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焦点:米緊急利下げ、真の理由は「信用リスク」か ドル需要が急増

[東京 5日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が3日、新型コロナウイルスによるリスクへの対応として緊急利下げを実施したが、短期金融市場ではその前後にドルのキャッシュ需要が急激に強まっていた。長年の金融緩和や量的緩和で膨らんだ民間債務にまつわる信用リスクが、大幅な利下げの背景にあったと複数の専門家は指摘する。

 3月5日、米連邦準備理事会(FRB)が3日、新型コロナウイルスによるリスクへの対応として緊急利下げを実施したが、短期金融市場ではその前後にドルのキャッシュ需要が急激に強まっていた。写真はスペインのセビリアで2014年11月撮影(2020年 ロイター/Marcelo Del Pozo)

<FRBがレポ市場で過去最大の資金供給>

米短期金融市場では、米連邦準備理事会(FRB)傘下のニューヨーク連銀とのレポ取引を通じてドルのキャッシュを確保しようとする市場参加者の動きが急激に強まっている。

3日の緊急利下げの直前に、ニューヨーク連銀がオファーした翌日物のレポオペ(米財務省証券等を担保に資金を供給するオペ)では、1000億ドルの入札予定額に対して1086億ドルの応札があった。応札額が予定額を上回るのは昨年9月にレポオペが再開されて以降初めて。

2週間物(ターム物)のレポオペでは200億ドルのオファーに対して3.5倍以上の709.5億ドルの応札があり、FRBは合わせて1200億ドルと、過去最大の流動性供給を行った。これまでの記録は昨年10月24日の891億ドルだった。

さらに、4日に実施された翌日物のレポオペでも、1000億ドルのオファーに対して1115億ドルの応札があり、大幅利下げ後もドル調達需要が根強いことが判明した。

<株安で資金調達の危機感強まりも>

FRBは3日、米経済は力強いが、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を和らげるためとして、50ベーシスポイント(bp)の緊急利下げを全会一致で決定し、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を1.00―1.25%に引き下げた。

しかし、専門家の間では、緊急利下げの真の理由は、長年続いた金融緩和や量的緩和を背景に大幅に積み上がった民間債務にまつわる信用リスクがあるとの見方が出ている。

マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表の亀井幸一郎氏は「FRBの懸念は、単なる新型ウイルスによる景気の落ち込みではなく、株価崩落に端を発した信用市場への危機の波及にあるのではないか」と言う。

株安の中で、危機感を高めた投資家の間では、ハイイールド債(ジャンク債、債務不履行リスクの高い低格付け債)からの資金の引き揚げが目立っている。さらに、最近では投資家が個別に銘柄を判断しなくてもETF(上場投信)などで、各種ハイイールド銘柄を組み込んだパッケージ商品があるが、それらが解約され、資金が流出する現象もみられている、と亀井氏は指摘する。

「エネルギー産業など、財務体質の弱いところでも、カネ余り環境の下で容易に資金調達ができていたが、警戒感が高まるとそうはいかなくなる」(亀井氏)という。

FRBによると、米企業部門(非金融法人の企業と個人経営者)の総負債残高は2019年9月末に約16兆ドル(1720兆円)に上り、米国の国内総生産(GDP)の74%に達している。前回同水準が74%に達したのは、世界金融危機直後の2009年3月末だ。

株安をきっかけにリスク回避のセンチメントが広がり、債務の貸し剥がしが起きれば、金融危機の引き金にもなりかねない。

「米国の緊急利下げについては、25bpでもよかったはずだが、短期金融市場でのドル資金の取り上がりを見て、市場参加者を落ち着かせるために、あえて50bpの利下げを決断したのではないか」と三井住友銀行のチーフストラテジスト、宇野大介氏はみている。

<レポオペの縮小計画は停止か>

FRBは昨年9月中旬、短期金利の急騰を受けて短期金融市場への介入を開始した。

10月に開始した月間600億ドルの財務省短期証券(Tビル)買い入れは年央まで継続する方針だが、短期の流動性供給を目的とするレポオペは4月まで段階的に縮小され終了する計画だった。実際、FRBのレポオペ残高は2月末時点で1434億ドルと1月1日の2556億ドルから大幅に低下した。

しかし、過去1、2日にみられたドル・キャッシュの取り上がりは、FRBの計画に見直しを迫りそうだ。

三井住友銀の宇野氏は「レポオペもTビルオペも規模を拡大して、期間を延長する可能性がでてきた。さらにその先には実質的な量的緩和の再開という道も開けてくるだろう」と指摘。その上で「現状では利下げに対するドルの感応度は高く、再び米国が利下げすれば素直に105円方向に進むだろう。ただ、米国の利下げ余地が徐々に狭まるなかで、ドルの感応度は低下していく」と予想する。

リフィニティブのデータによると、翌日物レポ金利USONRP=は2日と3日に1.80%と、それまでのFF金利誘導目標レンジ1.50─1.75%を上抜け、年末の資金繰りで金利が急騰した昨年12月31日以来の高水準となった。

ブラード米セントルイス地区連銀総裁は4日、レポ市場の支援について、4月まで支援を続け、その後はどうするか考えるとした。

編集:石田仁志

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