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焦点:資金調達伴う直接上場、米国で解禁 大半は依然IPO選択へ

[28日 ロイター] - 米証券取引委員会(SEC)はこのほど、ニューヨーク証券取引所(NYSE)が提案した資金調達を伴う直接上場(ダイレクトリスティング)方式を承認した。しかし資本調達に詳しい市場関係者は新方式について、スタートアップ企業の一部は飛びつくが、ほとんどの企業は今後も新規株式公開(IPO)による調達を選ぶと見込んでいる。

 12月28日、米証券取引委員会(SEC)はこのほど、ニューヨーク証券取引所(NYSE)が提案した資金調達を伴う直接上場(ダイレクトリスティング)方式を承認した。しかし資本調達に詳しい市場関係者は新方式について、スタートアップ企業の一部は飛びつくが、ほとんどの企業は今後も新規株式公開(IPO)による調達を選ぶと見込んでいる。16日、NY証取で撮影(2020年 ロイター/Carlo Allegri)

新方式は株式の引き受けなどを行う証券会社が介在しないためコストは抑えられる半面、事前に調達金額の見通しが立たず、投資家確保の面で安心できない部分もあるためだ。

SECによる新たな直接上場方式の承認は米国のハイテク投資家から大歓迎を受けた。こうした投資家は証券会社に対して、IPOの際に投資家の需要を見極めるのが下手で、手数料は高額な場合が多いと不満を抱いている。今月IPOを実施した民泊仲介大手・エアビーアンドビーと料理宅配最大手ドアダッシュは、いずれも取引初日に株価が急騰し、公開価格が低すぎて企業価値に見合う資金を確保できなかったとの懸念が生じた。

証券会社側の言い分では、IPO後に入手可能な株式の株が制限されていたため、IPO時に引き受けてもらう価格と上場後の取引価格に大きな差ができたという。

直接上場は上場初日に投資家が上場企業から直接株式を購入することが認められているため、こうした問題は起こらない。

GGVキャピタルのパートナー、ジェフ・リチャーズ氏は「SECがこの件で積極的な姿勢を示したことを大いに喜んでいる。公開価格と実際の取引価格の差が縮小し、ロックアップを巡る公平性が少しでも高まることを誰もが望んでいる」と述べた。

しかし資本市場の専門家によると、直接上場にはなお問題点があり、多くの企業にとってIPOは今後も魅力を持ち続ける。引受金融機関はIPOに先立ち、企業がおおよそ調達できる金額を示してくれるのに対して、直接上場の場合に企業は実際に株式の取引が始まるまで調達額は皆目見当がつかない。

法律事務所メイヤー・ブラウンのアナ・ピネド氏は「SECの動きは(直接上場の)プラス要素を増やした。それでも多くの企業は今後もIPOを選択し続けると思う。こうした企業は引受業者と、引受業者の機関投資家に対する売り込みが必要だ」と説明した。

<IPO手続きの構造変化も>

今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で一時急落した株式市場がその後急上昇に転じ、IPO市場は活況を呈した。世界のIPOによる調達額は年初来で2200億ドルと25%増えた。

以前からSECが承認していた資金調達を伴わない直接上場を選んだ企業はほとんどない。多くの企業がIPOを利用するのは、成熟した未公開企業ではスタートアップ企業のような市場の過熱が発生しない傾向があり、取引初日に株価が急騰する可能性が小さいのが一因だと専門家は指摘する。

IPOなら企業は株式売り出しの期間に投資家層を掘り起こし、ミューチュアルファンドなど長期目的の投資家に多くの株式を割り当てることも可能だ。

バンク・オブ・アメリカのニール・ケル氏は「大半の企業は今後もIPO方式を採ると思うが、IPO手続きの構造に革新が起きる可能性はある」と予想した上で、企業の経営陣にとって特定の投資家層を選択できる意味合いは依然として非常に大きいと付け加えた。

最近ではドアダッシュなどの企業が売り出し期間に、投資家に株式の購入金額の具体的な希望を尋ねる方式を採用するなど、IPO手続きを修正する動きも進んでいる。ただ、取引初日の株価急騰は小口投資家が主導するケースが多く、こうした取り組みは急騰を防ぐには不十分だ。

このほかIPOで既存株主の株式売却を禁止するロックアップ措置を見直し、従業員を対象から外すなど、インサイダーによる売却を一部で認めるよう交渉する動きも起きている。

法律事務所ラサム・アンド・ワトキンスのグレッグ・ロジャーズ氏は「直接上場は構造的に課題を抱えていることから、IPOの慣行で実質的な改革が起きている」と述べた。

<手数料の分け前>

新たな直接上場の承認が進んだ背景にはベンチャーキャピタル投資家の間に、証券会社はIPOで上得意の顧客にほとんどの株式を割り当てているのではないかとの不信感が広がっていることがある。

直接上場を使うと引受手数料は必要なくなる半面、証券会社にアドバイス業務の手数料を払わなければならないのは変わらない。

アドバイス業務の手数料総額はIPOよりも少ない。だが、関与する証券会社の数が少なければ1社当たりの取り分は大きくなってもおかしくない。

例えば2019年に直接上場したスポティファイは、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、アレン・アンド・カンパニーにアドバイス業務の手数料として3500万ドルを支払った。

一方でゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーはクラウドデータウェアハウスのスノーフレークとエアビーアンドビーのIPOにも参加し、引受手数料としてそれぞれ1億2200万ドル、7400万ドルを受け取ったものの、これらの手数料を多くの銀行と分け合わなければならなかった。

(Krystal Hu記者)

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