May 1, 2018 / 3:18 AM / 4 months ago

コラム:トランプ氏のイラン核合意批判、北朝鮮交渉の妨げに

[25日 ロイター] - トランプ米大統領は歴史修正主義の報いが自身に跳ね返ってくることを遠からず思い知るのではないだろうか。特に、北朝鮮問題において彼自身による総決算が近づいているだけに、なおさらだ。

 4月25日、トランプ米大統領(写真)は間違っている。核合意の効果についても間違っているし、イランと世界の主要国との合意が核問題に限定されている理由についても分かっていない。ホワイトハウスで30日撮影(2018年 ロイター/Kevin Lamarque)

フランスのマクロン大統領を24日、ホワイトハウスに迎えたトランプ大統領は、再び、イラン核合意は「常軌を逸し」ており、「ばかげている」との中傷を繰り返し、ケリー元国務長官が中東地域におけるイランの問題行動に対処しようとしなかったのは、それが「手に負えなかった」からだと批判した。

トランプ氏は間違っている。核合意の効果についても間違っているし、イランと世界の主要国との合意が核問題に限定されている理由についても分かっていない。

筆者はケリー元国務長官の下で首席補佐官を務めてきた。ケリー氏はまだ上院議員の頃に、オマーン系の秘密ルートを介してイランの核問題に取り組むようになった。その取組みは数年後、自身が交渉のリード役を務めるなかで、2015年のイラン政府との合意という形で実を結ぶことになる。

苛酷な制裁が何年も続いたにもかかわらず、ケリー氏が国務長官に就任する頃には、イランは10発の核爆弾が製造可能なレベルの核燃料サイクルに到達するまで、残りわずかの段階まで迫っていた。

米国にとって、軍事的なオプションは不完全で一時的なものでしかなかった。イランを攻撃しても、核開発計画がこれまで以上に秘密裡に行われ、宗教国家であるイランにおける強硬派の立場が強まるだけだとわれわれは考えていた。制裁によってイランが交渉の場に出てくることはあっても、それで膝を屈することはないと分かっていた。

2015年の核合意は、軍事力だけでは決して達成できなかった成果をあげている。イラン政府は保有するウランの97%を処分し、ァラーク原子炉の炉心を撤去・解体した。兵器グレードのプルトニウム生産を中止し、遠心分離機1万3000台以上を撤去した。

フォルドウ地下施設でのウラン濃縮作業はすべて中止されており、最も厳格な査察も実施できた。イラン政府は合意を順守しており、イラン国内では数多くの査察官が活動している。違反があれば分かるだろう。合意によって、イラン現体制は、過去10年のどの時期と比べても核爆弾から遠ざかっている。核不拡散に関するすべての合意が、同程度に「常軌を逸して」いれば良いのだが。

合意が核兵器のみに焦点を絞り、イランのその他の活動を対象としていない理由についても、トランプ大統領は完全に間違っている。

重大かつ簡潔な理由によって、交渉は核不拡散に限定されたのだ。イランの核開発による脅威に限定したからこそ、中国・ロシアを巻き込む多数の国による困難な制裁が発動されたのだ。米国が批判する核開発以外のイランの活動、たとえばシリアにおけるアサド政権支援などについては、中ロ両国は問題視していない。

35年にわたって互いに不信感を抱き続けてきたイランと米国両政府のあいだでは、核以外の問題について誠意ある交渉はあり得なかった。包括的で細部にわたる核合意に至るだけでも、何年にもわたる交渉を要したのである。

 4月25日、トランプ米大統領(写真)は間違っている。核合意の効果についても間違っているし、イランと世界の主要国との合意が核問題に限定されている理由についても分かっていない。ホワイトハウスで30日撮影(2018年 ロイター/Kevin Lamarque)

ヒズボラやシリアといった問題を重ねてしまえば、イラン政府に圧力をかける連携が崩れるか、時間切れとなって戦争以外のオプションがなくなってしまうことを、当時のオバマ政権、そして同盟国である欧州諸国はまったく疑わなかった。

核問題は、交渉における取引材料として使うにはあまりにも重大な問題だったのだ。交渉範囲を限定したのはオバマ政権の野心ではなく現実の状況であり、核不拡散に関して厳しい要求を貫こうという世界の決意だったのである。

イラン核合意は、トランプ現政権にとっても、さらなる関与に向けた手本となり、出発点となっていたはずだ。だが、トランプ大統領の見当外れの声明は、むしろマクロン仏大統領からメルケル独首相に至るまで、同盟国と米国との溝を広げてしまった。

何よりも浅はかなことに、トランプ氏自身の言葉を手掛りにする限り、彼が朝鮮半島に関しても、またもや高リスク外交を用意していると見られたがっていると疑わざるを得ないのだ。

なぜそう思えるのか。北朝鮮政府と直接の交渉が不在のまま約20年間が過ぎた今、同国体制が国民に強いている飢餓状態、国家的なテロ支援、人権の軽視など、すべての問題に対して、交渉担当者が同時に取り組むことができないのは現政権にも分かっているだろう。核問題だけが当面のテーマであり、その点に絞ってトランプ氏は評価を求めるべきなのである。

イラン核合意の交渉は難航し、合意文書は159ページに及んだ。国連安全保障理事会の承認を取りつけ、国際原子力機関(IAEA)の追加議定書の履行が含まれ、核施設へのIAEAによる立ち入りの権利が拡大されている。

これを「ばかげている」とトランプ大統領が考えるのであれば、朝鮮半島に関して、彼はどのような成功を思い描いているのだろうか。そこでは、独裁者が過去の合意をないがしろにする体制を率い、IAEAに協力せず、核開発計画はイランよりもはるかに進んでいるのだ。

トランプ大統領は、彼がオバマ前政権を評価するときに使うような空想上の基準ではなく、現実的な基準によって同盟国や専門家から評価されることを願うべきだろう。

北朝鮮との首脳会談が視野に入ってきた今、大統領はイランに関する修正主義を捨てるべきだ。トランプ氏は現行協定を嘲笑しているが、それと同じ程度に優れた協定を自身が実現できる公算は小さいのだから。

*デービッド・ウェイド氏は2013年から2015年まで米国務省首席補佐官を務めた後、コンサルティング会社グリーンライト・ストラテジーズを設立。またディプロマシー・ワークスの顧問を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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 4月25日、トランプ米大統領は間違っている。核合意の効果についても間違っているし、イランと世界の主要国との合意が核問題に限定されている理由についても分かっていない。写真はウィーンで2015年、イラン核合意を話し合う各国代表団。代表撮影(2018年 ロイター)

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