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アングル:プーチン氏縛る国内経済、米と「制裁合戦」余力なし
August 2, 2017 / 5:31 AM / in 4 months

アングル:プーチン氏縛る国内経済、米と「制裁合戦」余力なし

[モスクワ 1日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領が、米政府に対して制裁をエスカレートさせて「報復合戦」を仕掛ける可能性は低い。米国に打撃を与える制裁は、同時に弱々しいロシア経済の回復を危うくする恐れがあるからだ。

8月1日、ロシアのプーチン大統領が、米政府に対して制裁をエスカレートさせて「報復合戦」を仕掛ける可能性は低い。写真はフィンランドで7月撮影。提供写真(2017年 ロイター/Lehtikuva)

ロシアは先週、米議会が対ロシア制裁強化法案を可決したことを受け、米政府に対して駐ロシアの大使館や領事館のスタッフ1200人のうち755人を削減するよう要請し、米政府が保有する2施設を差し押さえると表明した。

一見、強力な対抗措置のように見えるが、ロシアの対応は米側の制裁強化に比べて軽微だった。米制裁は、ロシアのエネルギー部門を対象としているほか、対ロシア融資の規制強化も視野に入れて、すでに実施された制裁についてトランプ大統領が緩和することを困難にする内容だ。

ロシア側の対抗措置が比較的軽かったことは、経済規模が約14倍の米国に対し、ロシアが打撃を与えるため選択できるカードが限られていたことを示している。

一方で、ロシア政府が、来年3月の大統領選に向けて経済の健全性を心配していることも示している。

2014年に米国と欧州連合(EU)が、ウクライナからクリミア半島を併合したロシアに対する制裁に踏み切った際、ロシア政府の報復は、西側からの食品輸入を制限するという比較的軽い内容だった。

「理性が感情に勝った結果だった。今回も全く同じ対応を予測している」と、モスクワを拠点とするコンサルティング会社マクロ・アドバイザリーのクリス・ウィーファー氏は言う。「(報復策は)米国に一定の嫌がらせをしつつも、国際投資を呼び込んで経済成長をはかるロシア政府の政策の邪魔をしないものになるだろう」

ウィーファー氏は、トランプ米大統領が制裁強化法案に署名した段階で、プーチン氏がさらなる報復措置に出ると予測するが、その場合もロシアと緊密な関係を持つ米企業は対象にならないとみている。

プーチン氏は2018年の大統領選で4期目を目指すかどうか明確にしていないが、ロシア政府の関係者はそうなることを予期している。

ロシア経済は、プーチン政権早期の数年間に5%超の成長を経験したものの、2015年と2016年には縮小し、今年の成長率は1.4%にとどまる見通しだ。

プーチン氏は、説得力のある形で勝利を収めるために強い経済を必要としている。ロシア政府は、西側との緊張の高まりにもかかわらず、外国からの投資やビジネスにはオープンな姿勢を強調してきた。

国内投資家らは、経済が不況から回復するなかでの投資に慎重な姿勢を崩しておらず、外国資金の呼び込みが重要になっている。

プーチン氏の助言役のアレクセイ・クドリン元財務相は7月27日、ロイターのインタビューで、ロシアの国内投資家は制裁強化がこれ以上続かないという確証を必要としており、それなしには経済見通しは弱いものになると述べていた。

<協力の制限>

プーチン大統領は7月30日に国営テレビで放映されたインタビューで、「アメリカ側にとってセンシティブな分野」で米政府との協力を制限することもできると述べたが、まだ必要ではないとの見方を示した。

「そうすれば、米露関係が傷つくだけでなく、われわれにもダメージが及ぶ」とプーチン氏は述べた。

    アナリストは、米露協力が緊密で、かつロシア側の制裁によって米企業が影響を受ける分野として、エネルギーと航空機産業をあげる。

    米石油大手エクソンモービル(XOM.N)は、ロシア極東沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン1」でロシア国営石油大手ロスネフチ(ROSN.MM)と手を組んでいる。また、北米やモザンビークでのプロジェクトでも協力することで合意している。

    世界最大のチタン生産者であるロシアのVSPO-アビスマは、長期契約により米航空大手ボーイング(BA.N)に最大40%のチタンを供給している。両社はロシアで合弁事業(JV)を立ち上げている。

    いずれの場合も、プーチン氏が政権内の強硬派からの圧力に負けて、ビジネス関係をつぶしにくる可能性は低い。

    ロシアは、輸出の主力である原油生産をソビエト崩壊後の規模に維持するため、エクソンのような企業の技術やノウハウを求めている。また、国内航空機産業の再興をはかるには、ボーイングの支援が役立つ。

    「外国からの投資は、単に資金をもたらすだけでなく、マネジメントや知識、技術移転などの目に見えない利益ももたらし、生産性や生活水準の向上にも資する」と、キャピタル・エコノミクスの新興市場担当シニアエコノミスト、ウィリアム・ジャクソン氏は指摘する。

    大統領としての最初の2期に生活水準を急速に上向かせて支持を固めたプーチン氏は、さらなる報復を検討するにあたって、この事実にも留意するとみられる。

    「これまでのところ、プーチン氏の対応は、ナショナリストの要求よりもずっと限定的だ」と、ウィーファー氏は言う。権力をほぼ一手に収めるプーチン氏だが、「有権者を意識せざるを得ない」のだという。

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