July 27, 2018 / 3:38 AM / 4 months ago

コラム:貿易戦争の深い傷に「やわ」な米農業支援策

[シカゴ 25日 ロイター] - 米政府は、中国との貿易戦争で農家に経済的損害が出ていることを受けて、自由貿易に戻るのではなく、短期的な支援策を講じることを選択した。

7月25日、米政府は、中国との貿易戦争で農家に経済的損害が出ていることを受けて、自由貿易に戻るのではなく、短期的な支援策を講じることを選択した。米ルイジアナ州バトンルージュ近郊の大豆農家で9日撮影(2018年 ロイター/Aleksandra Michalska)

だが、米国にとって最重要な貿易相手国の1つとの関係を分断したことに対する措置としては、提案された支援策の内容では大した慰めにはならない。

トランプ政権は24日、1998年以降で最大となる最大120億ドル(約1.3兆円)の緊急農業支援策を発表。農務省が運営する3つの機構を通じて支援を行う方針だ。

米政権が、中国からの輸入製品や、欧州連合(EU)、カナダ、メキシコからの鉄鋼・アルミニウム製品に関税をかけたことに対し、中国や他の米国の重要貿易相手国が米国産の農産品に報復関税をかけて応じたため、米農業者は最近数百万ドル規模の損害を受けている。

支援策には、貿易戦争の影響をもっとも受ける農産物の生産者を対象とした直接支払いが含まれる。これは、農家の経済的セーフティーネットとして1933年に設立された農務省の農産物信用公社を通して行われる。対象となる農産物は、大豆、ソルガム、トウモロコシ、小麦、綿花、乳製品とブタだ。

多くの農家や農業州選出の議員は、この支援策を不安視している。深い傷口にやわな包帯を巻くようなものだと皮肉ったり、望まない生活保護のようなもので、最終的には農家をもっと苦しめることになると批判したりする人もいる。

農務省は、支援策は1度限りで、貿易戦争の影響に短期的に対処するものだと説明。同省は、大豆農家がもっとも損害を受けたと認識しており、今後支払額が決められる際にも考慮される可能性が高い。

シカゴ商品取引所の大豆先物Sv1は、5月下旬から今月中旬にかけて20%下落。米国産大豆に対する中国の関税は6日発動された。中国は、最大の大豆輸入国であり、最近では米国産大豆の購入を避けるようになっていた。

直接支払いに加え、農務省は、余剰生産物を買い上げて福祉施設などに提供するプログラムや、新たな輸出市場を開拓する貿易振興策を提案しているが、これらの実現可能性や有用性は証明されていない。

3つの支援策の詳細は、今後明らかにされる。

<疑わしい戦術>

提案されている支援策の1つである輸出振興プログラムは、農務省の海外農業局が民間と協力し、米国の農産物に新たな海外市場を開拓するというものだ。

これが、単に報復関税で発生する見込みの損害を埋め合わせるだけのものなのか、以前の水準以上に輸出を拡大することを目指すものなのかは不明だ。

ただ、存在しない海外需要をこのプログラムで創出することはできない。さらに重要なことに、信頼できる貿易相手国を築くのには時間がかかる。このため、この支援策が短期的に成功をおさめられるか分からない。

中国と大豆の場合、今日の輸出量に達するまで少なくとも20年かかっている。右肩上がりの中国需要にいかに米国の大豆市場が反応してきたかを見れば、米国の輸出市場を広げる方策を探ろうにも、この通商関係の代替は見つからないことが分かる。

米国の大豆生産は1990年代半ばから倍増し、輸出総量も2000年代半ばから倍になっている。そのけん引役は中国需要で、今日では中国が世界の大豆の3分の1を消費している。

1990年代後半、米国の年間大豆輸出のうち中国向けは10%に満たなかった。2000年代半ばまでにその割合は40%近くになり、直近の数年間は60%程度が中国向けだった。

農務省の取り組みでは、これに匹敵するような貿易相手をすぐに見つけることはできないのは明らかだ。そして、より長期的な合意を探る米中間の交渉が長引くほど、中国は代わりの大豆買い入れ先を探す時間を得ることになる。

生産物の買い上げと配布を行うプログラムは、中国の国家買い上げ制度とまったく同じではないものの、非常によく似た内容に見えることが懸念材料だ。この中国の政策は、穀物の過剰生産と人工的に高い国内価格を生じさせており、機能していない。

農務省の「食品買い上げと配布プログラム」は、貿易戦争の影響を受けた農産品に予期せぬ余剰が生じた場合は政府が買い上げ、フードバンクや他の栄養支援プログラムにまわす内容だ。だがこのプログラムの対象となるのは果物やナッツ類、コメ、マメ類、牛肉、豚肉、牛乳であるため、穀物や脂肪種子には直接の影響はないとみられる。

<信頼喪失>

トランプ大統領は「農家が最大の受益者」となるような貿易合意をもたらすと約束しているが、その約束が早期に果たされることを懐疑的に見るのには理由がある。

今回の支援策への申し込みは9月に始まるが、これは需要や価格の回復が最低でも今後数カ月は望めないことを示唆している。この支援策について、現在の方向で突き進むトランプ大統領の意思を反映したものと多くの人が受け止めている。

農務省は、今回の単発支援策は、「政権が自由で公正な互恵的貿易合意」に向けた交渉を進める間、農家の経済的損害を埋め合わせることが目的だとしている。この言い回しは、果たされなかったこれまでの約束を思い起こさせる。

米中は5月20日、広範な貿易協定に取り組み、その間は新たな関税の脅しは控えることで合意した。だが同月29日、ホワイトハウスは、25%の追加関税を課す500億ドル相当の中国製品リストを準備していることを明らかにした。

その際の関税を巡る米政権の変心や、「広範な貿易協定」の実現がいまだ遠く見えるという事実も、市場参加者の多くが米国農業の先行きについて不安を募らせる材料となっている。

トランプ氏はまた5月下旬、中国が「巨大な量の」米国産農産物を買うだろうと発言していたが、2カ月後の今、中国は米国産大豆を可能な限り回避している状況だ。

解決策が見つかる希望や、中国がいずれもっと大量の米国産穀物や脂肪種子を買い付けに戻る可能性はある。だが、農家を廃業から守るために大恐慌時代のような政策を導入する必要があることは、その実現が近くないことを示している。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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