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コラム:窮地の米司法長官、なぜ辞任を避けるべきか
2017年7月26日 / 06:36 / 2ヶ月前

コラム:窮地の米司法長官、なぜ辞任を避けるべきか

7月25日、セッションズ米司法長官は、毎朝目が覚めるたびに、その日大統領からどんな非難を浴びるか、考えを巡らせているに違いない。写真は20日、司法省で記者会見するセッションズ長官 (2017年 ロイター/Aaron P. Bernstein)

[ニューヨーク 25日 ロイター] - セッションズ米司法長官は、毎朝目が覚めるたびに、その日大統領からどんな非難を浴びるか、考えを巡らせているに違いない。

先週は、昨年の米大統領選におけるトランプ陣営の「ロシア疑惑」についての司法省捜査からセッションズ氏が外れることを知っていたら、司法長官には指名していなかった、と大統領はニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで発言した。セッションズ氏は、大統領選でトランプ支持を表明した最初の上院議員で、しばらくの間、上院で唯一の支持者だったにもかかわらずだ。

また大統領は24日、「窮地に立つ司法長官」が、なぜ「いかさまヒラリー(・クリントン氏)の犯罪とロシアの関係を調べていないのか」とツイートした。

その翌日、批判姿勢をさらに強めた大統領は、「ジェフ・セッションズ司法長官は、ヒラリー・クリントンの犯罪に対して『極めて』弱腰の姿勢を取っている」とツイートした。

トランプ政権の新広報部長に就任したアンソニー・スカラムッチ氏はラジオ番組で、大統領のツイートは、セッションズ長官に辞任を求めるサインだと理解して差し支えないと語った。

セッションズ長官の友人も、ロイターの報道によれば、大統領が司法長官を辞任に追い込もうとしていると受け止めている。

米国憲法は、司法省にホワイトハウスから独立を保つことを求めていない。司法省も、結局のところ、大統領をトップとする行政府の一部だ。しかし、司法省のため、そして、米国は「法の国」だとの基本理念を維持するためには、セッションズ長官は、大統領に解任されるまで、その職にとどまらねばならない。

トランプ米大統領がセッションズ司法長官に対する批判をさらに強めている。仮にトランプ氏が司法長官の更迭に踏み切れば、厳しい批判が予想される。トランプ氏がセッションズ批判を強めている狙いとは。

ホワイトハウスと司法省に、大統領のツイートとセッションズ長官の進退についてメールでコメントを求めたが、返答がなかった。

<誰も法を超越せず>

1世紀以上にわたり積み重ねられた政治慣行は、現在はホワイトハウスとの関係に関する省内規律に正式に定められ、司法省を大統領の介入から守っている。検察官の行動は権力者の指示に左右されないという考え方は、この国の法の支配の基盤となっている。

「われわれは、誰も法を超越できないとするシステムに生きている」と、テキサス大のスティーブ・ブラデック教授は話す。「それを守る唯一の法的手段は、司法省の独立だ」

セッションズ長官自身も、1月に開かれた議会の指名公聴会で司法省が担う法の支配に対する強い支持を表明した。

1997年に上院議員に当選する以前は、連邦検察官やアラバマ州司法長官を長年務めたセッションズ長官は、上院司法委員会に対し、米司法長官は大統領の判断を追認するだけの存在であっては決してならないと述べた。

司法長官には、独立した決断を下し、必要とあれば大統領の越権行為を押しとどめる倫理的義務がある、とも語っていた。

大統領が、ツイートなどでセッションズ長官を酷評し、クリントン元国務長官を捜査するよう圧力をかけたことで、司法省は政治の影響を受けないという国民の信頼が傷ついた、とブラデック氏のほか、スタンフォード大のデビッド・スクランスキー教授、ジョージワシントン大のジョナサン・ターレー教授は批判。共和党のリンゼイ・グラハム上院議員も、同様のツイートをしている。

「トランプ大統領の発言は、司法省の伝統や価値を侮辱するものだ」と、ターレー氏は語る。同氏はこれまで、議論を呼んだトランプ氏の他の司法戦略について支持していた。

「一連の発言は、政治的脅威から隔離されたプロだと自認する司法省の一般法律家にとって、極めて悩ましいものだ」

セッションズ司法長官は、移民対策などトランプ大統領の政策を効果的に実行してきた。従って、セッションズ長官に対する大統領の怒りの原因は、拡大するモラー特別検察官によるロシア疑惑捜査から、大統領自身とその側近や家族を守れなかったこと以外に考えられないと、ブラデック教授は指摘する。

スタンフォード大のスクランスキー教授は、大統領の司法長官批判は厚顔無恥なものだと言う。「トランプ氏には、法の支配を尊重するそぶりすらない。うわべだけでも政治規範を気にする気配もない」

<圧力に耐える>

セッションズ長官が、司法省は大統領の干渉の影響を受けないと証明する唯一の道は、今いる場所にとどまることだ。

セッションズ長官が、省内の倫理専門家の意見を受け入れてロシア疑惑捜査に関与しないことを決めたのは、正しい判断だった。いま、自らの独立した権威を守るという決意を、大統領と部下の双方に示せるかどうかは、同長官次第だ。

フォーダム大学法科大学院のブルース・グリーン教授は、それが検察官として取るべき行動だと話す。「独立した検察官として、一番重要なのは圧力に耐えることだ。大統領のツイートは、圧力の1つの形だ」と、グリーン教授は指摘。「セッションズ氏に独立した行動を取る能力がないのなら、司法長官にふさわしくない」

現実的な懸念もあると、ブラデック教授は説明する。もしトランプ大統領がセッションズ長官を解任した場合、後任の人選は司法省の規則に縛られるが、同氏が自ら辞任した場合はトランプ氏の後任選びの選択肢が広くなる。ただし、上院閉会中にセッションズ氏が解任された場合は、この限りではないという。

もしセッションズ氏が司法長官の職を重んじるなら、自ら辞任しないことが最善の選択だと、ブラデック氏は言う。

セッションズ長官と個人的な知り合いで、好意を抱いているというターレー氏は、司法省は政治圧力に弱いという評判を避けるためにも、長官は職務にとどまるとみている。「セッションズ長官は常に、自分は検察官だと考えてきた。辞任すれば、司法省の伝統に大きな傷がつくことが分かっていると思う」

もし大統領がセッションズ長官の解任に踏み切れば、大きな政治的な反発を招くだろう。

明らかに政治的な理由で前任の司法長官をクビにした大統領のために、働きたいと考える適任の後任候補者が果たしているだろうか。

上院は、トランプ大統領の人選を承認するだろうか。司法省の法律専門家は、検察官の独立を踏みにじった大統領の下で働き続けるだろうか。トランプ大統領の顧問からも、セッションズ氏解任に反対する声が上がっていると考えられる。

従って、大統領の罵詈雑言をできる限り無視して、職務を続ける責任は、司法長官にある。セッションズ長官の経歴や信条、ロシアとの関係についてどう考えるかはさておき、長官職を辞任しないことを願うばかりだ。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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