September 14, 2018 / 4:25 AM / 2 days ago

コラム:トランプ政権内部の「レジスタンス」は英雄にあらず

[11日 ロイター] - トランプ大統領に抵抗すべく密かに活動しているという、氏名不詳の政権内部関係者は、ヒーローではない。

国務省在籍時にイラク戦争を巡る真実を内部告発したことで職を失った筆者としては、ボブ・ウッドワード氏の内幕本で取材を受けた人々や、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)に匿名コラムを寄稿した「レジスタンス」氏が、トランプ氏の最悪の衝動をちょっとした嘘や官僚的なごまかしで抑え込む「愛国者」として称賛されているのを見ると、発言する責任を感じてしまう。

同じような選択を迫られた立場として、彼らのアプローチが名誉あるものでも、有効でもないことが分かっているからだ。

個人的に正しいと思うことだけをやるというのなら、政権に参加すべきではない。彼らは米国に奉仕するのであり、米国憲法に対して宣誓を行う。「大統領に『本当に』同意できない場合には、自分の好きなようにやっていい」という但し書きは存在しない。

唯々諾々と従うロボットのような官僚を支持するわけではない。だが政治理念というものは、どれだけ激しい反対を受けようとも、ある時点で、トランプ氏や前大統領のバラク・オバマ氏個人の理念から、米国の理念に転じる。

戦場であれ交渉テーブルであれ、そうした理念をグローバル規模で実践することは、チームスポーツのようなものだ。「匿名」氏は混乱に抵抗していると主張しているが、チーム理念の実践以外の方法こそが、そうした混乱をもたらしている。

筆者は24年にわたり、そのようなシステムのなかで働いてきた。当時のレーガン政権のもとで国務省に入省し、オバマ政権時代に離脱した。この時期、政治イデオロギーには大きな幅があり、自身では賛同できないことや、危険だと思えることさえたくさんあった。

これは軍や情報機関の人々についても言えることだ。ある大統領の下でムジャヒディーンと呼ばれる武装イスラム勢力を訓練するためにアフガニスタンに派遣されることもあれば、別の大統領の下では彼らを殺しに行くこともある。

2003年のイラク侵攻に向けた準備のなかで、政府関係者の一部は、大量破壊兵器が存在しないという情報に触れ、ジョージ・W・ブッシュ大統領が戦争の大義について誇張ないし嘘をついていると理解していた。これに対応して、3人の高官が国務省を辞任した。

もう1人、海兵隊出身の国務省官僚は、アフガニスタンでの戦争に抗議して辞任した。彼はNYT紙上で(今回のような匿名による寄稿ではなく、署名入りの書簡で)「現在の米国政権のために働く自分の能力と、自分の良心とを両立させようと努力したが、できなかった」と訴えた。

さらに10年以上前には、4人の国務省官僚がボスニア紛争絡みで辞任しているが、これも辞任の理由が公表されている。

他にも、大統領の決定が米国にとって有害であると考え、声を上げて具体的な証拠を公開することによって、自らの地位や、証拠に基づく訴訟を起こす自由を失った人々は存在する。チェルシー・マニング氏は機密データを漏洩したことで7年間を獄中で過ごし、エドワード・スノーデン氏は、憲法で保障された自由を脅かす米国家安全保障局(NSA)の政策を公にしたことにより、亡命生活を送る羽目に陥った。

筆者はと言えば、かつて筆者自身が中心的役割を担ったイラク復興任務の失敗を暴露する「We Meant Well(原題)」を執筆した見返りとして、外交官としての仕事を失わざるをえなかった。

政策を巡り意見が対立するのは、トランプ政権に限った話ではない。また、能力の問題でもない。レーガン氏は耄碌(もうろく)していると思われていたし、ジョージ・W・ブッシュ氏は間抜けだと思われていた。

だが、悪しき政策を進めることに対する良心の呵責は、政策の足を引っ張ろうとコソコソと政権内で策動する人物によってではなく、米国を強く信じるあまり、自らの声を届けるために生命や財産、名誉を代償として差し出してしまうような善良な人物によって解決されるべきなのだ。

NYT匿名コラムの書き手は、政権関係者がトランプ氏の行き過ぎを阻止していると主張しているが、詳細については何ら明らかにしていない。私たちしては、彼らが何をやっているにせよ、大統領が望んでいることよりもマシであるに違いないと想定するしかない。

 9月11日、トランプ大統領に抵抗すべく密かに活動しているという、氏名不詳の政権内部関係者は、ヒーローではない。写真は5日、ホワイトハウスでのトランプ大統領(2018年 ロイター/Leah Millis)

