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アングル:銃暴力で揺れる米大統領選、両候補の試金石に

[ワシントン 8日 ロイター] - 米テキサス州ダラスで警官狙撃事件が7日発生してから数時間、米大統領選で共和党の候補指名を確実にしたドナルド・トランプ氏と、民主党のライバル、ヒラリー・クリントン氏は急きょ、選挙集会を中止。両氏のツイッターアカウントは、ほぼ静まり返った。

 7月8日、 米テキサス州ダラスで警官狙撃事件が7日発生してから数時間、米大統領選で共和党の候補指名を確実にしたドナルド・トランプ氏と、民主党のライバル、ヒラリー・クリントン氏は急きょ、選挙集会を中止。両氏のツイッターアカウントは、ほぼ静まり返った。写真はペンシルベニア州フィラデルフィアで講演するクリントン氏。8日撮影(2016年 ロイター/Charles Mostoller)

警官12人が狙撃され、5人が死亡したこの事件は、2016年の選挙シーズンにおいて、また1つの震撼すべき出来事となった。クリントン、トランプ両候補はこれまで、海外でのテロ攻撃や、国内の銃撃事件、そして警官による黒人射殺への抗議デモに対して、正しい対応を見つけようと躍起になっている。

狙撃事件の大部分は、スマートフォンでのライブ中継や、ケーブルテレビのニュースなどで延々と繰り返し伝えられ、調査によれば、身の安全に対する人々の懸念を高めている。

これは1968年の記憶を呼び覚ますものだ。ベトナム戦争に対する抗議と人種差別による激動の時代に、公民権活動家キング牧師と民主党の大統領候補ロバート・ケネディ氏がこの年、暗殺された。

「私たちは銃暴力による野蛮な行為を目の当たりにしており、政治や公共の場においてもわれわれを二分している」と歴史家のダグラス・ブリンクリー氏は語る。「48時間ごとに、私たちの心を動揺させ、新たな次元へ引っ張っていこうとする恐ろしい事件が起きているようだ」

歴史的に先行き不透明な時代では、政権が失脚する傾向がある。例えば、イランで米大使館人質事件が進行していた1980年、共和党のロナルド・レーガン氏が、現職の民主党のジミー・カーター大統領を破った。金融危機が米経済を襲った2008年には、民主党大統領候補だったオバマ氏が共和党候補ジョン・マケイン氏に勝利した。

しかし、これはトランプ氏には当てはまらないかもしれない。同氏はいまだ統率力のある人物だと米国人の大多数を説得できていないからだ。

トランプ氏のダラス事件に対する初期反応は、同氏がリスクをわきまえていることを示している。大げさで扇動的だと、しばしば批判されるこれまでの公での発言と違い、同氏は結束を訴える冷静な声明文を発表した。

「われわれの国はあまりにも分裂してしまった。あまりにも多くの米国人が希望を失ったように感じている。犯罪があまりにも多くの市民を傷つけている。人種間の緊張はますます悪化し、改善していない。これは、われわれの子どものために望むアメリカン・ドリームではない」と、トランプ氏は述べた。

「おそらく今ほど、強いリーダーシップと愛、思いやりが必要な時はない。われわれはこの悲劇を乗り越える」と語った。

<人種間の溝を埋めて>

米大統領選で人種問題がより大きな問題となるなかで、トランプ氏が検討を進める副大統領候補の1人、ニュート・ギングリッチ元下院議長はFOXニュースの取材に対し、トランプ氏と副大統領候補が、多くのアフリカ系米国人が住む都市中心部に行くことで、広く考えをアピールすることができると語った。

銃暴力の激発に対応するため、クリントン氏は銃業界に対するさらなる規制を求めており、黒人への暴力に抗議する「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)」運動に同調している。

クリントン氏は、ルイジアナとミネソタ両州で起きた警官による黒人射殺事件を受けて、複数のテレビに出演し、自らが人種間の溝を埋めるために生涯働いてきたと述べた。ダラスでの警官狙撃の実行犯は、両州での射殺事件に怒りを感じたと警察に供述している。

「彼らアフリカ系アメリカ人の家族の立場に立って考えてみるよう、私のような白人の人々に呼びかけたい。彼らは子どもたちがどこかに行くたびに心配している。私は白人の人々について話すつもりだ」と、クリントン氏はCNNで語った。

民主党ストラテジストのバド・ジャクソン氏は、クリントン氏が適切な調子で語っていると述べた。

「これは、彼女が利用すべき問題ではない」とジャクソン氏は話す「実際、彼女がこれを利用していると受け止められれば、彼女にダメージを与えるだろう」

とはいえ、有権者のあいだで変化を求める要求は圧倒的となっている。ロイターとイプソスが過去5週間に実施した世論調査によると、3分の2近くの米国人が、国が誤った道を進んでいると感じていると回答。これは経済やテロの脅威、さらには暴力に対する一般的な不安を反映している。

「クリントン氏の課題は、こうした問題に彼女が対処できること、そして彼女が変化をもたらすことで、今と同じではなくなることを示さなければならない」と大統領制に関する歴史家、トーマス・アラン・シュワルツ氏は指摘する。

トランプ氏は、クリントン氏が11月8日の大統領選に勝てば、それはオバマ大統領の3期目に等しいと述べてきた。クリントン氏は、2008年の大統領選でライバルだったオバマ大統領の政策の多くを受け入れ、先週は一緒に選挙運動を行っている。

2012年の大統領選では共和党候補ミット・ロムニー氏、2016年にはマルコ・ルビオ候補のアドバイザーを務めたランヒー・チェン氏は、米政治における市民との会話が、人々の不安を抑えるのに役立つだろうと指摘する。

「礼儀正しさや言葉遣い、話法、さらにはリーダーたちがわれわれの良心にどうアピールして、どうアピールしないかについて、大きな問題があるように思える。これこそが問題の本質だ。私はこれを全体的にリーダーシップの欠如とみている」と同氏は語った。

(Steve Holland記者、翻訳:高橋浩祐、編集:下郡美紀)

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