May 22, 2019 / 7:28 AM / a month ago

焦点:米中摩擦で細心のかじ取り、トヨタ流「両面作戦」は成功するか

[北京 21日 ロイター] - 米中貿易摩擦への対応が多くの企業経営者を悩ます中、トヨタ自動車(7203.T)が中国市場拡大へ慎重なかじ取りを続けている。同社は今年3月に対米投資の拡大計画を発表、それに続いて中国との新しい技術協力にも着手した。中国事業を加速するために米国へのコミットメントを強化する、という両面戦略だ。

豊田章男社長は米政権の動きをにらみながら、中国市場拡大のアクセルを一段と踏み込みつつある。

<「敵を作らないことが大切」>

トヨタは今年3月14日、米国での新たな投資計画を発表、2017年に表明した5年間の対米投資額が100億ドルから約130億ドルに増加したことを強調した。この額は、2017年にトランプ大統領が政権を握って以降、米国における自動車関連投資としては最大規模だ。

「アイ・ラブ・アメリカ」。豊田社長は発表後、ワシントンのエコノミッククラブでも講演を行い、米市場での取り組みを最大限にアピールした。

だが、この対米投資から透けて見えるのは、中国市場をにらむトヨタの戦略だ。

ロイターが確認した議事録によると、豊田社長は3月19日の同社の幹部会合で対米投資の拡大に触れ、これは中国での事業拡大を加速させる前にとるべき「必須の」ステップだと説明。「トヨタがグローバルに事業を展開するためには、中国と米国の間で微妙なバランスを取る必要がある。敵を作らないですすめることが非常に大切」と、両国の琴線に触れないよう、慎重な対応の必要性を訴えた。

トヨタは対米投資に続いて、中国への配慮も鮮明にしている。米国での新規投資計画を公表した後、同社は先月、清華大学と環境技術などにも取り組む連合研究院を設立すると発表。さらに、国営の北京汽車(BAICグループ)(1958.HK)傘下の北汽福田汽車(Foton)にバス用燃料電池技術を提供することを明らかにした。

いずれも規模が小さい技術協力だが、トヨタにとっての戦略性は高い。中国事業のアクセルを踏む環境づくりとして、同社には中国政府との関係を広げ、現地のビジネスを円滑に勧めたいとの思惑が背景にある。4月23日に開いた別の内部会合の議事録によると、ある幹部は「トヨタは本格的に中国ビジネスに舵を切った」と明言している。

<発表のタイミング、米国に気遣い>

トヨタが3月に発表した対米投資拡大は、中国への技術協力と直接のつながりはないが、社内では二つの発表のタイミングを十分に議論した、とある関係者は話す。さらに、豊田社長の指示で同社取締役の1人が4月に在日米大使館でハガティ駐日米大使と会談、中国での2つの案件発表を事前に伝えた。

4月23日の同社幹部会合の議事録によると、同取締役は「そこまで必要ないと思っていたが、想像以上に米国大使は評価してくれた」と報告した。

米国市場は、トヨタに限らず、世界の自動車産業にとって、年間約1700万台を販売する重要な収益センターだ。しかし、トランプ大統領は外国メーカーの輸入車に最大25%の関税を課すと言明。今月17日には輸入自動車や部品に対する関税の判断を最大6カ月延期すると発表したが、一部の輸入車と部品が国家安全保障上の脅威になると主張した。

豊田社長はワシントンでの講演で「なぜ国家安全保障上の脅威と呼ばれているのか理解できないし、心が痛む」と語り、「私が約束したいのは、議論がどのような方向に向かうにせよ、トヨタは米国を離れることはないということだ」と訴えた。

<出遅れの中国市場拡大へ勢い>

一方、他社より出遅れている中国市場での追い上げも緊急課題だ。中国での2018年の販売台数は各社の合計で2800万台と米国をしのぐ水準となり、電気自動車の促進や普及を見込んだ新たな投資を呼び込んでいる。

トヨタは米国市場で14%のシェアを握っているものの、中国での昨年のシェアは5.3%にとどまり、販売台数149万台はフォルクスワーゲン(VW)(VOWG_p.DE)やゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N)の半分にも満たない。

中国は歴史的な理由から日本企業にとって時には難しい市場となり、自動車メーカーも例外ではない。尖閣諸島(中国名:釣魚島)をめぐる問題から、2012年の中国での日本車販売は大きな打撃を受けた。しかし、昨年5月に日本を公式訪問した中国の李克強首相は、豊田社長の同行で北海道の同社工場を見学。中国事業拡大への機運は高まっている、とトヨタ関係者は指摘する。

 5月22日、米中貿易摩擦への対応が多くの企業経営者を悩ます中、トヨタ自動車が中国市場拡大へ慎重なかじ取りを続けている。写真は豊田章男社長。デトロイトで1月撮影(2019年 ロイター/BRENDAN MCDERMID)

トヨタは中国での生産体制拡充に乗り出し、天津と広州工場での生産能力をそれぞれ年間12万台ずつ増強する計画だ。ある部品メーカー関係者によると、今後5-6年で毎年10%の販売増を見込んでおり、2020年代半ばまでに年間約300万台の売り上げを目指す。その環境づくりとして、中国指導部との友好促進へ流通網や技術共有も着々と進めつつある。

「中国政府がトヨタをサポートしてくれているが、決して調子に乗らないこと。(やるべきことを)地道に継続していれば、日中関係が悪くなった時、その成果が見られると思う」。豊田社長は4月23日の幹部会合でこう語り、中国市場での信頼醸成の必要性を強調した。

米中貿易摩擦の激化で、トヨタの対中戦略には「米国への配慮」という新たな要請が生まれた。対立を深める二大市場の両面作戦は、決して容易ではない。先月の上海モーターショーで、トヨタは国際メディア向けの記者会見を取りやめたが、関係筋によると、これは豊田社長が関税引き上げや米国の輸入枠などについて米国を過度に刺激しないよう、慎重なメディア対応を求めたためだという。

白水徳彦  編集:北松克朗、村山圭一郎

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