December 8, 2018 / 9:28 AM / 7 days ago

コラム:新エネルギーの星「バナジウム」、悩みは供給不足

[ロンドン 5日 ロイター] - 一昨年のリチウム、昨年のコバルトに続き、今年は新エネルギーに関連する素材としてバナジウムが脚光を浴びた。しかしバナジウムはかねて構造的な供給不足状態にあり、活用拡大の障害となりそうだ。

12月5日、一昨年のリチウム、昨年のコバルトに続き、今年は新エネルギーに関連する素材としてバナジウムが脚光を浴びた。写真は中国遼寧省丹東2009年7月、没収されたバナジウムを手にする国境警備担当者(2018年 ロイター/Jacky Chen)

中国のバナジウム価格は今年3倍以上に高騰。数少ないバナジウム生産企業のひとつ、南アフリカのブッシュベルト・ミネラルズ(BMNB.L)の株価は年初の4倍以上に跳ね上がった。

バナジウム・レドックス・フロー電池(VRFB)はエネルギー貯蔵の画期的な技術だ。しかし供給の少なさと、それゆえの価格の不安定さが、バナジウムの輝ける将来を見通す上で2大障害となっている。

<鉄鋼に利用>

バナジウムは鉄鋼を強化する性質があり、SPエンジェルのアナリストによると世界の使用量の90%強を鉄鋼業界が占めている。このため、世界の鉄鋼生産で支配的な地位を占める中国が、世界1のバナジウム消費国となっている。

中国はこのほど、耐震性強化のために建設用の鉄筋の強度基準を変更。これによって影響を受けるバナジウムの量は少ないが、SPエンジェルによると、積み重なれば年間1万トン前後の消費増につながる見通し。これは2016年の世界バナジウム生産量の12%前後に当たる。

<供給減少>

折しも中国は、環境政策のためにバナジウムの供給能力を減らそうとしている。

バナジウムは磁鉄鉱の精製過程で生産されるものが大半で、約73%は、鉄鋼を生産する際に生まれる鉄スラグの形をとる。

バナジウムを生産する製鉄所は、バナジウムを利用して鉄を製造する製鉄所とは異なり、伝統的に高コスト、低品質の磁鉄鉱を扱う業者が多い。

中国の製鉄会社は効率化や環境への配慮から、より高品質の磁鉄鉱を好み、こうした低品質磁鉄鉱への需要は減っている。この結果、バナジウムの原料である鉄スラグの生産も減る結果となっている。

SPエンジェルによると、中国がロシアから4種類の鉄スラグの輸入を禁止したことも、供給不足に拍車をかけた。

もうひとつのバナジウム原料である無煙炭の供給も、中国のスモッグ対策によって制限されている。

こうした中国の需要増と供給制約が、小規模なバナジウム市場を直撃し、価格が高騰した。

SPエンジェルによると、バナジウム市場は昨年既に8000トンの供給不足に陥っており、2020年まで需要が供給を上回る状態が続きそうだ。

無煙炭もしくは鉄スラグの精製技術が急発展しない限り、ブッシュベルトやカナダのラーゴ・リソーシズ(LGO.TO)のようなバナジウム生産企業が供給不足を埋めるしかない。

<電池用需要>

バナジウムは発展途上国を中心に、今後のエネルギーインフラ構築の鍵を握り得る金属で、こうした状況は問題だ。

ブッシュベルトによると、昨年の世界需要に占めたエネルギー貯蔵用利用の割合はわずか2%前後だが、将来的な増加余地は非常に大きい。

ブッシュベルトはウェブサイトに「現在の推計では、2030年までにVRFBはバナジウム消費の20%となる見通しだが、今後10年間に(バナジウムが)エネルギー貯蔵市場の25%を占めるとすれば、5万トンまで上振れる余地がある」と記している。

5万トンとなれば、現在の世界生産量の約半分だ。

ブッシュベルトは「VRFB用バナジウムの供給を確保できるかどうかが、このシステムの成功の鍵を握っている」と指摘した。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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