May 25, 2018 / 1:43 AM / in 24 days

米朝首脳会談中止、市場影響は:識者はこうみる

[東京 25日 ロイター] - トランプ米大統領は24日、来月12日にシンガポールで開催される予定だった米朝首脳会談を中止すると北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長に通告した。米朝会談中止を受けたマーケットの見通しについて、市場関係者のコメントは以下のとおり。

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏>

前日のドルは108.95円まで下落し、5月8日以来2週間超ぶりの安値をつけたが、基本的には自律反落の範囲内とみている。ドルは3月末に104円台に下落した後、押し目らしい押し目もなく111円台にほぼ一本調子で上昇してきており、高値警戒感が出ていた。そこに米国による輸入車関税引き上げ検討やトランプ米大統領の米朝首脳会談の中止通告などの話題が舞い込み、スピード調整のきっかけに使われたという見立てだ。

このような政治ネタは、マーケットトークの素材として鮮度が高いうちは反応も大きくなるが、米国のマクロ経済成長率や民間企業の収益、金融政策運営などに響かないものは、ノイズとして処理したい。

ドル/円の方向性を探る上では、日米のベースマネー格差や短期金利差を重視しており、骨太のトレンドはドル高/円安をみている。原油価格の上昇で国内輸入企業のドル買い需要が増えていることや、クロスボーダーM&A絡みの思惑も下値を支えるだろう。

よほど悪材料が重なれば108円を割り込む可能性もあるが、そこから下は底堅いイメージ。上は直近高値を抜くところまではあるかもしれない。向こう1カ月のドルのレンジは107.50─112.00円を想定している。<大和住銀投信投資顧問 経済調査部部長 門司総一郎氏>

米朝首脳会談中止は、リスクプレミアムの観点で言えばマイナスだが、市場への影響があるとすれば一過性のものになるとみている。むしろ米国による自動車関税の問題を含む通商問題の方が重要だ。鉄鋼とアルミの関税について、米国が安全保障の理由で引き上げられるかどうかの調査を始めてから、1年ぐらい時間を要している。自動車についても1年ぐらいかかるとすれば、発動する頃にはトランプ米政権がレームダック化している可能性もある。実現性にも疑問符は付くが、少なくともすぐに決まる話ではない。

足元では欧州のPMIがここにきて低下している。一時的要因によるものとみているが、リスクとして注目すべきだ。また通商問題が長引けば、企業の設備投資計画に影響を及ぼす。経済指標にはまだ表れていないが、今後影響が表面化する恐れもある。新興国では通貨安で利上げに追い込まれるケースが出ている。市場参加者の多くは、トランプ米大統領の問題はあるにしても、ファンダメンタルズは良好だという前提を立てていたが、これらのリスク要因にしっかりと向き合わなければ方向性を見誤ることとなる。

10月までは米国の「政策ラッシュ」が見込まれる。今回の自動車のように、トランプ米大統領が打ち出すポピュリズム的な政策が株価の重しとなりそうだ。景気は一時的な弱さはあるものの、問題はないということを前提にすれば、政策ラッシュが終われば、株価は上に抜けやすくなるだろう。短期的にはEU(欧州連合)との米国の鉄鋼とアルミニウムを巡る関税の交渉期限が6月1日とされており、ここでどのような結果となるか注目される。また米共和党が再減税を公約の柱にする動きも出ている。財政赤字の方にフォーカスが当たれば、「悪いドル安」になりかねない。

<SMBC日興証券 金融財政アナリスト 末澤豪謙氏>

トランプ米大統領が6月12日にシンガポールで開催される予定だった米朝首脳会談を中止すると発表した。

昨日出た書簡の内容が穏当だったことからみて、完全に会談が流れたということではなく、いったん仕切り直しという感じだろう。トランプ流の交渉術のひとつと受け止めている。世界が、少なくとも米中間選挙まで振り回される展開は今後も続くと思われるため、引き続き経過を注視する必要がある。

株式市場には、米朝首脳会談の中止や、自動車輸入に関する通商拡大法232条に基づく調査開始などが重しになる。円債市場に関しては、日銀のイールドカーブコントロール(YCC)政策により、大きく動くことはないとみている。

<ストーン&マッカーシー・リサーチアソシエーツ(ニューヨーク)の市場ストラテジスト、ジョン・カナバン氏>

市場に長期的な影響が及ぶとは考えていない。数日前から今回の米朝首脳会談は実現しない可能性があることは明らかになっていた。

トランプ大統領による会談中止の発表は、市場で条件反射的に「リスクオフ」の反応を引き起こしたが、長期的な影響はそれほど大きくないはずだ。通商問題の方がより大きな長期的な影響を及ぼす可能性がある。

<コモンウエルス・フォーリン・エクスチェンジ(ワシントン)の首席市場アナリスト、オマー・エシナー氏>

トランプ大統領が米朝首脳会談を中止すると発表したことを受け、世界的な金融市場はやや「リスクオフ」ムードになっている。株価は下げ、外為市場では特にドル/円が大きく反応した。

ただ、今のところは条件反射的な動きであるように見える。米国と北朝鮮の双方に首脳会談の実現に向けた大きなインセンティブはあるとみている。6月に実現しないかもしれないが、米朝双方にこうした関係が崩壊しないことに対する多大な関心はあるとみられる。このため、ある程度の外交努力が継続されるとの希望は持てると考えている。

さらに、会談中止の発表はトランプ米政権側による何らかの交渉戦術である可能性もある。

ただ、すべてはまだ非常に初期の段階にある。米朝首脳会談の中止が発表されたことは外交にとり当然打撃となるが、現時点で外交が排除されたと必ずしも考えていない。

 5月24日、トランプ米大統領は、来月12日にシンガポールで開催される予定だった米朝首脳会談を中止すると北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長に通告した。写真はホワイトハウスで発言する同大統領(2018年 ロイター/Kevin Lamarque)

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