June 4, 2019 / 12:28 AM / 3 months ago

焦点:トランプ氏のメキシコ関税、大統領権限は正当か

[31日 ロイター] - 不法移民への対応不足を理由にメキシコからの輸入品にすべてに関税を課すというトランプ米大統領の提案は、司法の場で争われる可能性が高い。そこでは、緊急事態に大統領が権限を行使できる範囲が問われることになるだろう。

 5月31日、不法移民への対応不足を理由にメキシコからの輸入品にすべてに関税を課すというトランプ米大統領(写真)の提案は、司法の場で争われる可能性が高い。カリフォルニアで4月撮影(2019年 ロイター/Kevin Lamarque)

トランプ氏は、中米諸国での暴力から逃れようとする人々など、亡命希望者の波を食い止めるために、6月10日以降、メキシコからの輸入品に課税し、移民の流入が止まるまで関税率を段階的に引き上げると表明した。

金融市場は動揺し、米国とメキシコ双方の企業経営者らも不意を突かれた。大統領が過去に1度も関税導入のために適用されたことのない法律を使うことを阻止すべく、法的手段に訴えようという議論も生じている。

通商法が専門のジョージタウン大学ロースクールのジェニファー・ヒルマン教授は、トランプ氏が30日の発表で「国際経済緊急権限法(IEEPA)」を根拠としたことに疑問を呈した。

世界貿易機関(WTO)で判事を務めたヒルマン教授は、「IEEPAの条文を読めば分かるが、大統領は金融取引を停止するために国家緊急事態を宣言することができる、というのが同法の趣旨だ」と語る。

IEEPAはイランやスーダンなどの国に制裁を科すために歴代大統領が用いてきたが、司法専門家によれば、トランプ大統領が提案している新たな用途は、これまでに裁判所において議論されたことがないという。

ロヨラ大学ロースクールのジェシカ・レビンソン教授は、「明らかに立法趣旨を逸脱している」と言う。「だが、条文上そのような解釈ができるかと言われれば、それは可能かもしれない」

一部の司法専門家の間では、これまでトランプ氏の移民政策の多くが裁判所によって阻止されてきたこととは異なり、今回の関税導入の警告は、国家安全保障上の措置という装いになっているため、司法の場での争いを生き延びるかもしれないという見方もある。

今回の措置に異議を唱えるのであれば、大統領がIEEPAの条文を逸脱し、国家安全保障上の関心を有していないことを示さなければならない。だが同法では行政府に幅広い権限が与えられているため、これは高いハードルになる。

大企業を顧客とする複数の弁護士は、クライアントが対メキシコ関税を阻止するために法的手段に訴えることを検討していると語るが、企業名は明かさなかった。経営者団体の米国商工会議所は、提訴の可能性もあるとしている。

IEEPAは「尋常ならざる極端な脅威」が生じた場合に、幅広い経済活動を規制する権限を大統領に与えている。1979年、民主党のカーター大統領は、在テヘラン米国大使館員人質事件を受けてこの法律を適用し、米国内のイラン関連資産をすべて凍結した。連邦最高裁は、IEEPAが「広範囲かつ全面的である」と述べて、この措置を支持した。

国際貿易を専門とするカンザス大学ロースクールのラジ・バラ教授は、移民流入を制限するための手段としてIEEPAを使うことは、暴力的な脅威への対応として同法を制定した連邦議会の趣旨にそぐわないと話す。

ホワイトハウスのジャッド・ディア報道官は31日、トランプ氏は国家安全保障を維持するという自らの権限の範囲で行動している、と述べた。

「産業界はメキシコ側の取引先とコミュニケーションを取り、米国南部の国境における危機をできだけ早急に解消するために、米政権と協力するよう政府に促すべきだ」と、ディア報道官は述べた。

<連邦議会で争うことも選択肢>

ホワイトハウスによれば、移民の多くが国境管理当局に対して亡命希望者として名乗り出ていることで、移民制度は大混乱に陥っているという。

トランプ大統領は4月、これまで警告していた不法移民の流入抑制のために対メキシコ国境を封鎖する措置を撤回した。国境封鎖がビジネスの混乱を引き起こすことを懸念する企業からのプレッシャーによるものだ。また、国境に壁を建設するという2016年大統領選挙での公約の実現に向けては、議会で十分な予算を獲得することに失敗している。

米通商代表部(USTR)の広報官によれば、メキシコからの輸入品に対する関税は、国土安全保障省の管轄になるという。ヒルマン教授は、これも異例のことだと指摘する。

裁判所は、国の安全保障に関しては大統領を支持する傾向がある。トランプ氏が別の法律に基づき決めた輸入鉄鋼製品への課税を巡り、米国国際貿易裁判所が今年3月、関税を阻止する訴えを退けたのはその一例だ。

米国内の裁判所以外で関税に異議を唱える方法もある。バラ教授は、メキシコへの関税は北米自由貿易協定(NAFTA)にも関税と貿易に関する一般協定(GATT)にもほぼ確実に違反しているとの見解を示す。今回のトランプ氏の関税の提案が、NAFTAに代わるメキシコとの貿易協定にどのように影響するかはまだ不透明だ。

NAFTA、GATTいずれの協定においても加盟国が加盟国を提訴することは可能であり、さらにNAFTAでは、投資家が政府を提訴することも可能だ。

だがバラ教授は、NAFTAやWTOの紛争処理プロセスには時間がかかり、最終的な裁定に至るまでに数年を要し、決定事項の執行も難しい場合があると話す。

シカゴにあるジョン・マーシャル・ロースクールのスティーブン・シュウィン教授によれば、米連邦議会で争う方法もあるという。

「連邦議会がこの種の権限を大統領に委ねる必要はないし、現大統領ならなおさらだ」と、シュウィン教授は言う。「議会がその権限を取り返そうと思えば、それは可能だ」

(翻訳:エァクレーレン)

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below