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焦点:中東和平、トランプ氏の「1つの国家」言及で一層混迷か
2017年2月17日 / 05:48 / 10ヶ月前

焦点:中東和平、トランプ氏の「1つの国家」言及で一層混迷か

[ワシントン 16日 ロイター] - トランプ米大統領は15日、イスラエルのネタニヤフ首相との会談後、パレスチナ国家を樹立してイスラエルとの共生を目指す「2国家共存」論について「わたしは2つの国家と1つの国家(という考え)の双方に目を向けている。両当事者が望む方が好ましい」と発言した。

 2月16日、トランプ米大統領(右)が、パレスチナ国家を樹立してイスラエルとの共生を目指す「2国家共存」にこだわらない姿勢を表明したことは、歴代大統領や各国の指導者がだれも入ろうとしなかった領域に足を踏み入れたことを意味する。写真左はイスラエルのネタニヤフ首相。ワシントンで15日撮影(2017年 ロイター/Carlos Barria)

2国家共存にこだわらない姿勢の表明は、20年にわたって世界の外交界の大原則に背を向け、歴代大統領や各国の指導者がだれも入ろうとしなかった領域に足を踏み入れたことを意味する。トランプ氏としては、停滞してきた中東和平にまったく新しい構想を採用しようとしたのだろうが、同時にこれまで存在しなかった複雑な要素やリスクも呼び込んでしまった。

イスラエルとパレスチナ自治政府が存在する地域に単一国家、もしくは連邦国家を成立させるというのは、大半のイスラエル国民やパレスチナ住民にとって宗教や政治、人口構成などの面から現実的な選択肢とはみなされていない。

1つの国家論は数年前のようなタブー(禁忌)ではなくなり、イスラエル大統領が提唱しているほか、多くの若いパレスチナ住民の間で議論の対象になっている。とはいえ、こうした国家のアイデンティティ、宗教、民主主義が確立され、争いの火種を生み出さずにいられるかどうかは疑問視されている。

パレスチナ自治政府の首席交渉官、サイブ・エレカト氏は1つの国家について、結局はイスラエルが主導権を確保してかつての南アフリカのアパルトヘイトのようにパレスチナ住民が国家内で差別的待遇を受ける恐れがあるとの見方を示した。

トランプ米大統領は、中東和平政策における米国の基本方針であった、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」にこだわらない考えを表明した。

<難しい両立>

中東和平問題は関係者の多大な尽力にもかかわらず、過去20年間ほとんど成果がなかっただけに、政治指導者や外交官が2国家共存とは別の可能性を検討し始めること自体は当然だ。そうした観点では、1つの国家論はより単純明白で、素晴らしい解決策に見えなくはない。

しかしイスラエルからすれば、70年近く前の建国以前から国家のアイデンティティはユダヤ人の国と決まっている。ネタニヤフ氏の根本的かつ揺るぎない要求は、パレスチナ側がイスラエルをユダヤ人国家と認めることにある。

そこでイスラエル本土とガザ、ヨルダン川西岸、東エルサレムに暮らす1600万人で1つの国を形成するとなれば、ユダヤ人国家の様相と民主主義を両立させるのは極めて難しい。人口の半数近くはイスラム教徒もしくはキリスト教徒で、パレスチナ住民の出生率は、ユダヤ人よりも伸びが大きいからだ。

左右両派の学界関係者などからは、単一国家や連邦国家の提案がしばしばなされているが、反対派の頭の中には優先的に適用される法律や言語がどうなるか、パレスチナ住民が対等な権利を得られるかといった疑問がすぐに浮かんでくる。

アイデンティティに関わる根深い問題だけでなく、もっと分かりやすいものの解決が難しい事案もある。例えば単一国家の名称、世俗国家になるかユダヤ教国家になるか、イスラム教徒は他国から自由に入国できるのか、アラブ・イスラム諸国は新国家を承認するか、などだ。

<使い手次第で変わる意味>

中東問題を研究している米シンクタンク、ワシントン・インスティテュートのデービッド・マコフスキ氏は、1つの国家という場合、使い手の立場で意味が180度変わってしまう点に注意が必要だと指摘。1つの国家は、多くのユダヤ人入植者にとってヨルダン川西岸にイスラエルの主権が及ぶと解釈されるが、欧米の左派的な考えを持つ人としてはもはやイスラエルではない新たな連邦国家がイメージされるという。

その上でマコフスキ氏は、さまざまな世論調査ではイスラエル国民とパレスチナ住民の双方とも1つの国家確立への賛成は少数派にとどまっていると説明した。

実際16日に公表された最新の調査でも、イスラエル国民の55%、パレスチナ住民の44%が2国家共存論を支持しており、1つの国家支持はずっと少ない。

だからこそ、ネタニヤフ氏は会見で1つの国家への言及を慎重に避けたのだろう。同氏は、1つの国家論の背後にある考えが独立的なユダヤ人の国という理想実現の妨げになりかねないことを知っているのだ。

(Luke Baker記者)

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