May 7, 2020 / 11:41 AM / 18 days ago

フォトログ:香港「戦場」の記録、ピュリツァー賞に

[香港 5日 ロイター] - 地面に押さえつけられた若い女性のすぐ脇に、香港武装警察の盾が写る。当局に拘束されたその女性は仲間に向かって叫び、弁護士に連絡するよう頼んでいる。

地面に押さえつけられた若い女性のすぐ脇に、香港武装警察の盾が写る。当局に拘束されたその女性は仲間に向かって叫び、弁護士に連絡するよう頼んでいる。民主化を求める香港の抗議デモを取材したロイターの一連の写真はピュリツァー賞を受賞した。2019年9月2日、香港で撮影(2020年 ロイター/Tyrone Siu)

昨年9月2日に撮影されたこの写真は、半年以上にわたって香港を揺るがした暴力的で、大規模な民主化要求デモの様子を写した1枚だ。ロイターのカメラマンが捉えた瞬間の数々は、このほど報道写真部門でピュリツァー賞を受賞した。

数万人の抗議参加者で埋め尽くされた大通りを上から広角で写したものから、デモ隊と警官隊の衝突をクローズアップしたものまで、現場のカメラマンたちは様々なアングルからデモの様子を記録した。

獅子山に登り、「FREE HK(香港に自由を)」という文字を掲げるデモ参加者。2019年9月13日撮影(2020年 ロイター/Athit Perawongmetha)

暴力的な衝突は夜に発生することが多く、ある写真には、不気味なオーラのようなものが写っている。催涙ガスの中にデモ隊のシルエットが浮かび上がった写真、丘の頂上で「FREE HK(香港に自由を)」という光る文字を掲げる写真もある。

香港出身のカメラマン、タイロン・シュー記者にとって、この取材は個人的に大きな意味があった。

香港中文大学で武装警察と衝突し、追われるデモ参加者。2019年11月12日撮影(2020年 ロイター/Tyrone Siu)

最も激しい衝突が起きた香港中文大学を卒業した彼は、母校が戦場に変わる様を目撃した。公営の競技場は負傷した抗議参加者が集まる巨大な避難所と化した。

一方で「写真ジャーナリストとしての職務を果たし、同僚の外国人ジャーナリストが急速に変化する状況に対応できるよう支援するために、殺伐とした雰囲気のなかでも冷静でいなければならなかった」と、シュー記者は振り返る。

深水埗(シャムスイポー)で起きた衝突のさなか、デモ隊に催涙ガスとゴム弾を発射する武装警察隊。2019年8月14日撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)

押さえつけられながら叫ぶ女性を撮ったのはシュー記者だ。数カ月にわたり、ときには戦場とさえ思える香港の街を取材した。中でもこの場面は彼の記憶に強く残っている。

「女性の顔に浮かんだ感情が非常に強く鮮明だったので、いつまでも記憶に残っている」と、彼は言う。「だがそれは、何カ月も続いた抗議活動の1日に過ぎず、同じように警察に拘束された多くの若者の顔の1つでしかない」

衝突が発生し、警官隊による催涙ガスに包まれたデモ隊。2019年11月12日、香港中文大学で撮影(2020年 ロイター/Tyrone Siu)

 <取材に駆け回る日々>

ロイターのピュリツァー賞受賞は2008年以降で8回目となる。香港のデモを巡るロイターの報道は、国際報道部門でも最終選考に残った。

通りを埋め尽くすデモ参加者。彼らは香港政府の執行部辞任と、犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改定案の撤回を要求した。2019年6月16日撮影(2020年 ロイター/Athit Perawongmetha)

ロイターが香港情勢を重点的に取材しはじめたのは、大規模な抗議集会が発表されるようになった昨年6月。大規模な抗議が暴力的な衝突に変化し、時が経過するとともに抗議運動が分散化し、取材計画を立てにくくなった。

「タイロン(・シュー)の土地勘と人脈が役に立った。おかげで取材チームは、次にどのような展開になりそうか情報を集められた」と、ロイターでアジア地域の写真部門を率いるアハマド・マスードは言う。「抗議活動の現場を駆けずり回った。昼夜を問わず激しい衝突がいくつも続いており、4人のカメラマンが市内別々の場所で取材していたこともあった」

返還22周年を迎えた2019年7月1日、デモ隊は立法会(議会)に突入し、香港特別行政区のエンブレムにスプレーを吹き付けた(2020年 ロイター/Tyrone Siu)

写真のなかには、抗議に参加していない市民が混乱に巻き込まれる場面もある。空港の外でスーツケースを押して走る搭乗客の姿や、眼鏡店を出ようとしたら通り火炎瓶の炎が上がっているのを見て身を屈める男性の姿も撮影されている。

香港国際空港への道をデモ隊が封鎖したため、空港利用者はトランクを押して歩かざるを得なくなった。2019年9月1日(2020年 ロイター/Anushree Fadnavis)

目を背けたくなるような瞬間もある。トーマス・ピーター記者が撮影したのは、マスク姿のデモ参加者が、親中活動家と疑われた男性をハンマーで攻撃している場面だ。被害者の頭部からは流血がみられる。

中国本土から来た活動家と疑われた男性を、マスク姿のデモ参加者がハンマーで攻撃した場面。2019年11月11日、旺角で撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)

ジョルジ・シルバ記者は、政権支持を示す中国国旗を手に、怒りの表情を浮かべながら自分のスマートフォンに向かって叫び、自撮りする女性をカメラに収めた。彼女を囲むデモ参加者が持つスマートフォンの画面には、1989年6月4日起きた天安門事件の公式検証を求める言葉が映し出されている。

政権支持を示す中国国旗を手に、怒りの表情を浮かべながら自分のスマートフォンに向かって叫び、自撮りする女性。反中のデモ参加者に囲まれている。2019年9月12日、元朗駅で撮影(2020年 ロイター/Jorge Silva)

「ジャーナリズムの歴史に刻まれるのは11人のカメラマンの名前だ。だが、ローテーションを組みながら2019年の香港を取材したロイターのカメラマンは28人に上る」と、ロイターの写真部門を統括するエディターのリッキー・ロジャースは言う。

ロジャースは現場を支えたバックオフィスの存在にも言及。「賞うんぬんではなく、本当に重要な仕事、つまり報道して世界に伝えていくためには、こうした人たち全員が不可欠なのだ」と話す。

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