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焦点:半導体生産、国策主導の苛烈レースに 供給不安が拍車

[26日 ロイター] - 世界各地の政府が半導体工場建設に補助金を出そうと動いている。半導体不足で自動車業界や電子機器業界の生産が支障をきたし、重要な製品の供給を台湾だけに依存している状況が浮き彫りになっているためだ。

 世界各地の政府が半導体工場建設に補助金を出そうと動いている。写真は昨年10月、アリゾナ州チャンドラーのインテルの工場で撮影(2021年 ロイター/Stephen Nellis)

しかし、供給を分散し多様化するために何かしなければいけないということでは皆、思いは同じでも、対応戦略委をめぐる各国政府の食い違いも浮上してきている。半導体産業は好不況の循環を歴史的に繰り返してきたが、各国政府による野放図な支出が過剰生産をもたらすとの懸念があるためだ。

<日米欧に中国も対抗>

米国も欧州連合(EU)も日本も、最先端技術の半導体生産工場に何百億ドルもの支出を検討している。現在は最先端の半導体の3分の2超が台湾で生産されている。しかし、つい最近、米議会で米軍高官が台湾を中国が乗っ取ることが米軍の太平洋地域での最大の懸念だと証言、半導体供給網への不安が高まった。

一方、中国も西側の技術への依存を減らそうと半導体産業に多額の補助金を出している。2019年には290億ドル(約3兆1784億円)の半導体投資ファンドを設立したほどだ。こうした動きが、西側各国による対応強化をさらに促す結果となっている。

最先端の半導体を受託生産できる業者は世界に2社しかない。台湾積体電路製造(TSMC)と韓国のサムスン電子だ。この2社が米国で新工場を計画し、総額300億ドル以上にも及ぶ可能性のある米政府補助金の奪い合いに参入した。きっかけは、アジア以外でそうした半導体工場が強く求められていることだ。

世界の半導体「ビッグスリー」の残り1社である米インテルは23日、劇的な業容変更の青写真を描いて見せた。外部顧客のための生産請負を始め、新工場を米国に2カ所、欧州に1カ所つくる計画を発表したのだ。

とどのつまり、半導体業界は政府が後押しする業界再編にたどり着く可能性がある。これまで数十年というもの、米国と欧州の半導体企業は効率化をうたい文句に台湾と韓国に生産を外注していた。そうすることで、極めて安価な半導体の大量供給を実現してきた。

調査会社VLSIリサーチのダン・ハッチソン最高経営責任者(CEO)はロイターに「今やあらゆる国が自分たち用の生産工場をつくりたがっている」と指摘。「世界的な相互接続の時代から、それぞれに鉛直サイロ状態の生産と供給の態勢を求める時代に変わりつつある」と話した。

<投資戦への参戦か、ニッチ開拓か>

日本ではキヤノンと東京エレクトロン、SCREENセミコンダクターソリューションズが、政府出資の420億円(3億8500万ドル)規模の計画に参加する。2ナノメートルの先端半導体を開発するため、TSMCのような企業と協業する計画だ。日本は将来の先端半導体生産の確保を望んでおり、TSMCの支援を得て東京近郊に試験的な生産設備をつくることを目指している。

半導体製造のインフレがほとんどないインドでさえ、世界の半導体企業のための設計拠点としての強みを足場とし、新補助金計画で工場を誘致することを願っている。

一方で米議会は、半導体投資に総額300億ドル以上の予算を承認する準備中。米国防総省の財源法案を活用するほか、上院民主党のシューマー院内総務が旗を振る新法案を通じる計画だ。

米国内では既にこの予算をめがけて、企業だけでなく州当局者たちも動きを急いでいる。インテルはごく最近、アリゾナ州での事業を約束した。同州は寛大な減税計画がある上、半導体生産インフラが整っている。アナリストらは同州が連邦予算の大きな部分を獲得するとみている。同州ではTSMCも120億ドルの受託生産工場の建設計画で合意している。もっともこれはトランプ前政権の要請に応じたという面もある。

サムスン電子はテキサス州オースティンに第2工場をつくる交渉中だ。

半面、最も状況が複雑になっているのがEUだ。欧州委員会のブルトン委員(域内市場担当)が訴えているように、先端半導体工場のためのコストのかかる競走に欧州も飛び込むべきか。あるいは、ドイツ政府や多くに企業が支持するように、ニッチの半導体に特化する現在の戦略を強化すべきか。EU当局と加盟各国政府の意見がぶつかっている。

<EU、外資誘致へ積極協議>

米インテルは直近の発表で、欧州での生産に関心を表明。同社は半導体ビッグスリーでは初めて、向こう10年で高性能半導体生産でのシェアを2倍にして20%まで高めるとのEUの目標を支持して見せた。

ただ、パワー半導体に特化し、自動車業界への有力供給業者となっているドイツの半導体大手インフィニオンのヘルムート・ガッセル戦略責任者は「欧州はこの種の競走ではずいぶん前に脱落しており、必要な域内のノウハウはもう失われている」と指摘する。

一方で、半導体のEUの既存プロジェクトで進展が遅れていることにも不満も広がっている。ドイツの当局者によると、計画の資金を既に申請している企業は50社あるが、その全社が実質的に、ここ数十年は成功してきたニッチな半導体戦略型の企業だという。

EUとしての戦略を巡る食い違いは夏までに解消する可能性もある。フランス経済・財務・復興省の当局者によると、ルメール同相とドイツのアルトマイヤー経済相はブルトン欧州委員と、欧州の先端半導体生産能力を改善するため外国大手メーカーを誘致する可能性について定期的に協議している。「顔を合わせるたびに彼らはその問題を話し合っている。今年6月までに決定するのが目標だ」とし、計画規模が最大200億ドルに膨らむ可能性もあると指摘した。

<業界淘汰をはらむ賭け>

もし世界の各国政府の計画がすべて実現すれば、半導体業界は1970年代や80年代のころに類似した状況になるかもしれない。各国が自国の通信と国防にとって極めて重要な国策上に半導体を位置付けていた時代だ。

しかしVLSIのハッチソン氏は、世界が半導体生産能力を過剰に増強すれば価格が下落し、業界の多くが駆逐されることになりかねないと警告する。

80年代にオーストラリアから南アフリカに至るまで半導体工場が閉鎖された状況の再来だ。同氏は「1人の納税者の立場から言うと、われわれは本当に新たな冷戦を始めたいのかという疑問に立ち返ることになる。まるで核兵器の軍拡競争のように、半導体生産工場が国のすべての資源を食い尽くしていく時代になっていいのかという疑問だ」と語った。

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