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コラム:ロシア疑惑、トランプ氏の弁護に4つの「落とし穴」
June 4, 2017 / 12:29 AM / 6 months ago

コラム:ロシア疑惑、トランプ氏の弁護に4つの「落とし穴」

Alison Frankel

 5月30日、トランプ大統領と彼の個人代理人を長年務めてきたマーク・カソウィッツ氏は、何人かの優秀な弁護士を探しているところだろう。ホワイトハウスで31日撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

[ニューヨーク 30日 ロイター] - トランプ大統領と彼の個人代理人を長年務めてきたマーク・カソウィッツ氏は、何人かの優秀な弁護士を探しているところだろう。

米議会とロバート・モラー特別検察官が、昨年の米大統領選におけるトランプ陣営とロシアとの癒着疑惑、いわゆる「ロシアゲート」調査を進めるなかで、大統領の弁護体制を整えるためだ。

先週末のフォックスニュース報道によれば、ホワイトハウスは、「非常に有能な弁護士、代理人、調査員で構成される作戦司令室」のトップとしてスティーブ・バノン首席戦略官兼上級顧問を据える予定だという。

多くの人にとって、大統領を助けるよう依頼されることは名誉なことだ。「ほとんどの弁護士は光栄に思うだろう」と語るのは、ワシントンのズッカーマン・スペーダー法律事務所でホワイトカラーの弁護を専門とするウィリアム・テイラー氏だ。

「優れた弁護士は、クライアントの依頼理由を評価する際に、道徳的な判断を下さない」とテイラー氏はロイターに語った。彼は民主党員で、ホワイトハウスからは声がかかっていない。

とはいえ、トランプ大統領の「作戦司令室」に参加することは生半可な仕事ではない。ホワイトハウスは司法省のポストを埋める候補を集めるにも苦労していると米政治情報サイト「ポリティコ」のジョシュ・ガースタイン氏は28日報じている。

大統領自身の弁護を務めることは、さらに厄介な仕事だ。そのことを念頭に置いて、トランプ大統領の弁護士候補が、その仕事を受ける前に、自問すべき質問をいくつか紹介したい。

1)大統領がアドバイスを無視しても気にせずにいられるか。

トランプ大統領自身によるツイートや暴露が、弁護士たちが解決するよりもはるかに多くの司法上の頭痛の種を生み出しているのはもはや常識と言ってよい。

たとえば、解任されたコミーFBI長官が「大統領は捜査対象ではない」と言ったとする主張、ミーティングに関する録音について暗にコミー氏を脅迫するツイート、NBCのレスター・ホルト氏やロシア政府当局者に「コミー氏解任の理由はロシア疑惑の捜査」と暴露したことなどだ。

大統領顧問たちは、これまでボスを黙らせることに失敗している。他の人たちが失敗してきたことを、自分は成功できるだろうか。

また、トランプ氏に異を唱えた顧問に対して、大統領がこれまでどのように接してきたかを考えてみよう。クライアント自身の利益を妨害したと対立し、解雇されるリスクを負うつもりがあるだろうか。

2)マーク・カソウィッツ氏とやっていけるか。

トランプ氏は、10年以上にわたってマーク・カソウィッツ氏を頼りにしてきた。発端は2000年代初頭、トランプ氏がアトランティックシティで抱えていた債務の再編をカソウィッツ氏の法律事務所が請け負ったことである。

それ以来、トランプ氏が関わった最大級の訴訟沙汰のいくつかでカソウィッツ氏自身が代理人を務めた。そのなかには、トランプ氏非公認の伝記執筆者であるティモシー・オブライエン氏に対する有名な名誉棄損訴訟、ニューヨークの高額不動産を安価で処分したことについて、トランプ氏が少数出資者として提携していた香港・米国の過半数出資者を訴えた数十億ドル規模の訴訟などがある。

どちらの訴訟も敗訴に終わったものの、トランプ氏はその後も法廷弁護士を必要とするときには繰り返しカソウィッツ氏に頼った。たとえば、選挙期間中に米紙ニューヨークタイムズがトランプ氏の1995年の税務申告疑惑や、トランプ氏から不愉快な性的誘いを受けた主張する女性について報じたことに対して、カソウィッツ氏は警告する書簡を送っている(トランプ氏はその後、同紙を告訴するという脅しを実行に移していない)。

カソウィッツ氏は、大手法律事務所から離脱して、自らの法律事務所を立ち上げて成功した。その成功の一因は、既存の有力法律事務所と対決する構図になる依頼人や事件を引き受けてきたことだった。

American Lawyer誌がまとめた法律事務所各社の財務状況によれば、カソウィッツ・ベンソン・トレス社の2016年の報酬総額は2億3500万ドル(約262億円)近くに達し、各パートナーの取り分は平均185万ドルとなっている。

カソウィッツ氏は他の法律事務所と協力することもある。目につくのは、米金融保証(モノライン)保険会社MBIAを代理したときのパターソン・ベルクナップ・ウェッブ・アンド・タイラーとの協力や、住宅抵当証券訴訟において米連邦住宅金融局を代理したときのクイン・エマニュエル・アークハート・サリバンとの協力だ。

しかし、カソウィッツ氏は、他人の意見に頼って今の地位を築き上げたわけではない。

カソウィッツ氏を知る弁護士らによれば、同氏は自分の法律事務所や扱っている案件を強引な手法で切り盛りしており、トランプ氏自身のビジネス姿勢と似通っている部分があるという。

