September 9, 2014 / 5:22 AM / 6 years ago

焦点:南シナ海の「力関係」に変化か、べトナムは潜水艦で中国を抑止

[香港 8日 ロイター] - 領有権問題で緊張が続く南シナ海。ベトナムは近く、ロシア製の最新鋭潜水艦を複数配備することで、海洋進出を強める中国に対して確かな抑止力を手にする。専門家らは、それによって中国の海洋戦略は再考を余儀なくされる可能性があると指摘する。

 9月8日、ベトナムは近く、ロシア製の最新鋭潜水艦を複数配備することで、海洋進出を強める中国に対して確かな抑止力を手にする。写真はベトナム海軍兵。南沙諸島で昨年1月撮影(2014年 ロイター)

ベトナムは2009年にロシアと交わした26億ドル(約2760億円)規模の防衛協定の下、潜水艦6隻を購入することで合意。すでにロシア製の最新鋭艦2隻を保有しており、3隻目は11月に引き渡しとなる。残り3隻も向こう2年以内に調達が完了する予定となっている。

ベトナムと中国はともに共産党の一党独裁体制であり、両国間の年間貿易額は500億ドル(約5兆3120億円)に達する。一方で、ベトナムは中国に対し、特に南シナ海での領有権問題でこれまで長く警戒感を募らせてきた。

今年に入ってからは、中国がベトナム沖に石油掘削装置(リグ)を設置したことで両国の対立が激化。ベトナムは同海域に巡視船を派遣したが、規模で勝る中国船を相手に劣勢に立たされるのが常態化していた。

専門家らによれば、ベトナムは潜水艦の配備が完了すれば、同国沖や南シナ海の南沙諸島(英語名:スプラトリー諸島)周辺海域で、いわゆる領域拒否作戦を展開するとみられる。そうなれば、潜水艦70隻を保有するなどベトナムを圧倒する海軍力を誇る中国とはいえ、南沙諸島や油田の領有権をめぐる軍事衝突を想定した算段は難しいものになるという。

ラジャラトナム国際研究院(シンガポール)のコリン・コー氏は「海洋での領域拒否は、自分たちより強力な敵海軍に対し、潜水艦の位置を悟らせないことで心理的抑止力をつくり出すことを意味する」と指摘。「弱者が強者を相手に使ってきた典型的な非対称作戦で、ベトナムも非常に良く理解している分野だろう。問題は、それを水中でも遂行できるかだ」と語った。

<着々と進む準備>

ベトナムは、過去最大規模の兵器調達となった潜水艦の配備に向けた準備を着実に進めている。

複数の外交筋によると、ベトナム戦争時代に米国の大規模軍事拠点が置かれていたカムラン湾では最近、潜水艦2隻が定期的に訓練航行しているのが目撃されている。

また、3隻目の潜水艦についてはロシアのインターファクス通信が先月、今年11月に予定されるカムラン湾での引き渡しに先立ち、ベトナムの乗組員がサンクトペテルブルク沖で訓練を受けていると報じていた。

4隻目は試運転段階にあり、残る2隻は建造が進んでいる。

地域の大使館付き武官や専門家らは、ベトナムの乗組員が最新型潜水艦をどれほど早く使いこなせるようになるか推し量ろうとしているが、一部では、南シナ海の沖合深くに送り込まれるまでそう時間はかからないとみている。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のシーモン・ウェゼマン氏は「ベトナムが全体のシナリオを変えた」と指摘。「すでに潜水艦2隻を保有し、乗組員もいる。これから彼らの能力と経験は伸びていく」とし、中国側から見たベトナムの抑止力はすでにかなり現実的な形だとの見方を示した。

最新のキロ型潜水艦は射程の短い魚雷を積んでいるだけでなく、洋上を低空で300キロ飛行する対艦ミサイルを発射することもできる。SIPRIは、ベトナムが今年に入り、ロシアとの防衛協定の一部である対艦ミサイル50発のうち、少なくとも10発を購入したと推測している。

香港の嶺南大学で本土の安全保障問題を専門とする張泊匯氏は、中国政府の国防当局者は、ベトナムの潜水艦を警戒していると指摘。「理論的レベルでは、ベトナムは潜水艦を戦闘に使える段階にある」と語った。

ロイターは中国の国防省と外務省にもコメントを求めたが、回答は得られていない。

<ロシアとインドで訓練>

一方、複数のベトナム軍高官はロイターに対し、潜水艦の海上訓練と海軍への統合は順調に進んでいるとし、ここまでの進展に満足していると語った。

同高官らは2隻の潜水艦が完全就役状態にあるかどうかは確認しなかったが、使用が「防衛目的」であることを強調。1人は匿名を条件に「潜水艦はわれわれの唯一の兵器ではなく、わが国の主権保護強化のために進めている兵器開発の一部だ」と説明した。

グエン・チー・ビン国防次官も、同様の考えを公式見解として繰り返し表明している。同次官は、中国を名指しすることは避けつつ、ベトナムは南シナ海で紛争を仕掛ける意図はないが、もしどこかが始めれば「後ろに下がって傍観することはない」と語っている。

伝統的に陸軍が強いベトナム軍だが、ここ数年は主にロシアから最新のフリゲート艦やコルベット艦を導入するなど、海軍力を大幅に強化してきた。ロシアが設計した艦船の建造プログラムにも着手している。

欧米の元潜水艦乗組員らは、ベトナムの潜水艦配備はゼロからのスタートであり、難しい問題が多いにもかかわらず、目に見える進歩を遂げていることに称賛の声を上げている。

対照的に、ベトナムと同様に南シナ海の領有権問題で中国と対立を続けるフィリピンは、潜水艦を保有していない。

ベトナムは今年1月にロシアから最初の潜水艦が引き渡される前にも、乗組員の訓練をロシアで行っていた。

1980年代半ばからキロ型潜水艦を運用しているインドも、ベンガル湾に面するアンドラプラデシュ州の潜水艦訓練センターで、ベトナム人乗組員の訓練を受け入れているという。

ディーゼル・エレクトリック方式で動くキロ型潜水艦は、最も静粛性に優れた潜水艦の1つとされ、1980年代から改良が重ねられてきた。

モスクワ在住の戦略アナリスト、バシリー・カシン氏は、ベトナム海軍の潜水艦について、中国海軍が保有するキロ型潜水艦12隻よりも技術的に進んでいるとみている。中国に同型潜水艦が最後に引き渡されたのは10年前だ。

一般公開されている衛星画像からは、カムラン湾内に潜水艦用埠頭と乾ドックがあるのも確認できる。ロシアの複数メディアによれば、その近くには乗組員向けの医療施設も完成しているという。

(原文執筆:Greg Torode、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)

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