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アングル:企業は「ハイブリッド勤務」投資、オフィス資産に暗雲

[ニューヨーク 1日 ロイター] - 経済活動の再開が進む米国。企業によるビデオ会議システムへの投資は増大し、共有勤務スペースを拡大する計画もあることから、リモートワークとオフィス勤務を組み合わせる「ハイブリッド・ワーク」は今後も続くことがうかがわれる。ニューヨークやサンフランシスコ、その他の主要都市の商業不動産価格は足を引っ張られる可能性がある。

7月1日、経済活動の再開が進む米国。企業によるビデオ会議システムへの投資は増大し、共有勤務スペースを拡大する計画もあることから、リモートワークとオフィス勤務を組み合わせる「ハイブリッド・ワーク」は今後も続くことがうかがわれる。米サンフランシスコで2020年3月撮影(2021年 ロイター/Stephen Lam)

リモートワークを支えるテクノロジーの売上高は、パンデミックの影響を受けて急増した後も、なお増大傾向にある。市場調査会社NPDグループによれば、USB接続カメラとPC用マイクの小売売上高は、昨年3-5月に2019年同期比で倍増した後、今年は前年同期比でさらにそれぞれ77%と36%増加した。

パソコン周辺機器メーカーのロジテック・インターナショナル は今年初め、ウェブカメラやクラウドベースのビデオ会議機器の売上高が3月までの12カ月間で前年同期比3倍増の14億8000万ドル(約1644億円)となり、2021年も好調を持続するとの予想を発表した。

モルガンスタンレーの調査では、過半数の企業が、高コストの不動産を縮小するため勤務スペースの共有をさらに進める予定であることが分かっている。

モルガンスタンレーで不動産アナリストを務めるビクラム・マルホトラ氏は、「多くの企業の経営幹部は、従業員が皆オフィスに戻ってくることを望んでいるが、テクノロジー投資計画を見れば、フレキシブルな職場環境の必要性を彼らが認識していることが分かる」と語る。

「ハイブリッド・ワーク」 の台頭は、ニューヨークやサンフランシスコといった都市におけるオフィス需要にとって逆風となる。両都市では最近、話題性のあるオフィスビルの販売がほとんど見られない。ラサール・インベストメント・マネジメントによれば、機関投資家による両都市でのオフィス資産保有額は、それぞれ2310億ドル、1280億ドルだという。

パンデミックが一段落してから賃貸の動きは回復しているが、賃料は低迷し、空室率も依然として高い。これがオフィスビルの価値には重しとなり、取引の妨げになっている。

クッシュマン&ウェイクフィールド によれば、たとえばマンハッタン地区でのオフィス物件の販売総額は昨年54億ドルと前年の半分以下に下落し、2021年第1四半期もわずか4190万ドルにとどまっている。

前出のマルホトラ氏は、在宅勤務のトレンドによって賃貸物件に対する家主側の価格決定能力が弱まり、投資家がオフィス資産に期待できる利回りも減少すると見ている。モルガンスタンレーでは、こうした変化によって、米国内のオフィススペースは約13%減少すると予測している。

不動産コンサルタント企業のグリーンストリートは6月、リモートワークによるオフィス需要へのマイナスの影響は約15%になるとの予測を示した。

ムーディーズ・アナリティクスでチーフエコノミストを務めるマーク・ザンディ氏は、「ニューヨークやサンフランシスコなどグローバルな窓口になる大都市を代表的な例として、オフィス価格は低迷している」と語る。

<加速した変化>

多くの企業は少なくとも何らかのリモートワークを認める予定だ。スイスの金融大手UBSグループ は今週はじめ、業務のほとんどをハイブリッド・ワークとする計画を発表した。ゴールドマン・サックス やモルガンスタンレー などの企業は、ハイブリッド・ワークを本格導入することに抵抗している。

医療テクノロジー企業サーナーのトレイシー・プラット人事最高責任者によると、同社では2万7000人の従業員のうち75%が、勤務時間の半分をリモートで働く「ダイナミック」型の勤務形態となる可能性がある。

「双方の最も優れた部分を活かしたい。このモデルでそれが可能だと確信している」と同氏は言う。

ハイブリッド・ワークがオフィスの縮小につながる、あるいは長期的にその魅力が続くと誰もが考えているわけではない。

パイパー・サンドラーでアナリストを務めるアレックス・ゴールドファーブ氏は、ほとんどの従業員は週3-4日出勤するようになる可能性が高く、その場合スペースの統合は難しくなるだろうと語る。

その一方で、「人は自分がゲームに参加していると思われたいものだ。そして、現場に立っていないのに勝てるようなゲームなどない」と、同氏は付け加えた。

とはいえ、しばらく前から進行していた変化をパンデミックが加速したのは確かだ。

建築事務所のボーコンがパンデミック前に設計したオフィスは、従業員の20%がいわゆる「ホット・デスク」で働くようデザインされていた。複数の労働者が別々の時間に同一の物理的な執務場所を使用する方式だ。ボーコンによれば、今では40%以上をこうした共有スペースに割り当てるクライアントも出てきているという。

ボーコンのオーナー兼代表のデブ・ドンリー氏は、「特定の場所に毎日出勤することを従業員に求めるのは理にかなっているだろうか。場合によっては、パンデミック以前からその意味は失われていた」と語る。

ジョーンズ・ラング・ラサール 傘下のラサール・インベストメント・マネジメントは、アナリストらの見解として、オフィススペース需要低下が急激でなくても、稼働率や賃料、資産価値には悪影響が出ると述べている。それによれば、需要が5-10%低下すれば空室率が上昇し、オフィス不動産セクターの回復が5年ないし10年遅れることになる、という。

ラサールで共同最高投資責任者(南北アメリカ担当)を務めるリッチ・クラインマン氏は、ラサールではパンデミックのかなり前から、オフィスビルへの投資残高を減らしてきたという。

「多くの人々は、オフィスビルを保有するために長期的に必要な資本を正確に評価してこなかった」とクラインマン氏。「他のいくつかの資産タイプに比べてリスクとリターンのバランスが魅力的とはいえない」

(翻訳:エァクレーレン)

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