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アングル:苦境の米シェールガス業界に暖冬が追い打ち

[21日 ロイター] - チェサピーク・エナジーCHK.Nをはじめとする米シェールガス開発業者が正念場を迎えようとしている。既に多額の債務を抱え、原油価格下落のあおりを受けて苦闘しているところに、暖冬が到来しているためだ。暖冬によって暖房需要が減退し、天然ガス価格も下落しており、経営環境が厳しいこの局面で収入が急減する恐れが出てきた。

 12月21日、チェサピーク・エナジーをはじめとする米シェールガス開発業者が正念場を迎えようとしている。 写真は米コロラド州天然ガス採掘場。昨年12月撮影(2015年 ロイター/Jim Urquhart)

気象情報サービスの米アキュウェザーのシニア予報士、デール・モーラー氏によると、例年12月後半までには、全米の3分の1から半分の地域が雪で覆われるのに、今年は主として人口が少ない中西部の北半分やロッキー山脈周辺に降雪が限定されている。

こうした中でポイントロジック・エナジーのバイスプレジデント、チャールズ・ネブル氏は、米国中のガス田では「どうやって成長するかを考えるどころか、どうやったら生き残れるかの心境にある。そして今は天気のことしか関心が持たれていない」と指摘した。

足元ではテキサス州に拠点を置くマグナム・ハンター・リソーシズMHRCQ.PKとキュービック・エナジーCBNRQ.PKが破産を申請。米天然ガス生産第2位のチェサピークは、エバーコア・アドバイザーズと協力して債務再編や資産売却を模索している。

18日にはニューヨーク・マーカンタイル取引所で、米天然ガス価格が100万英熱量単位(BTU)当たり1.68ドルと16年ぶりの安値に沈み、1990年代以降で初めて来年第1・四半期中の受け渡しまでの取引が軒並み2ドルを下回った。

IAFアドバイザーズ・アンド・クライテリオン・リサーチのエネルギーアナリスト、カイル・クーパー氏によると、あと2カ月暖冬が続けば、天然ガス先物は1.25ドルまで下落する可能性がある。これは開発業者にとって採掘コスト割れを意味する。

<減産迫られる事態も>

一方、暖房用の天然ガスが欠かせない地域にとって、この12月はかつてないほど気持ちが楽になりそうだ。アキュウェザーのデータでは、12月前半は暖房が必要な気温に達した日数の割合がシカゴでは毎年平均より36%、セントルイスでは42%少なくなった。

このため先週の米天然ガス在庫は1年前よりも16.4%増加。半面、生産は9月の過去最高水準からわずかにしか減っていない。

MDAウェザー・サービシズの気象予報士ドン・キーニー氏は、過去2回の冬は厳しかったが、今回はエルニーニョ現象の影響で穏やかな状況が続く可能性があるとみている。

来春になっても在庫が減らなければ電力会社の貯蔵スペース不足の問題などで、開発業者は減産に動かざるを得ない。

これまで業者は実際に減産しなくても済んでいた。例えば2002年の暖冬期には、より妙味のある原油開発にシフトしたのだ。

しかし現在は原油先物価格も約6年ぶりの安値となっており、新規油田開発を進めようという意欲も高まっていない。

<ヘッジもままならず>

天然ガスを輸入に頼っているアジア地域などでは価格は米国よりもずっと高い。ただ米国から即座にそうした地域に天然ガスを輸送できるインフラは整っていない。米国産天然ガスの最大5%を消費するまでに成長したメキシコ市場向けにはパイプラインが通っているが、拡張してもそれに見合う需要が出てくるかは不透明だ。

米国内では天然ガス価格が非常に安くなったことで、電力会社による石炭からの切り替えが進み、この面での天然ガス消費が今年過去最高水準(米生産量の35%)になったのは明るい材料といえる。

それでも暖冬が開発業者にもたらしている悪影響の方がはるかに大きい。業者は価格下落からのヘッジもままならずにいるのが実情だ。

コンサルティング会社エナジー・アスペクツによると、独立系上位20社の来年見込まれる生産量に対するヘッジ比率は32%と、過去数年間よりも大幅に低い。

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