ウッドワード氏は新著「恐怖:ホワイトハウスのトランプ(Fear: Trump in the White House)」の中で、マティス米国防長官は、シリアのアサド大統領を暗殺せよというトランプ大統領の要求に対し、まるでレジスタンスのように制止したと書いているが、マティス長官はこれを否認している。もちろん、そもそも暗殺命令が発せられたとすれば違法であろうし、政府内の誰もがそれを拒否する必要がある。

1つだけ検証可能な実際の「抵抗」行動が、ウッドワード氏の著書で紹介されている。トランプ氏の元経済顧問ゲイリー・コーン氏が大統領執務室に入り、トランプ氏のデスクから、米国が韓国との貿易協定から脱退すると書かれた文書をひったくったというのだ。こうしてコーン氏は、トランプ氏が同文書に署名することを阻止した、とある。

だがこのエピソードは信憑性に欠ける。大統領の署名を必要とする「決裁書類」は、ホワイトハウスのスタッフにより注意深く管理されている。大統領執務室から簡単に無くなることはないし、もしそのようなことがあれば、誰かが探している。ロンドン駐在の米国大使の下でそのような仕事をやっていたから知っている。これではまるで、クレジットカードの請求書を破り捨てれば債務がなくなると考えるようなものだ。

仮にコーン氏が文書強奪に成功していたと認めるにしても、ある貿易協定を守ることが、米国の求める「抵抗」行為なのだろうか。実際の文書を読むと、トランプ氏の意図は、協定脱退をちらつかせ、施行が180日間遅れることを口実に再交渉を強いることにあった。コーン氏は彼のボスに(あるいは選挙の結果に)同意していなかった。愛国者ではなく、単に不満を持った部下にすぎない。

「トランプ氏は大統領にしておくには愚かすぎる」という主張については、ケリー大統領首席補佐官も、マティス国防長官と同様、ウッドワード氏にそのようなことを話したことを否定している。

それに、米国憲法第25条に基づく更迭に値するほど(これは匿名論説や、マイケル・ウルフ氏による今年初めの暴露本「炎と怒り」で提起されている選択肢だが)、トランプ大統領が精神異常や知性欠如により職務能力に欠けるという証拠は何も存在しない。

これはうわさがうわさを呼ぶだけの話で、どこかで聞いたような話を繰り返す匿名の声が、大統領に会ったこともない精神分析医に裏付けられ、占い師がヤギの内臓を読み解くように、煽動的な評論家が大統領のツイートをそう解釈しているにすぎない。

これまでのところ、筆者のようにオバマ氏とレーガン氏ほど大きく異なる歴代大統領の下で働いた人間であれば理解している通り、米国がしっかりと機能していく唯一の道は、それが不可能になるまでは内部関係者が国家のために働くことである。

それはつまり、憲法に従って、自分たちは選挙で選ばれたわけではなく、究極的には選挙で票を投じた人々のために働くこと、そして憲法には「ただしレーガン、ブッシュ、クリントン、オバマ、トランプは別だ」などという例外規定など存在しないことを肝に銘じるということだ。

政府機能を内側から妨害するような行為は、海外情報機関の関係者に金で買われた米国当局者がやることだと私たちは理解している。私たちは、政権内部のルートを通じて反対を主張し、時には、きちんとした形で辞任して、問題を人々の目に触れさせたのだ。

米国が致命的なリスクに晒されていると考える政府部内の人々には、著名ジャーナリストに噂話を流す以上のことをやっていただこう。

党利党略で動く工作員と見られたくなければ、辞任し、証言し、証拠となる文書を提示する必要がある。

マニング氏は民間人だった。スノーデン氏は外部企業から派遣されており、NSAの職員ですらなかった。ボスニア紛争で異議を申し立てた国務省の中堅職員について報じた1993年の米紙ワシントン・ポストの記事は、「私たちは彼らのことなど聞いたこともないはずだ」と書いている。「だが彼らは、米国政界では普通でないことをやってのけた。彼らは道徳的な理由で職を捨てたのである」

こうしたことが何か起きるまでは、我々は匿名の「レジスタンス」や、信頼性に欠ける匿名の情報源にいっさい関心を向けるべきではない。米国という国家は、ホワイトハウス西棟でのポストよりも重要である。本当に脅威が迫っているなら立ち上がればいい。そうでなければ口を閉ざすべきだ。

*筆者は米国務省に24年間勤務。著書に「We Meant Well: How I Helped Lose the Battle for the Hearts and Minds of the Iraqi People」など。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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 9月11日、トランプ大統領に抵抗すべく密かに活動しているという、氏名不詳の政権内部関係者は、ヒーローではない。写真は12日、ホワイトハウスでのトランプ大統領(2018年 ロイター/Carlos Barria)

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