[ワシントン 27日 ロイター] - トランプ米大統領の元顧問弁護士マイケル・コーエン被告(52)は27日、下院監視・政府改革委員会の公聴会で証言し、2016年米大統領選中に内部告発サイト「ウィキリークス」がヒラリー・クリントン民主党候補に打撃を与える電子メールを暴露する計画についてトランプ大統領が事前に把握していたと明らかにした。
また、大統領選挙中もモスクワで不動産事業を巡る交渉を指示していたとも語った。
コーエン被告は証言の冒頭で「トランプ氏が何者であるかを知っている自分を恥じている。彼は人種差別主義者で、詐欺師だ」と言明。「トランプ氏は国を率いていく願望も意思もない。自分を売り込み、自分の富と権力を膨らませることを欲しているだけだ」と述べた。
被告によると、トランプ氏は大統領選中だった16年7月、ウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジ氏が数日以内にクリントン陣営に打撃を与える内容の電子メールを暴露するという報告を、元側近で偽証罪などで起訴されているロジャー・ストーン被告から電話で受けたという。
ウィキリークスは同年7月22日、米民主党全国委員会(DNC)の内部メールを暴露。メールはロシアのサイバー攻撃によって流出したとされている。
モスクワに高層ビル「トランプタワー」を建設する計画を巡っては、トランプ氏がロシアで事業を進めていないと公言する半面、コーエン氏に対しては事業を巡り複数回問い合わせをしていたことを明らかにした。計画は大統領選前の16年6月まで続いていたという。
コーエン被告は「トランプ氏は大統領選で勝利することは予想していなかったため、嘘をついた。数十億ドルの金が絡んでいたことも背景にある」と述べた。
トランプ氏と不倫関係にあったと主張するポルノ女優ストーミー・ダニエルズさんへの口止め料支払いについては、13万ドルを肩代わりして支払い、メラニア大統領夫人にうそをつくようトランプ大統領から指示を受けたことを明らかにした。
被告が支払った口止め料はその後、トランプ大統領や長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏らが署名した小切手によって返金されたという。
また、トランプ氏に絡む他の不法行為疑惑を認識しているものの、捜査が進められていることから、明らかにはできないと語った。
こうしたコーエン被告の証言はトランプ大統領に大きな痛手を与える可能性がある。ただ、大統領選中にトランプ氏もしくは同陣営とロシアの「共謀」疑惑については、「疑いは持っているが、明確な証拠はない」と語った。
米朝首脳会談のためベトナム訪問中のトランプ大統領はツイッターへの投稿で「コーエン氏の悪事は私とは関係ない。刑期を短縮するためうそをついている」と述べた。
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一方、下院監視委員会のカミングス委員長(民主党)は公聴会後、トランプ大統領が罪を犯したと思うか問われ「そのようだ」と述べた。「私にそう判断する権限があるからではなく、既に発覚した事実に基づいている」と続けた。
コーエン被告は公聴会で、トランプ氏が納税申告書の公開を拒んでいる問題についても証言した。
「税専門のシンクタンクがこぞって申告書に目を通して内容について厳しい指摘をすれば会計監査の対象となり、最終的に課税や罰金などの結果を招く展開となることをトランプ氏は恐れていた」と述べた。
「現在、監査を受けているとは思わない」と続けた。
同委の民主党メンバーらは、トランプ氏が自身の下で働く職員の賃金を引き下げた結果、内国歳入庁(IRS)から数百万ドルの税還付を受けたとコーエン被告が発言したことに懸念を表明。ジュディー・チュー民主党議員は「脱税の可能性があるという意味で、憂慮すべきことだ」と述べた。
コーエン被告はまた、トランプ氏が自身が保有するゴルフコースの価値を低く申告し、税控除を要請することによって、支払うべき不動産税を減額することができたと語った。
2020年の大統領選に関して被告は、「トランプ氏の下で働いた経験を踏まえると」、同氏は自身が敗北しても、次期大統領に「平和的に引き継ぎを行うことは決してできないだろう」と予想した。
*内容を追加しました。
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