カソウィッツ氏は、ホワイトカラーの専門家でもなければ米政界での経験が豊富なわけでもないが、双方の分野の経験を持つパートナーが彼の事務所に控えている。

たとえば同事務所のパートナー、エドワード・マクナリー氏は元マンハッタン地区連邦検察官であり、メイン州裁判官、国土安全保障省、ジョージ・H・W・ブッシュ政権時の大統領法務顧問の経験もある。

ジョゼフ・リーバーマン元上院議員は、コミー氏の後継となるFBI長官の有力候補だったが、トランプ大統領がカソウィッツ氏を代理人に指名した後、長官就任を辞退した。彼も同じ事務所の上級弁護士だ(ロイターはマクナリー氏がマンハッタン地区連邦検察官の有力候補だと報じた。もし彼が大統領の弁護団で働くとすれば、状況は複雑になる可能性がある)。

新たな弁護士がカソウィッツ氏の事務所以外から大統領の弁護団に加わる場合、彼らは大統領顧問の上下関係のなかで、自分の立ち位置を見つけなければならない。カソウィッツ氏はすでに大統領の信頼を得ているが、新規に加わる弁護士にとっては、それもこれからの話になる。

3)バノン氏や大統領の政治顧問とうまく働けるか。

過去に議会や特別検察官と戦ったことのある歴代のニクソン大統領やクリントン大統領と比べると、トランプ大統領には重大な意味合いをもたらしかねない違いがある。それは、トランプ氏が弁護士資格を持たないという点だ。弁護士・依頼者間の秘匿特権が意図せずして放棄されてしまうリスクに留意する必要がある。

さらに、ウォーターゲート事件やホワイトウォーター事件の判例からみて、大統領による通信は、これまで以上に開示されてしまう可能性が高い。

トランプ氏と弁護士たちのあいだの法律上のやり取りは秘匿特権の対象となるが、バノン氏率いる「作戦司令室」における政治戦略をめぐる会話は対象とならない。その明確な線引きを維持するのは困難になるだろう。そして、大統領はどちらの顧問を重用するだろうか。

4)大統領のための仕事は、自身の事務所にどんな影響を与えるか。

大統領が注目する弁護士は、恐らく、法律事務所のパートナーとして多くの依頼を集める著名弁護士だろう。所属事務所の側では、大統領の弁護のために、こうした依頼を犠牲にする心構えがあるだろうか。

過去の事例を参考にするならば、今回の調査は少なくとも1─2年は続く。(大統領の事件を支援するために動員されるパートナーや所属弁護士も含め)通常の業務から離れるには長い時間だ。クライアントは二の次にされ快く思わないかもしれないし、政治的志向にもよるが、トランプ大統領の弁護という理由で自分たちの案件が放り出されることを喜ばない可能性もある。

同様に、大統領の弁護を引き受けることは、同じ法律事務所の弁護士にも歓迎されない可能性がある。選挙資金データを調査するウェブサイト「オープン・シークレッツ」によれば、弁護士や法律事務所はトランプ氏の選挙運動に対する資金支援にひどく消極的で、献金額は180万ドルに満たなかった。これに対し、ヒラリー・クリントン候補の陣営は、4000万ドル近くを集めていた。

オープン・シークレッツは、法律事務所を原告代理/被告代理で区別していないが、献金額の数字を見る限り、弁護士業界ではトランプ大統領に対する支持が強いようには見受けられない。しかも、就任前のトランプ氏に対して、約1万5000人の弁護士が、バノン氏を首席顧問に任命しないよう求める書簡を送っている。

トランプ大統領が検討している弁護士の1人が、ギブソン・ダン&クラッチャーに所属するセオドア・オルソン氏である。だが同事務所のパートナーとして有名なテッド・ブートロス氏は、トランプ大統領の移民政策とメディア攻撃を積極的に批判してきた。

トランプ氏の弁護団メンバーの候補としてもう1人名前が挙がっている弁護士が、カークランド&エリスのポール・クレメント氏だが、同氏の場合、保守派の代理人を務めたことでキャリアに傷がつく経験をすでに味わっている。2011年、結婚防衛法(現在は廃止)への異議申立てにおいて、米下院を弁護したことをめぐって、キング&スポルディングを退社したのである。

政治的な案件には費用がかかり、法律事務所内に分断が生まれ、大手法律事務所にとって新人弁護士のリクルート先である法科大学のキャンパスでも論争が生じる。リスク回避志向の強い法律事務所にとっては、一般的に、歓迎されざる厄介事なのだ。

カソウィッツ氏がいるため、トランプ大統領としてはすでにロシア疑惑の調査に向けて熟練の弁護士を1人確保した形だ。

カソウィッツ氏が絶好調であれば、法廷弁護士として最高に弁が立つだろうし、最悪でも、同じ法律事務所に所属する他の弁護士からの十分なサポートを受けられるだろう。カソウィッツ氏の法律事務所は、ドナルド・トランプ氏を長年の常得意とすることに非常に大きな誇りを持っている。

だが、それ以外の弁護士が大統領の「作戦司令室」に名を連ねる意欲を示すには、もう少し時間がかかりそうな状況だ。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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