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コラム

コラム:米国のワクチン義務化と集団免疫獲得、企業努力に限界

[ニューヨーク 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 新型コロナウイルスのワクチンを打つか、そうでなければ職場に戻ってくるな――。感染拡大が続く中、ユナイテッド航空から資産運用大手ブラックロックまでさまざまな米企業が今、従業員にこう通達している。これは米国社会が集団免疫獲得に近づくのを助けるし、死亡者を減らす上でも助けになる。しかし政府の任務の範疇に残された空白部分を、こうした企業努力だけで埋めることはできない。

 8月6日、新型コロナウイルスのワクチンを打つか、そうでなければ職場に戻ってくるな――。感染拡大が続く中、ユナイテッド航空から資産運用大手ブラックロックまでさまざまな米企業が今、従業員にこう通達している。写真は5日フロリダ州マイアミでワクチン接種を受ける女性(2021年 ロイター/Marco Bello)

在宅勤務でなく出社する従業員の出勤条件としてワクチン接種を突き付ける米企業は増えている。モルガン・スタンレーやクラウドシステムのセールスフォース・ドット・コム、マイクロソフトなども名を連ねる。ウォール街やシリコンバレーでは、既に大半の働き手がワクチンを接種済みとされ、こうした通達を出すリスクは小さい。むしろ、接種していない従業員を容認することの方が、就業拒否の動きを広げるかもしれない。

しかし、おおむね給与が高く、ワクチンにも理解のある労働力以外では、接種の完全義務化は経営者に相当な勇敢さが必要になる。実際のところ、ほとんどは義務化していない。小売り大手ウォルマートやドラッグストア大手ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスは、米国内の事務系従業員にはワクチン接種を求めているものの、店舗従業員は対象外としている。デルタ航空がワクチンを打つ必要があると定めたのは新規の従業員だけで、既存従業員は対象にしない。人手不足がはなはだしく、接種率もまだ低い業種の場合、対象を一部従業員に限った接種義務化でさえ難航しているのが現状だ。

それでも何とかして限界に挑もうとする企業も出てきている。食肉加工のタイソン・フーズは全従業員に11月1日までの接種を命じる一方で、接種証明を会社に提出した人には報奨金200ドルを出す方針を打ち出した。接種免除の妥当な理由を申し立てられず、なおも接種を拒否する場合は次の仕事を探すしかなくなる。

ユナイテッド航空も6日、同様の通告をした。同社では既に客室乗務員の80%強、パイロットの90%については接種が完了している。

どうせなら米政府が命令を出せば、話は単純になるはずだ。とはいえ、その現実味は乏しい。ニューヨーク市では飲食店や劇場に入る際に市民に接種証明提示を義務付けたい考えで、フランス政府も同じ方向に向いている。しかし国全体としては、英政府と米政府にそうした意向はない。

サウジアラビアは全ての職場についてワクチン接種者のみ立ち入れると定めたが、それは独裁的な政治体制だからこそ可能と言える。全員へのワクチン接種命令がどこでも当たり前になる可能性は少ない。

一方で指導力の欠如がもたらす負の影響に苦しむのは、既にパンデミックの痛みにさらされている人々ということになる。商務省センサス局の調査からは、米国でのワクチン未接種者の半数は家計所得が5万ドル未満にとどまっていることが分かる。新型コロナの死者が最も多いセクターは食品や農業、運輸、物流などで、いずれも人が十分に集まらず求人件数が急増しているセクターであることが、カリフォルニア大学サンフランシスコ校が1月に公表した調査で判明している。

危険なのは、ワクチン接種義務化を最も必要とする業種の経営者が、実は従業員に行使できる影響力が一番小さいという点だ。新型コロナを制圧するためにワクチン接種義務化を導入しなければならないのは、経営トップではなく政府のはずだ。

●背景となるニュース

*ユナイテッド航空は6日、新型コロナウイルスワクチンについて10月25日まで、もしくはワクチン使用が当局の一般承認に以降してから5週間以内のどちらか早い時期に、米国の全従業員に接種証明書提出を義務付けると発表した。ただパイロット組合は、接種義務化にはさらなる協議が必要で、一部の組合員は義務化に同意していないと述べた。

*食肉加工のタイソン・フーズは3日、全従業員に11月1日までのワクチン接種を義務化したとし、既に半数ほどがワクチンを打ち終えたことも明らかにした。この方針は引き続き労組側との話し合いの対象となっている。

*米疾病対策センター(CDC)によると、5日時点でワクチン完全接種率は全人口の50%弱、成人人口の61%。これは欧州もほぼ同じだ。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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