March 15, 2019 / 2:12 PM / 8 days ago

コラム:過剰債務と財政拡張、世界経済の楽観論に潜む米中の「病巣」

[東京 15日 ロイター] - 世界経済は今年後半に回復する──。このメーンシナリオに死角があるとすれば、過剰債務に直面する中国経済が、経済対策を打ったにもかかわらずズルズルと失速するか、財政拡張に傾く米トランプ政権によるマクロ政策の副作用で、想定外の米長期金利上昇が起きることではないかと予想する。可能性は小さいものの、リスクが顕現化した際の破壊力は大きく、この両国の抱える「病巣」からは目が離せない。

 3月15日、世界経済は今年後半に回復する──。このメーンシナリオに死角があるとすれば、過剰債務に直面する中国経済が、経済対策を打ったにもかかわらずズルズルと失速するか、財政拡張に傾く米トランプ政権によるマクロ政策の副作用で、想定外の米長期金利上昇が起きることではないかと予想する。2017年6月撮影(2019年 ロイター/Thomas White)

<多数説は年後半の回復>

15日の日銀金融政策決定会合の終了後、会見に臨んだ黒田東彦総裁は、短期的に中国や欧州が減速しているとしたものの「中国では大幅な景気対策が打たれており、どんどん減速する状況ではない」と指摘。対中輸出に影響が出ている欧州も含め「年後半には回復するのがメインシナリオ」との見通しを示した。

この黒田総裁の想定は、グローバルマーケットでの主流的な見方でもある。実際、中国経済に対する海外投資家の評価は悪くないようだ。

中国商務省が15日に発表した1─2月の同国への海外直接投資は、前年同期比5.5%増の1471億1000万元(218億9000万ドル)で、米国からの投資は前年同期比44.3%増となった。

<バブル崩壊後の日本に似る過剰債務の中国>

しかし、中国の過剰債務問題は深刻化している。内閣府が国際通貨基金(IMF)や国際決済銀行(BIS)のデータをもとに試算した2017年9月末の中国の民間非金融部門債務残高の対名目GDP(国内総生産)比は、約275%に達している。

また、16年の名目GDPが2000年の約10倍なのに対し、債務残高は17倍に膨張していた。

過剰債務を抱えた企業に対し、金融機関が新規に融資を実行しても、新たな設備投資には向かわず、利払いに当てられるいわゆる「追い貸し」状態に陥りやすいことは、バブル崩壊後の日本でみられた現象だ。

また、多くの企業で債務返済を同時に始めると、そのことが需要減少に結びついて、デフレ的現象を生むことになるのも、日本で経験したことだ。

その中国で、2019年に企業の税金や手数料を約2兆元(2983億1000万ドル)削減するなどの経済対策が打ち出されても、どの程度の需要押し上げ効果を持つのか、疑問の声を上げるエコノミストは少なくない。

さらに米中通商交渉が予想を超えて長期化し、米国の対中高関税がかかったままの状況が続けば、中国経済にはボディーブローのようにダメージが蓄積されると予想される。

こうしたリスクシナリオが顕在するなら、年後半に中国経済が回復軌道に復帰するのは難しいだろう。

<トランプマジックの功罪>

一方、好調な景気を維持する米国だが、別のリスクを抱えている。トランプ大統領が11日に議会に提出した4兆7000億ドルの2020年度予算教書に対し、超党派の「責任ある予算委員会」は、米国の債務が向こう10年間で10兆5000億ドル増加すると試算。

与党・共和党のマイク・エンジ米上院予算委員長は13日、米政府の赤字は近く、年1兆ドルを超えるとし「われわれは明らかに不吉な方向に向かっている」と語った。

財政拡張的な政策は、当面の米景気を支えるうえでは「プラス」だろう。しかし、不気味なデータもある。

8日に発表された2月米雇用統計で、2月の時間当たり平均賃金が前年同月比3.4%上昇と09年4月以来の大幅な伸びとなった。

単月の振れが大きなデータではあるが、86億ドルも投じて万里の長城並みの壁を建設するとなれば、多くの労働力が投入され、さらに人件費を押し上げる展開も予想される。

<米国発のリスク顕在化シナリオ>

その時にマーケットがどのように判断するのか。ここが大きな分かれ道ではないだろうか。財政赤字の拡大と労働コストの上昇をみて、米長期金利が3%を超えて上昇するのか、それとも先進国に共通の低成長の未来を予見して、2%後半で推移するのかだ。

もし米長期金利が上がり出せば、米株下落を伴って世界の金融・資本市場はかなり混乱する可能性が出てくる。

このケースでは、労働コストが上昇しているので、米連邦準備理事会(FRB)は株価下落が大幅なものになっても、利下げで対応できそうもないという「困難」にも直面するだろう。

日本経済は、少子高齢化の進展によって、国内市場の収縮が止まらない。海外経済への依存度を高めつつ、中国と米国のリスクが顕在化すると、そのダメージを吸収する余力が極めて少ないことがわかる。

楽観的なメーンシナリオ通りに米中経済が進展することを祈りつつ、リスクシナリオの芽が出てこないか、日々、丹念に経済情報の分析に時間を充てるしか、東京市場の参加者にできることはないのかもしれない。

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