August 5, 2019 / 7:47 PM / 14 days ago

米中摩擦激化、世界的リスクオフ:識者はこうみる

[5日 ロイター] - 6日の東京株式市場は、前日に米株が急落したことを受け、下落幅が600円を超えた。中国が人民元安を容認、米国は中国を為替操作国に認定した。米中貿易摩擦がさらに悪化するとの懸念が強まっている。

 8月6日、東京株式市場は、前日に米株が急落したことを受け、下落幅が600円を超えた。中国が人民元安を容認、米国は中国を為替操作国に認定した。米中貿易摩擦がさらに悪化するとの懸念が強まっている。写真はニューヨーク証券取引所のスクリーンに映し出されたダウ平均株価。8月5日、ニューヨークで撮影(2019年 ロイター/Brendan McDermid)

市場関係者のコメントは以下の通り。

●短期反発後に再度の売りも

<ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出 真吾氏>

きょうの東京市場は売りが売りを呼ぶ連鎖の展開となった。米中貿易摩擦の激化が嫌気され、米国株主要3指数がそろって下落したことに伴い、日本株もリスクオフとしての売りが目立った。

日経平均は一時前日比600円超える下げとなったものの、戻り歩調に入り、落ち着き始めている。PBR(株価純資産倍率)1倍の水準となる日経平均2万円が視界に入ってきたことで、投資家が買いに入ったようだ。実際、去年の12月に年初来安値を更新した際も、PBR1倍で下げ止まった。市場では2万円が下値メドとして意識されているため、2万円を割ることはないのではないか。

ただ、日経平均の下げはいったん落ち着いたが、短期的な反発を狙った買いであり、経済情勢や米中貿易摩擦が改善されることを期待した買いではない。ある程度反発したあと、また売りに押される可能性がある。9月1日に対中追加関税第4弾が発動されると、新たなリスクオフが起きる可能性もある。9月1日が近づくにつれ、トランプ大統領が発動を撤回する可能性もあるが、予断を許さない状況が続いている。

●16年半ばに類似、株式は買い場到来

<東海東京調査センター チーフグローバルストラテジスト 平川昇二氏>

世界の株式市場は大幅な調整に見舞われているが、債券高、株安、円高、人民元安、原油2番底入れと2016年半ばと全く同じ展開だ。消費者信頼感指数や週次の新規失業保険申請件数など、景気に先行する指標は堅調で、仮に3000億ドル相当の中国製品に対する関税率を25%に引き上げても4兆5000億ドルの米財消費が崩れるリスクは低い。本格的なリセッションではないと判断され、グローバル株式市場で5年程度に1度到来する良好な投資機会が来ているとみている。

日本株のバリュエーションも16年当時と同程度まで割安になっている。前日のCME日経先物のPBR(株価純資産倍率)の水準は1.01倍とボトム。PER(株価収益率)も過去約20年間のボトム水準となっている。外為市場で円高が進行すれば収益が大幅に悪化するリスクはあるが、前年比4%程度の円高水準である105.30円台で下げ止まるならば大幅減益も想定し難い。

●ドル下値めど102円、日銀緩和に円高リスク

<三菱UFJ銀行 チーフアナリスト 内田稔氏>

米中摩擦は解消の見通しが立たず、英国も合意のないまま欧州連合(EU)の離脱を迎える危険性が高まってきた。ドル/円は下値不安が強まっている。

日銀の異次元緩和が始まった2013年以降の経験則に基づくと、円とドルがともに買われる展開となった年のドル/円の年間変動率は、年始水準の約1割、10─11円程度。今年4月に記録した112.40円を今年の高値とすると、年内の下値めどはおおむね102円付近となる。

日本の貿易収支がやや悪化しており、円買い圧力が以前ほど強くはないこと、活発な対外直接投資や証券投資が一定の円売り需要をもたらすといった円の需給環境に照らすと、ここからドル/円の下げ幅は拡大しづらい面がある。

もっとも、米景気が減速ではなく、後退にまで及ぶとの見方が台頭すれば、ドル安圧力は一段と強まり、堅調な円とドルの動きはかい離する。そうなれば、年内の100円割れも現実味を増す。

ドル105円割れが定着すると、日銀は追加緩和を講じる可能性が高い。ただ、円金利の低下余地は限られている。逆イールドが一段と助長されてしまうようなら、金融緩和の副作用が一段と警戒される形で、かえって株安と円高が進行する可能性もある。

●「ループ」に戻れない警戒感

<JPモルガン・アセット・マネジメント グローバル・マーケット・ストラテジスト 重見 吉徳氏>

マーケットではこれまで、貿易摩擦への懸念が高まりリスクオフになった後に、米国と中国が歩み寄りをみせたり、FRB(米連邦準備理事会)の金融緩和姿勢が示されるなどして、リスクオンに戻るというループ(循環)が続いてきた。しかし、今回はそのループに戻れないかもしれないという警戒感が投資家に広がっている。

