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コラム:パンデミックが生む長期株高 過去の歴史が再現か=木野内栄治氏

[東京 15日] - いまだに終息の兆しを見せない新型コロナウイルスの感染拡大は、数多くの犠牲者を生み、その家族を悲しませ、事業者や働く人々を困窮に追い込んでいる。そうした悲惨さとは裏腹に、世界の株式市場には資金流入が続き、高値を追う展開になっている。

 12月15日、いまだに終息の兆しを見せない新型コロナウイルスの感染拡大。それとは裏腹に、世界の株式市場には資金流入が続き、高値を追う展開になっている。写真はニューヨーク証券取引所外でマスクを着用している人、3月撮影(2020年 ロイター/Lucas Jackson)

こうした明暗の格差はなぜ起きるのか。厳しい社会経済情勢であることからか、株高をはやす声は少ないと思う。むしろ、業績の裏付けのない過剰流動性に支えられた「コロナバブル」であるとの冷めた見方も少なくない。

しかし、歴史的にみると、パンデミック(世界的な感染大流行)後の株式市場では、一時的ではなく、長期にわたる株高が発生している。今回もその再現の可能性が高いことを指摘したい。

<長期に続いた過去の株高>

過去の代表的な感染症流行後は、株価指数が3年から10年程度も大きく上昇する株高が観測されている。具体的に過去の感染症流行後を見てみよう。

例えば、1918年から1919年にかけ世界的に猛威を振るったスペイン風邪は、米国デトロイトが集団感染の中心の1つとなった。当時の米国は新興国から経済覇権国に移行する局面で、その自動車産業集積の地で感染症が流行した様相は、今回の新型コロナウイルスの経緯と類似している。

それまでの米国の株価(ダウ工業株30種)は100ドルどころを上値としたボックス相場が10年以上続いていた。しかし、スペイン風邪のパンデミックの後、第1次世界大戦終結を受けた景気後退時の下押し圧力を受けながらも、1929年に記録した高値である381ドルに向かって大きく上昇していく。

2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)がアウトブレーク(感染症の突発的な発生)した中国の上海総合指数も同様だ。それまでの同指数は一時2200ポイント台の高値もあったものの、基本的には1992年の高値以降は1600ポイント前後を意識した上値が重い相場付きだった。しかし、SARSの流行後、ITバブル崩壊の余波の押しを経ながらも、2007年高値6000ポイント台まで大きく上放れていった。

また、2009年の新型インフルエンザで、当初致死率が高く、不安が拡大したメキシコのボルサ指数にも同じ動きがみられた。当時リーマン・ショックにより世界的に株価が暴落し低迷していた。しかし、新型インフルエンザの流行後に同指数は急回復を示し、2010年3月には高値を更新、2012年まで快進撃を続けた。米国ダウやブラジル・ボベスパ指数がリーマン・ショック前の高値を更新するのは2013年以降であった。

1968年の香港風邪の後の香港・ハンセン指数は、香港風邪のパンデミック直前の安値から6年間で30倍にも急騰した。

この様に過去の世界規模の感染症流行後は、株価指数が3年から10年程度で大きく上昇する株高が観測された。

<金融緩和の圧力は継続する>

こうした場面のいくつかでは、金融緩和圧力が長く継続した。パンデミックは社会経済活動に深刻な悪影響を与えるので、政策としては当然だろう。

現在は米国の金融緩和の継続が期待できる。米連邦準備理事会(FRB)は少なくとも2023年末までゼロ金利政策を続ける見通しを示しているが、前回のロイター・コラム「イエレン氏『高圧経済』論、16年講演が示唆する政策展開」(12月1日配信)で指摘したように、FRBは今回のパンデミック発生前から、リーマン・ショックが引き起こした雇用縮小の長期化など「負のヒステリシス(履歴効果)」の解消を目指し始めていた。

リーマン・ショックから量的緩和のテーパリングを示唆するまで5年近くの期間を要したが、それでも解消しなかった負の履歴効果を解消するとなると、今回はもっと長い年月の金融緩和の継続が必要だろう。パンデミックが収まればただちに流動性の回収が始まると考えるのは早計だ。

<将来の業績は毀損しない>

一方、株式市場は足元の業績だけではなく、将来の収益を織り込む性質がある。わかりやすく言えば、PER20倍なら20年先の業績も織り込んでいることになる。パンデミックの悪影響はおそらく2年程度であって、20年先の業績に悪影響はないだろう。

今年6月9日のロイター・コラム「先々の業績を織り込む市場、株価回復のからくり」で指摘したように、現在の株高が業績の裏付けのない「コロナバブル」との見方には筆者は同意しない。足元の一時的な業績を前提としてのバリュエーションを議論する考え方にこそ違和感がある。パンデミック後の業績回復は一時的ではなく、それゆえに長期大幅高の歴史が再現されることになるのである。

<パンデミックは改革が後押し>

さて、世界の経済や社会を毀損するパンデミックには、皮肉にも先々の経済をより強くさせる効果もあるかもしれない。未曽有の危機が、社会や経済の改革を進展させる圧力になるからだ。

過去のパンデミックとその後の改革の関連性は検証が難しいが、今回のコロナ禍にあってビジネスの現場でテレワークやウェブ会議が一気に拡大し、消費の現場では宅配ビジネスの利用がさらに広がり、自宅で使う食材も多様化した。会計時の現金受け渡しによる感染の防止を動機に、キャッシュレス決済の導入が進んだ可能性も高い。

こうした改革の機運は、感染症とは無関係の分野においても広がっている。菅義偉政権が進める環境問題改革や中小企業改革、地域金融改革などだ。社会の随所に新たな動きが広がる展開は、日本においては黒船来航時や敗戦時とも共通しているかもしれない。

改革を志向する菅政権が実現に向けてさらに推進力を強めることができれば、日本株は長期的に大きく上昇する市場となる可能性が高まるだろう。

*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*木野内栄治氏は、大和証券 理事 チーフテクニカルアナリスト兼ストラテジスト。1988年に大和証券に入社。大和総研などを経て現職。各種アナリストランキングにおいて、2003年から16年連続で市場分析部門などで第1位を獲得。2012年度高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。現在、景気循環学会の常務理事も務める。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

編集:北松克朗

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