September 19, 2018 / 1:42 AM / 3 months ago

コラム:中国の米国債売却はあるか、貿易摩擦激化で再び注目

[ロンドン 18日 ロイター] - 米中両国が過去15年間築いてきた経済・金融関係において確固として変わらなかった要素が1つある。それは中国が保有する膨大な米国債を決して売らないという想定だ。

 9月18日、米中両国が過去15年間築いてきた経済・金融関係において確固として変わらなかった要素が1つある。それは中国が保有する膨大な米国債を決して売らないという想定だ。2017年6月撮影(2018年 ロイター/Thomas White)

米国債の売却は、両国にとって金銭的な打撃をもたらし、金融面以外でも非常に深刻な影響を受けるとみられるため、単純に発生しないという理屈になる。これを無視すれば、冷戦期の軍事理論「相互確証破壊(核戦争をすれば共倒れになること)」に経済的な超大国同士が踏み込んでしまう。

だが米中の貿易摩擦が激化していることから、全く現実味がないとは言い切れないのではないか。

近年、とりわけ中国経済の落ち込みが国際金融市場を動揺させ、結局人民元の約2.5%切り下げにつながった2015年8月以降は、中国による米国債売却は一度ならず市場に浮上してきたシナリオだ。

米国でグーグルのニュース検索における「中国 米国債」というワード、あるいはウェブ検索での「中国 売却 米国債」というワードは今や、15年8月以降で順位が最も高くなっている。

少なくとも米国の一般社会では、中国の米国債売却が再び視野に入ってきている。そしてもし貿易摩擦がさらにエスカレートすれば、米国債市場のレーダーに投影される日も遠くないだろう。

トランプ政権は24日から、新たに2000億ドル相当の中国製品に10%の追加関税をかけると表明。中国もすぐに600億ドルの米製品に報復関税を課した。

しかし中国側が標的にできる米製品の範囲は相対的に小さい。だから為替レートを対抗手段として利用し、3月以降で10%下がってきた人民元の対ドル相場がさらに大きく下落するのを容認するかもしれない。

もっとも人民元安が進んだのは米中が関税をかけ合う前で、中国政府はその後、貿易面の痛手を相殺するために通貨切り下げはしないと約束している。つまり中国が今後人民元の下げ圧力に抵抗したいと望むなら、ともかく保有米国債の一部を売らざるを得ないだろう。

そこで登場するのは3兆1100億ドルに上る外貨準備資産で、このうち1兆1800億ドルを米国債が占める。中国とすれば、米国債の購入を縮小ないし停止するか、一層踏み込んで売り切ることができる。

では米国債の利回りに実際どう影響するかについては、専門家の間で大いに議論されている。米国債市場は15兆7000億ドルもの規模があるので、中国が購入ペースを緩めたり、新規購入の取りやめ、あるいは完全な売却に踏み切ったとしても、容易に吸収される。

一部のアナリストは、市場の「フロー」が利回りに及ぼす影響はゼロで、本当に重要なのは米連邦準備理事会(FRB)の政策見通しだと考えている。利回りには影響があるが、それは限定的にすぎないとの声も聞かれる。

米財務省の元エコノミストで国際的な資金フローの専門家であるブラッド・セスター氏は、他の条件が等しいならば、中国による米国債保有縮小は10年債利回りを当初30ベーシスポイント(bp)押し上げると試算する。

セスター氏は6月に記した論文で、たとえ60bpの利回り上昇でも痛みはあるが耐えられる上に、米政府にはとっておきの切り札があると指摘。「FRBは世界中で唯一、中国の売却可能額以上を購入できる市場参加者だ」と述べた。

それでも、未踏かつ危険な地帯に足を踏み入れることになる。米経済の勢いが加速し、FRBが利上げと資産縮小を進めている中で、米国債が売り圧力を受けているからだ。

トランプ政権の大型減税の財源穴埋めのため、米国債の新規供給が急増している面もある。足元では10年債利回りが心理的節目(それ以外の意味はないとしても)の3%を再び突破した。

さらに中国の米国債需要自体が、恐らく往時ほど強くない。過去数十年にわたる中国の好況は総じて米国の消費者に依存したもので、そこで稼いだ大量の黒字が米国債購入に回り、中国の外貨準備を増加させると同時に米国債利回りを低水準に抑え続け、米国の経済と個人消費の好調に寄与してきた。

ところが中国の経済成長は金融危機前の半分に下がり、この先もっと下振れする見通しだ。また成長における輸出依存度は低下し、経常黒字は10年前の2割ほどしかない。

そうした中で果たして中国は米国債保有を縮小することができるか。答えは間もなく分かるかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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