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偏重する日銀緩和期待、財政不十分でデフレ脱却期待は広まらず

[東京 23日 ロイター] 日銀の追加緩和期待が強まり円安が進む一方、日本株は伸び悩んでいる。利益確定売りが強まったこともあるが、財政政策が不十分な一方で、日銀への緩和期待だけが偏重しており、市場のデフレ脱却期待が広がらないことも一因だ。

10月23日、日銀の追加緩和期待が強まり円安が進む一方、日本株は伸び悩んでいる。写真は都内の外為トレーダー。2010年9月撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

外需減速懸念も根強く、円安が進んだとしても、国内企業の業績下方修正の懸念が晴れないなかでは、積極的なリスクオンは難しいという。

<金融と財政のアンバランス>

ドル/円は一時80.02円と3カ月半ぶりの高値を付けたが、日経平均.N225は一時マイナス圏に沈むなど上値の重さが目立った。「ドル/円が一時80円と円安に振れ日本株をサポートしているが、日経平均9000円オーバーでは利益確定売りが優勢なようだ」と、松井証券シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏は言う。日本株は予想株価収益率(PER)が12倍前半と割高感はない水準だが、商いは縮小気味で様子見ムードが早くも漂っている。

リスクオン相場の一服は、これまでの円安と株高の進行が急ピッチであったことから利益確定の動きが強まったことが要因だが、日本経済をめぐる不安感が消えないことも大きな背景にある。円安要因の一つは日銀の追加緩和期待だが、金融政策への過度な偏重に懸念を示す声も多い。

複数の関係筋が22日、ロイターに明らかにしたところによると、日銀は早ければ30日の金融政策決定会合で、資産買入基金の残高を長期間にわたって維持することを検討する見通しだ。米量的緩和第3弾(QE3)同様に事実上の無期限(オープンエンド)緩和に近付くことになる。また産経新聞は、景気浮揚を狙い金融緩和圧力を強めている政府が日銀に対し、国債などの資産買い入れ基金を20兆円増額する追加金融緩和策を求めていることが22日、分かったと報じた。

実際に導入されれば踏み込んだ金融緩和策になるものの、市場では財政政策とのアンバランスを指摘する声が多い。「野田佳彦首相が指示した経済対策の第1弾の規模は3000億円程度とみられている。20兆円と3000億円。政治が空転する中で金融緩和にしわ寄せがきているためだが、あまりにもバランスが悪い」(外資系証券)。日銀が際限のない金融緩和に追い込まれるリスクにも警戒が必要だ。

JPモルガン・アセット・マネジメントのエコノミスト、榊原可人氏は、金融緩和に消極的な日銀という市場の印象を払しょくするためにも金融緩和は必要だとしたうえで、「金融緩和だけではデフレ脱却は難しい。現在の経済環境下では、ほとんどの人は金融緩和だけではオカネを使おうとは思わないためだ。有効需要を生み出す財政出動が欠かせない」と指摘する。

<素直に喜べない円安要因>

現在の円安についても、一概には喜べない。円安の一因は貿易赤字によって実需の外貨売り・円買いが減少してきたためだ。2012年度上半期の貿易収支は3兆2190億円の赤字と半期ベースでは過去最大の赤字となった。赤字傾向は定着しつつあり、直近の9月貿易収支は5586億円の赤字で9月としては1979年の統計開始以来、過去最大を記録した。

貿易赤字の主因は輸出の不振だ。9月の輸出は前年比10.3%減の5兆3598億円と、2011年5月(同11.3%減)以来、17カ月ぶりの大幅な減少となった。海外経済の減速を反映した輸出の大幅減や、尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる日中対立の影響で対中自動車輸出が大きく落ち込んだことなどが影響したためだ。円安がこのまま進めば、輸出の後押し期待も強まるが、足元の円安は企業の想定為替レートをわずかに超える程度であり、需要増の期待にはまだつながっていない。

楽天経済研究所シニア・マーケットアナリスト土信田雅之氏は「輸出減少による貿易赤字が円安の一要因であり、素直に喜べない。少なくとも国内企業決算発表を経て業績回復基調が示されないと上値は追いにくいだろう」と述べる。

<見方分かれるドル円見通し>

ドル/円の見通しは市場関係者の間で分かれている。バークレイズ銀行チーフFXストラテジストの山本雅文氏は、米景気回復やテールリスク後退、日銀緩和期待、対外直接投資増加など、ドル/円には「パーフェクト・ストーム」が吹いていると指摘。年末のドル/円相場は83円と予想する。

一方、米国にも「財政の崖」という問題があり、米連邦準備理事会(FRB)の追加緩和期待も消えたわけではない。みずほ証券FXストラテジストの鈴木健吾氏は「80.50円から81円の雲の上限の間はテクニカル的にもフロー的にも重くなってくるとみており、目先は80円後半、81円を上抜けるほどの力強さはないのではないか。年末には『財政の崖』の話もあり、日米金利差の観点からも、上値はあと1円程度だろう」と話す。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 久保信博)

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