[東京 22日 ロイター] - 日本株の上値が重くなっている。年内の重要イベントを通過したことで、トランプ相場による株高への陶酔感が後退。世界的に休暇モードで市場参加者も減少している。だが、インフレ期待を背景とする債券から株式への資金シフトは道半ばであり、市場の先高期待は根強い。バブル生成の兆しを警戒する見方は今のところ少数派だ。
<リスクオフイベントに冷静な市場>
21日の欧州市場でイタリア銀行大手モンテ・パスキBMPS.MIの救済を巡る懸念から、同行の株価が1999年の上場以来の最安値を更新。スペインでは欧州司法裁判所がスペインの複数の銀行に対し、過剰住宅ローン金利の払い戻しを命じたと報じられるなどリスクオフを意識させる出来事が起きたにもかかわらず、国内外の投資家は冷静だ。
最近海外で相次いだテロにも反応せず、米株式投資家の不安心理の度合いを示すボラティリティ・インデックス(VIX).VIXは年初来の最低水準で推移している。背景にはグレートローテーションと呼ばれる債券から株式への資金シフトが簡単には終わらないとの安心感がある。トランプ次期米大統領の政策期待だけでなく、11月の中国生産者物価(PPI)が2011年10月以来の高い伸びとなり、「世界の工場とも言える中国がデフレから脱却してきたことを再評価する動きになっている」(三井住友アセットマネジメントチーフストラテジストの石山仁氏)という。東京株式市場でも銀行、証券、非鉄、商社、小売などのインフレに強いセクターが買われてきた。
<4度目のバフェット指数1倍超え>
株価は楽観的な見通しを織り込んだことで、すでにバブルの領域との見方も出ている。著名投資家のウォーレン・バフェット氏はその国の株式市場の時価総額が名目GDPを超えると危険サインととらえ、持ち高調整を検討することで知られている。名目GDPに対する株式市場の時価総額の倍率をバフェット指数と呼ぶが、日本の2015年度名目GDP532兆円に対し、22日時点で東証上場の株式時価総額は580兆円強。バフェット指数は約1.1倍になっている。
日本で同指数が1倍を超えたのは、1980年代後半のバブル期、2007年リーマンショック前の米住宅バブル、2015年8月前後のアベノミクス期待のピークに続き、トランプラリーの今回は4度目になる。変動の大きい期間利益をもとに算出されるPERと異なり、同指数は比較的ブレが少なく行き過ぎた株高を警告するサインとみられているが、今のところ市場で懸念する見方は少ない。「米国は業績相場に向かっているが、日本は金融緩和継続プラス業績相場の方向性であり、環境だけ見ればバブルへの期待が膨らむのも不思議ではない」(日本アジア証券エクイティ・ストラテジストの清水三津雄氏)との声も出ている。
<米新政権の政策待ちでもたつく場面も>
バブルは予測不能な面もあり、市場のコンセンサス通りなら短期の調整を交えて、少なくとも米新大統領就任後の蜜月期間が終わる来年5月頃まで株高が続くことになる。「レーガノミクスのように大きなレジームチェンジが起きると景気拡大は長くなる」(みずほ証券投資情報部長の倉持靖彦氏)との指摘もある。日経平均2万円は通過点に過ぎず、中期的な株高基調が持続することも否定できないが、目先はマーケットの期待形成に働きかけるイベントもない。三井住友アセットの石山氏は「トランプ氏の政策には根本的に潜在成長率を引き上げるものがない。実際に政策の内容が判明するまで株価がもたつく場面もありそう」と指摘している。
河口浩一 編集:石田仁志
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