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コラム:トランプ氏のロシア疑惑捜査、注目すべき3つの判例
2017年5月28日 / 00:02 / 6ヶ月前

コラム:トランプ氏のロシア疑惑捜査、注目すべき3つの判例

[ニューヨーク 23日 ロイター] - マイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)の弁護人は22日、上院情報委員会が召喚状で要請した書類を提出する意志がないことを同委員会に伝えた。

 5月23日、米議会とロバート・モラー特別検察官がトランプ大統領(写真)の選挙活動とロシア当局者との関わりを調べるなかで、頻繁に取り沙汰される可能性が高い3件の連邦最高裁判決とは。ヨルダン川西岸のベツレヘムで23日撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

理由を説明する6ページの書簡のなかで、コビントン&バーリング法律事務所の弁護人は、(他の判例と合わせ)「合衆国対ハベル」事件に関する連邦最高裁判所による2000年の判決を引用した。検察訴追に伴う詳細な捜査に相当するような広範囲に及ぶ召喚状に対して、証人は回答を強制されないという趣旨の判決である。

この「ハベル事件」というのは、かつてクリントン政権下で司法次官を務めたウェブ・ハベル氏に関する裁判である。ハベル氏は、いわゆる「ホワイトウォーター事件」に連座し、最終的に2件の重罪について有罪判決を受けた。

この判例は、過去の大統領に対する捜査における、少なくとも3件の連邦最高裁判決の1つである。連邦議会とロバート・モラー特別検察官がトランプ大統領の選挙活動とロシア当局者との関わりを調べるなかで、これら3つの判決が頻繁に取り沙汰される可能性が高い。

●ニクソン事件:大統領特権の制限

過去の最高裁判例のうち最も有名なのは、もちろん、1974年の「合衆国対ニクソン」だ。

この判決で裁判所は当時のニクソン大統領に対し、文書と録音テープをウォーターゲート事件を担当したレオン・ジャウォスキー特別検察官に提出するよう命じた。この「ニクソン事件」判決は、側近との通信を秘匿する行政特権を主張した大統領の権利を制限するものである。

一般に、こうした通信は機密保護を名目に秘匿されるが、連邦最高裁は、大統領特権は絶対的なものではなく条件付きであり、犯罪捜査の場合には適用されない場合があると判示した。

トランプ政権は、解任されたサリー・イエーツ司法長官代理による証言を阻止するために大統領特権を主張すると騒いでいたが、結局、それを取り下げることになった。

解任されたコミーFBI長官と大統領との会話を封印するために政権側が大統領特権を主張するのではないかという憶測がある。複数の法学者から筆者が聞いたところでは、仮にそうなったとしても、ニクソン事件の判例に基づいてトランプ政権が敗訴する可能性が高いという。

●リンゼー事件:弁護士と依頼者のあいだの秘匿特権を否定

1998年の連邦最高裁による「リンゼー事件」判決のおかげで、大統領と大統領法務顧問との通信も開示される可能性がある。

リンゼー事件は、ハベル事件と同様、ケネス・スター特別検察官による「ホワイトウォーター」疑惑に関する長期捜査から派生したものである。

クリントン大統領とモニカ・ルインスキー氏との関係を調査していた大陪審は、大統領次席法務顧問ブルース・リンゼー氏に対し、証言を求める召喚状を発した。リンゼー氏は、大統領の弁護士と依頼者のあいだの秘匿特権を挙げて、いくつかの質問に対する回答を拒否した。

だが連邦最高裁は、政府の法務顧問は「民間の弁護士とはまったく異なる立場にある」との結論に至った。

「行政府の法務顧問が、行政府内の犯罪容疑に関して証言するよう連邦大陪審に召喚される場合、理性と経験、義務と伝統から判断して、法務顧問はその証言を行わなければならない」と判断された。

●ハベル事件:憲法修正第5条による特権

ニクソン事件、リンゼー事件とは対照的に、フリン前大統領補佐官の弁護人らが22日に言及したハベル事件の判決は、特別捜査に抵抗する大統領の権限よりも、むしろ大統領に対する捜査を抑制するものである。

この事件では、スター特別検察官がハベル氏に文書提出を求める包括的な召喚状を発している。ハベル氏はクリントン政権に参加する以前に、ローズ法律事務所の依頼者に対する過大請求について罪状を認めていた。ハベル氏はこの司法取引により、クリントン大統領に対する捜査に協力せざるを得なかったが、スター特別検察官の捜査チームは、彼が手持ちの資料をすべて提出していないのではないかと疑っていた。

ハベル氏は憲法修正第5条に定める黙秘権を主張し、召喚状に従うことに抵抗した。これに対して特別捜査官は、ハベル氏に訴追免除を与える一方で、要求された文書を提出することを命じる裁判所命令を獲得した。ハベル氏は1万3000ページ以上の文書を提出したが、最終的に、脱税・詐欺容疑で新たに起訴されることになった。

連邦最高裁は、スター特別検察官に同意し、憲法修正第5条にもかかわらず、召喚状により、当人に不利な証拠を含む可能性のある文書の提出を証人に強制することができるとした。

その一方で連邦最高裁は、文書を提出することによって、広範囲にわたる召喚状のなかで要求された、他の方法では知られることのなかった文書の存在及び真正性が確認される場合は、文書の提出が証言に相当するものになる可能性があると述べている。

連邦最高裁は、このような状況においては、証人は憲法修正第5条により、自らに不利となる証言を拒否する権利があると判示した。

連邦最高裁は、ハベル氏に対する新たな起訴を却下するなかで、「自身に不利な証言を拒否する憲法上の特権により、大陪審の捜査対象は、潜在的に自らに不利となる証拠の存在についての情報を引き出すことを意図した質問への回答を強制されることを免れる」と述べている。

「憲法上の特権は、このような証拠を発見しようとする召喚状への回答が持つ、証言としての側面にも同様に適用される」

フリン氏の弁護団によれば、彼らの依頼者に対する上院情報委員会の召喚状は、ハベル氏に対するスター特別検察官によるものと同様に、過度に広範囲なものであるという。

「委員会は、回答すべき文書が存在するか否か、誰がそれを保有し、どこに所在するかを知らない」と弁護団の書簡に記されている。「これはまさに証言に相当する情報であって、憲法修正第5条はこうした情報の開示を強制されないことを意図している」

上院情報委員会は、フリン氏からの書簡に対する回答を検討しているところだと奉じられている(23日午後の時点では何の回答も発表されていない)。

民事、もしくは刑事上の法廷侮辱罪に問われる可能性もある。フリン氏の弁護人であるコビントン&バーリングのロバート・ケルナー氏はコメントを拒んでいる。

ここに紹介したニクソン、リンゼー、ハベル各氏の判例は、特別捜査によるダメージを抑える大統領権限に関するテストケースだ。ここに仲間入りしたいと思う者は誰ひとりいないだろうが、ロシア疑惑に関する捜査が進むなかで、これらの判例について多くが語られるのではないかと筆者は予想している。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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