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焦点:ほころび目立つライトハイザー流交渉術、合意成果に批判も

[ワシントン 20日 ロイター] - 米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は、米中貿易協議の「第1段階」合意と米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)の修正合意を12月第2週にまとめ上げたことで、平和で静かなクリスマス休暇を過ごせると楽しみにしていただろう。ところが実際には、USMCAを巡るメキシコ政府の誤解を正す作業に追われ、これらの合意内容に対して与党・共和党議員から批判を浴びる事態が起きている。

 12月20日、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は、米中貿易協議の「第1段階」合意と米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)の修正合意を12月第2週にまとめ上げたことで、平和で静かなクリスマス休暇を過ごせると楽しみにしていただろう。写真はメキシコ市で10日撮影(2019年 ロイター/Carlos Jasso)

保守系の米紙ウォールストリート・ジャーナルは論説で、トランプ政権はUSMCA修正を野党・民主党に同意してもらうために彼らの要求をのむ「政治取引」を強いられたと指摘。また元USTR高官や投資アナリストは、米中の第1段階合意が期待に程遠かったと一蹴した。

72歳のライトハイザー氏は、党派で極端に分断された今日のワシントンではある意味、まれな存在。その精力的な働きぶりは時に民主党側からも、不承不承ながら賞賛されてきた。もちろん、大統領が常に敬意をもって耳を傾ける人物でもある。

北米自由貿易協定(NAFTA)に代わるUSMCAと、米中貿易合意は、トランプ政権にとっていわば2大優先課題だった以上、同じ週に話がまとまったことは政治宣伝の面では大勝利だった。

ところが合意を引き寄せる取り組みは、当初の予想よりも長くかかり、思っていたより手ごわくもあった。そして、さらなる疑問も生まれている。

それはライトハイザー氏の「出し惜しみ」する交渉スタイルが原因の1つだとの声が聞かれる。議会関係者や元米政府高官の取材に基づくと、常に入念な準備を欠かさないとはいえ、傲慢(ごうまん)に見える場合があり、人に任せるのを嫌うというのが同氏に下された評価だ。

下院歳入委員会のニール委員長(民主党)は記者団に、ライトハイザー氏は怒りとともに電話をたたき切る傾向があるとこぼした。

<あうんの呼吸>

トランプ政権は米国が長い間、通商面で他国に利用されてきたと強く信じており、USTR代表は主な貿易相手との関係をリセットする任務を託された。そしてライトハイザー氏はそうした仕事を何の違和感もなく引き受けた。

米国の労働者や企業に有利なように世界の貿易環境を変えてしまおうとする「米国第一」主義を掲げるという点で、トランプ大統領とジョージタウン大卒のライトハイザー氏の間に意見の違いはほとんど見当たらない。

ライトハイザー氏は1980年代にレーガン政権でUSTR次席代表を務め、その後民間で通商問題専門弁護士として自らの考えを先鋭化させた。顧客の中には米国の鉄鋼メーカーがあり、彼らは多額の国家補助金を得る中国勢から輸入される製品と苦しい競争を強いられていた。

あるベテランの米通商担当者はライトハイザー氏について、トランプ氏のことを大概の人よりもよく理解し、貿易のやり方を一変させたいと考えていると説明。世界貿易機関(WTO)の解体や、多国間貿易協定から二国間協定への移行、米産業に打撃を与えている国に対する鉄鋼・アルミニウムの懲罰的関税発動――といった政策を受け入れていると付け加えた。

もっともライトハイザー氏の交渉スタイルは、トランプ政権の他の要人と同じく大きな批判を集めている。複数の議会関係者は、トランプ氏の通商担当チームが交渉事で書面のやり取りを拒むケースがままある上に、ライトハイザー氏が歴代の代表と異なり、担当者が記者に背景説明をするのを禁じていると述べた。

そうした態度は誤解や混乱をもたらしかねない。

例えばライトハイザー氏は、米中が完全に第1段階の合意を取りまとめたと主張するが、中国政府は米国側が発表した詳しい内容を正式に認めておらず、市場や関係業界は戸惑いを隠せない。

86ページに及ぶ合意文書が中国語に翻訳され、さらに詳細なものが公表されるにはまだ数カ月かかる可能性がある。

メキシコの駐中国大使を務めたホルヘ・グアハルド氏は、USMCA修正交渉を巡りメキシコによる労働基準順守を監視する米計画について、メキシコとの間で生じた騒動と、中国による第1段階の合意文書公表が遅れている問題は、ともにライトハイザー氏のやり方への疑念を高めているとの見方を示した。

元USTR高官のハリー・ブロードマン氏は、USMCA修正交渉中にメキシコの件がもれて公にされねばならなかった理由は理解できないし、中国が文書を公表する前に合意に達したと米側が宣言したのも異例だったと話した。

これについてライトハイザー氏は17日、フォックス・ビジネス・ニュースで、メキシコを巡る状況は「交渉最終盤の思わぬ障害」で「簡単に対応できる誤解」だと弁解した。

<次の対決へ>

ライトハイザー氏はUSMCA修正で、共和党議員から特定医薬品への10年間の特許保護条項を撤廃したことでも反発されている。

同党のトゥーミー上院議員は19日、先行きが非常に楽しみな新しい分野の医薬品にとって大きな挫折であり、米製薬メーカーが巨額投資のコストを回収するのが一段と難しくなると発言した。

ライトハイザー氏はフォックス・ビジネス・ニュースで、特許保護撤廃は「後戻りの動き」だと認めつつ、民主党が優勢な下院の支持を得るために必要な妥協だったと強調した。

米中の第1段階合意に関しては、そもそも15日の新たな対中関税発動前に実現したがっていたのはトランプ氏だった、と専門家の1人はみている。ライトハイザー氏は結局弁護士であって、トランプ氏が「顧客」である以上、話をつけろと迫られて中途半端な内容の合意を持ち帰ったとしてもおかしくないという。

それでもライトハイザー氏は懲りることなく、次の通商事案に向けて腕まくりしているところだ。今後は欧州連合(EU)と航空機補助金やデジタル課税、WTO改革などで対決する構えだ。同氏は「私は標的に事欠かない世界に住んでおり、やるべきことがたくさんある」と冗談交じりに話した。

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