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アングル:米国株大幅安でもなぜか低調なヘッジ取引

[ニューヨーク 20日 ロイター] - 米国株が記録的な下げが記録しているにもかかわらず、こうした局面に付き物のヘッジの動きが鈍い。

 1月20日、米国株が記録的な下げが記録しているにもかかわらず、こうした局面に付き物のヘッジの動きが鈍い。写真はニューヨーク証券取引所で撮影(2016年 ロイター/Brendan McDermid)

投資家は通常、下値不安増大に対処するために、シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティインデックス(VIX)の先物を買ったり、株式のプットオプション(売る権利)を利用する。しかし足元で株価が1年3カ月ぶりの安値に沈んでも、こうした取引は昨年夏や秋ほど活発化していない。

なぜヘッジが増えないのか、確たる理由は分からないが、投資家は幾つかの要素が絡み合っていると指摘する。例えばヘッジファンドが最近数カ月で株式へのエクスポージャーを減らし、損失に備える必要性が薄れていることが挙げられる。そのほか、今回の株安局面は原油価格の下落、中国経済の減速など既知の材料が主導していて、新たな外的ショックが見当たらない面もある。

ここ数カ月、ボラティリティや市場の方向性に賭けるオプションの利用は減少している。

コンバーグFXグループのチーフ市場ストラテジスト、ニック・コラス氏は「ヘッジ商品は実際は想定されるほど積極的に使われていない」と述べた。

VIXオプションの建玉は20日時点で約650万枚。昨年8月と9月に株価が底値をつけた局面と比べると10%程度少なく、2014年10月の株安時を30%下回っている。

S&P総合500種(SPX)の方向性に賭けるオプションの取引はもっと低調だ。昨年9月は1310万枚だったが、現在は1070万枚にとどまる。

VIXとSPXのオプションは株安に対するヘッジ手段としての人気が高いだけに、今は昨年ほど投資家がヘッジに熱心でない様子がうかがえる。

オプション清算会社OCCによると、株式のプットオプションとコールオプション(買う権利)の比率も昨年7月は1.47対1だったのが、現在はほぼ1対1となっている。

投資家の説明では、今回は株価下落のスピードが比較的遅いことがヘッジが活発化しない原因といえる。S&P総合500種は一時2014年初めの安値まで下げたものの、じり安傾向だったため、VIXが高水準になり始めたのはごく最近になってからだ。

昨年8月や2010年の暴落(フラッシュクラッシュ)などでは、VIXが瞬間的に45まで跳ね上がっていた。

クレディ・スイスの株式デリバティブ・ストラテジスト、マンディ・シュー氏は、VIXが大きく上がらないのは、株価を押し下げしている要因が原油安や中国市場絡みの懸念で、昨年から変わり映えしないことが一番の理由だとの見方を示した。

「既に知っている問題で何か分からない部分があるということと、これまでまったく認識されていない材料が出てくるのでは違いがある」という。

さらに、オプションを頻繁に利用するヘッジファンドがこれまでのところ事態を何とか乗り切っている点は大きい。クレディ・スイスのプライムサービス部門によると、ヘッジファンドの株式投資総額は2年ぶりの低水準で、株安からの痛手は小さい。ヘッジファンド・リサーチのデータでは、業界の年初来のリターンはマイナス2.5%程度の損失にとどまっている。

もっともまったく想定されていない事態が起きて市場の不安心理がもっと大きくなり、売りが加速した場合は、ヘッジ不足が投資家を苦しめかねない。

ディープ・バリュー・エクセキューション・サービシズのフロア業務担当マネジングディレクター、スティーブン・ギルフォイル氏は、もしもヘッジをせずに買い持ちだけ膨らませているとすれば、誰もが「もうこれ以上の痛みには耐えられない」と言う地点で、一気に売りが出てくる可能性があると予想している。

VIXは15日に4カ月余りぶりに30に上昇し、20日も同水準に達した。ヘッジをめぐる状況は今後変わる可能性もある。

(Saqib Iqbal Ahmed記者)

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