中国当局が1ドル=7元を超える人民元安を容認したことは、米国との通商交渉をあきらめた可能性があると市場では受け止められている。トランプ米大統領が対中追加関税第4弾を9月1日に発動する考えを示す一方、中国は米農産物の輸入を停止した。両国にとって経済のことを考えれば、やめた方がいいのだが、どちらも譲れない状態になっているようだ。

2015年のチャイナ・ショック当時と比べれば、まだ株価の下落率などは小さい。しかし、今回は米中対立の中で景気後退のリスクが警戒されている。株価下落が続けば、選挙を控えるトランプ米大統領から何らかの対応策が出てくるであろうし、FRBもさらなる追加緩和に動くかもしれない。だが、中国がそこに乗ってくるかはまだわからない。

米国やドイツの債券市場では、長いゾーンの金利低下が目立っている。景気後退で、しばらく金利は上がってこないということを織り込んでいるのかもしれない。

●日本の長期金利はマイナス0.3%試す可能性

<アライアンス・バーンスタイン 債券運用調査部長 駱 正彦氏>

米中貿易摩擦の激化が止まらず、マーケットは大きくリスクオフに傾いている。人民元が1ドル=7元を超えたことはシンボリックであり、中国のこの問題に対する強硬姿勢を示している可能性がある。

一方、米国は中国を「為替操作国」に認定した。5月に為替報告書を発表したばかりであり、通常は半年に1度の見直しであるにもかかわらず、今月いきなり認定したのは、米国側の強硬姿勢を示していよう。

世界的に金利が低下しており、日本でも長期金利は日銀の変動許容下限であるマイナス0.2%を試すことになりそうだ。まずは0.25%を目指すことになるが、リスクオフの進展次第ではマイナス0.3%を試すことになるかもしれない。

ただ、それでも円高は止まらない可能性がある。欧米中銀に比べて日銀の金融緩和余地が乏しいとみられているためだ。日銀は、ETF購入拡大や長期金利の変動許容幅拡大に動く可能性があるとみている。

●調整長引く公算、5─10%の調整を想定

<アリアンツ・グローバル・インベスターズ(ニューヨーク)の米国投資ストラテジスト、モナ・マハジャン氏>

今回の調整は少し長引く可能性が高い。足元はニュースの空白期間となっている。決算シーズンが終わり、米連邦公開市場委員会(FOMC)も9月までない。その空白期間を埋める材料は通商面であり、今から9月までに何かが起こりそうだ。多くの不確実性がある。

9月のFOMCまでのわれわれの見解は慎重でありディフェンシブだ。可能なら利益を確定し、キャッシュポジションを引き上げるだろう。少なくとも5─10%の調整を想定している。

●通貨戦争の始まり、一段安の公算

<スパルタン・キャピタル証券(ニューヨーク)の首席市場エコノミスト、ピーター・カルディリョ氏>

中国が事実上の通貨切り下げを行ったとのニュースに反応している。事実上の通過切り下げで貿易戦争が激化するとの懸念が高まっている。今回の動きは通貨戦争の始まりとなる恐れがあるとみている。

中国が為替を用いて米国に報復していること、また中国が米国の農産品の輸入を停止したことは市場にはマイナスのシグナルで、相場が一段と下落する可能性があることを示している。

●米追加利下げ圧力高まる

<プリンシパル・グローバル・インベスターズ(ロンドン)の首席ストラテジスト、シーマ・シャー氏>

貿易戦争による米経済に対するリスクの再評価が進む中、米株式市場の大規模な調整に備える必要がある。下振れリスクを相殺するため、連邦準備理事会(FRB)に対する9月の追加利下げ圧力は当然、大幅に高まる。

株式市場の調整がどの程度長引くかは、貿易戦争がどこまで深刻化するかに加え、FRBの対応次第となる。2020年に大統領選を控え、トランプ大統領は株式市場が長期にわたり大きく調整し、景気低迷につながることは望んでいないだろう。

●警戒必要、貿易戦争は新たな段階に

<エコノミック・アウトルック・グループの首席グローバルエコノミスト、バーナード・バウモル氏>

米サービスセクターの指標が失望を誘う内容となったことが下落の要因とみられる。これまで米経済はオールが1つしかないボートのようなものだった。その唯一のオールがサービスセクターだった。サービスセクターと消費者が主に経済を困難から守ってきていた。

製造業とサービスセクターがともに減速すれば、より大幅な景気減速の可能性が高まり、おそらく来年初めのリセッション(景気後退)入りのリスクも高まる。

人民元は1ドル=7元台まで下落した。貿易戦争は新たな段階に入り、近い将来に米中が通商合意に至る可能性がさらに低下している。

8月5日、米株式市場は急落。中国が人民元安を容認する中、米中貿易摩擦が悪化するとの懸念が強まった。写真は5日、ニューヨーク証券取引所で撮影(2019年 ロイター/Brendan McDermid)

元安は中国の交渉担当者らが米大統領選後まで協議が長引いても構わないと考えている可能性を示唆している。

市場にとって重要な局面だ。見通しはかなり不透明で、慎重になり資本を守るときだ。

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