特許技術のライセンス供与は、特に電気通信産業のように複雑な業種では、ごく当たり前のように行われている。技術の進歩につれて、特許権侵害を回避することはますます難しくなっている。有効な米国特許は数百万件もあり、普通のスマートフォンでも、数十万件の特許が使われている。

アップルAAPL.O、ノキアNOKIA.HE、クアルコムQCOM.Oといった企業は、世界各国の政府が付与する特許を多数保有している。

これらの企業が、膨大な特許ポートフォリオを使って稼ごうとすることは珍しくない。例えばノキアでは、特許を他社にライセンスすることにより、年間10億ドル以上の収入を得ることが常態となっている。

ベライゾンなどの大企業であれば、自社が侵害しているかもしれない特許を特定しようとするものだ、とニューヨークの特許弁護士ガストン・クラウブ氏は語る。だが、毎年非常に多くの特許が付与されているため、そうした作業が困難な可能性があるという。

「ベライゾンなど世慣れた企業であれば、いつどのような特許権者がライセンス料を要求してくるか分からないということを理解している」とクラウブ氏は言う。「次に誰が要求してくるか分からないから、要求があった時点で、それに対応して交渉すればいい」と携帯通信事業者やスマートフォンメーカーが考えている可能性はあると同氏は言う。

ファーウェイは、しばらく前からベライゾンが自社の米国特許を侵害していると認識していたものの、ビジネス上の理由から、代償請求を今まで控えていた可能性がある、とミネソタ大学で特許法を研究するトム・コッター教授は指摘する。

「(特許権者が)一定期間、特許権を行使しないこともあり得るが、行使したいと思えば、いつでもその選択は可能だ」とコッター教授は言う。「そういう例は昔からある」

●ベライゾンが支払い拒否したら、どうなるか

ファーウェイは最終的に、ベライゾンによる特許侵害を米国の裁判所に訴える可能性がある。

訴訟することなく解決に至る特許紛争も一部にあるが、訴訟に持ち込まれることも、かなり一般的だ。ファーウェイと韓国サムスン電子005930.KSは世界各国で訴訟合戦を展開していたが、先日、条件は非公開ながら和解に達した。

特許訴訟における被告側は通常、「問題とされる特許を実際には侵害していない」、あるいは「特許付与自体が誤りであって無効とされるべきである」と主張する。

特許権者側は訴訟の中で、裁判官に対し、侵害製品の販売差し止め命令を求める。米国でこのような差し止め命令が認められることはまれだが、こうした脅しが、特許権者と和解しようという被告側の動機となる場合もある。

法律の専門家は、ファーウェイが訴訟を準備している可能性は高いと指摘する。

「10億ドルも要求しておいて、少なくとも当初それを拒否され、訴訟の必要が生じるという心構えがないとは考えにくい」とクラウブ氏は言う。

●ファーウェイは特許権行使に積極的だったのか

ファーウェイは長年にわたり、米国での特許侵害訴訟において原告ではなく被告として有名な存在だった。だが、それも変わりつつあるのかもしれない。

ファーウェイの特許出願件数は、10─15年前には比較的少なめだったが、2007年頃から特許出願に積極的になり、特に近年はそれが顕著だとカリフォルニア州プレザントンのテクノロジー企業Relecuraで特許アナリストを務めるGeorge Koomullil氏は言う。

トランプ政権によってファーウェイ製品の米国販売が難しくなってきているため、同社が米国特許のマネタイズ(収益化)に力を入れるようになっているかもしれない、とクラウブ氏は指摘する。

昨年成立した国防権限法(NDAA)では、安全保障上の懸念を理由にファーウェイ製品の購入に連邦予算を充てることを幅広く禁止。

トランプ政権は先月、ファーウェイが特別な承認なしに米国の重要技術を購入することを禁止した。そして、同社製の設備を米国の電気通信ネットワークから事実上排除した。

ファーウェイによるライセンス料請求は、「米国市場で収益をあげる方法を見つけたいという必死の思いを反映している。製品を提供し、企業にモノを売るという従来の道が閉ざされてしまったことを考えれば、なおさらだ」とクラウブ氏は語る。

ワシントンのマッカーター・アンド・イングリッシュで政府契約を担当するフランクリン・ターナー弁護士は、ファーウェイにとって、特許ライセンス料の請求が米国に「報復」する1つの手段になっている可能性もあるという。

米共和党のマルコ・ルビオ上院議員は13日、ベライゾンに対するファーウェイの請求は「特許権主張という根拠のない、しかしコストの大きい戦場を用意することで、米国に報復しようという同社の試みだ」とツイッターに投稿した。

(翻訳:エァクレーレン)

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