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焦点:高度化する米メキシコ密入国、リストバンドで越境者管理

[米テキサス州ペニタス 9日 ロイター] - 米・メキシコ国境のリオグランデ川の渓谷沿い、テキサス州ペニタスに近い丈の低い草原には、メキシコからの越境者たちが剥ぎ取った色付きのプラスチック製リストバンドが何百本も捨てられている。

 米・メキシコ国境のリオグランデ川の渓谷沿い、テキサス州ペニタスに近い丈の低い草原には、メキシコからの越境者たちが剥ぎ取った色付きのプラスチック製リストバンドが何百本も捨てられている。写真はペニタスで9日、ホンジュラスから到着した4歳の男の子のリストバンドを外す米当局者(2021年 ロイター/Adrees Latif)

米国の国境管理当局者によれば、金を払って密入国する人々を把握するためのリストバンドで、有力麻薬カルテルや密入国斡旋業者の間で、そうした動きが広がっていることの証拠だと言う。

赤、青、緑、白…色とりどりのプラスチックバンドには、「到着」や「入国」を意味するスペイン語のラベルが付いているものもあり、ロイターへの証言者によれば、移民たちが急ごしらえのイカダで川を越えた後、投棄されているという。

いったい何に、どのように使われているのか、これまで広く報道されたことはなかった。

<斡旋料の支払いを把握>

国境警備員から逃れようとする移民もいるが、それ以外のほとんどは中米諸国からの家族連れか、親を伴わずに旅をしてきた年少者で、自ら国境管理当局に出頭し、たいていは亡命を申請する。

テキサス州南東部、3万4000平方マイル(約8万8000平方キロ)以上にわたって拡がるリオグランデ渓谷地帯の国境巡視員は、このところ複数の逮捕に携わる中で、こうしたリストバンドを着用した移民に遭遇している。

米税関・国境警備局のマシュー・ダイマン広報官はロイターの取材に対し、「リストバンドに記された情報は、密入国斡旋組織が利用している多数の情報を示している。(仲介料の)支払い状況や、どの斡旋組織が扱っているかなどだ」と語る。

民主党のバイデン大統領率いる政権が、トランプ前大統領が進めた厳しい移民政策を覆そうと試みている。共和党からは、厳格な移民政策を緩和すれば移民危機が生じるとの警告が発せられている。

暫定のデータに通じた2人の人物によれば、この2月、米国の国境管理当局が米・メキシコ国境で行った逮捕や移民の即時国外追放措置の件数は10万件近くに達しており、月ベースでは2019年半ば以来最多となっている。

<通過料、数千ドルにも>

ワシントンのシンクタンク「バイパーティザン・ポリシー・センター」で移民・国境政策担当ディレクターを務めるテリーザ・カーディナルブラウン氏は、(リストバンドによる)識別システムは、米メキシコ国境を越えて移民を流入させている犯罪組織の高度化を象徴している、と話す。

カーディナルブラウン氏は「犯罪組織は、ビジネスのようなやり方をしている」、つまり「より多くの支援者を見つけ、効率を追求」している、と指摘する。移民は米国まで移動するために数千ドルを払う場合もあり、密入国斡旋業者は、メキシコ領内の複数地域を通過させるために麻薬カルテルに金をつかませなければならない。

「これは金儲けのための事業であり、誰が支払い済みか注意深くチェックしなければならない」とカーディナルブラウン氏。「リストバンドは、移民を把握する新しい手法ではないか」

だが移民問題の専門家によれば、メキシコ北部で活動する犯罪集団は以前からずっと、どの移民がギャングの支配地域を通行する権利を得るための代金、さらには米国国境を越えるための仲介料を支払い済みか記録するシステムを使ってきたという。

カーディナルブラウン氏によれば、2019年、高速バスに乗って国境に到着する中米諸国からの移民が増大したとき、密入国斡旋業者は「バスを降りる前に支払い状況を確認できるよう、移民の氏名と識別番号」をダブルチェックする形で、移民希望者を監視していたという。

<命を守る「紫のバンド」>

テキサス州マッカレンと国境を隔てる、メキシコ有数の危険な街レイノサで、1人の移民がロイターの取材に応じた。報復を恐れて匿名を希望しつつ、その人物は自分が着けていた紫のリストバンドの写真を見せてくれた。

彼は数カ月前にホンジュラスからレイノサに到着し、この街の犯罪組織の1つに500ドル(約5万4000円)を払い、誘拐や強奪から身を守るための紫のリストバンドを確保したと話した。別の犯罪組織の支配下にある川を渡るために移民か斡旋業者が金を払えば、別のリストバンドをもらえるという。

「こうやって、私たち移民や『コヨーテ』は危険を免れている」と言う。「コヨーテ」とは、スペイン語の隠語で、密入国斡旋業者を意味する。

匿名を条件に取材に応じた密入国斡旋業者は、リストバンドが麻薬カルテルの支配地域を通過する権利のために金を払ったことを明示するシステムであることを認める。

「リストバンドを身につけていれば、間違って殺されることはなくなる」とこの斡旋業者は言う。

移民や斡旋業者らは、渡河の権利のために金を払ったことを明示するリストバンドを使用するのは、抗争の多いタマウリパス州で河川に面した地域を支配する麻薬カルテルが必要としているシステムだと話している。

今年1月、レイノサからわずか40マイル(約70キロ)しか離れていないタマウリパス州内で、ある移民グループが虐殺された。この事件に関連して逮捕されたのは、現地のメキシコ警察官12人である。

(Adrees Latif記者、Laura Gottesdiener記者、Mica Rosenberg記者)

(翻訳:エァクレーレン)

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