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焦点:コロナ禍で迎える終戦記念日、歴史問題解決の道筋見えず

[東京 12日 ロイター] - 1945年8月15日、昭和天皇は4分半ほどのラジオ放送(玉音放送)で、第2次世界大戦の太平洋戦争における日本の降伏を発表。「耐え難きを耐え」、太平に道を開くことを決意したことを臣民に伝えた。

8月12日、1945年8月15日、昭和天皇は4分半ほどのラジオ放送(玉音放送)で、第2次世界大戦の太平洋戦争における日本の降伏を発表。写真は2019年8月15日、靖国神社でハトを放つ人々(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

75年後の今も、日本と中国および韓国との関係には太平洋戦争が残した未解決の遺産がつきまとう。今年は各国が新型コロナウイルス禍に対処する中、日本は15日の全国戦没者追悼式の規模縮小を迫られているが、状況は変わらない。

日本では、戦争の遺産を巡る国民のコンセンサスがまとまらない。

安倍晋三首相は歴代政権に比べて謝罪姿勢を後退させてきた。保守派が敗戦の屈辱的象徴と見なす平和憲法の改正も望んでいる。憲法は長年、過去の過ちを繰り返さないための防波堤と見なされてきており、国民の過半数は憲法改正に反対している。

米スタンフォード大学で東アジア研究の講師を務めるダニエル・スナイダー氏は「戦争の遺産、つまり歴史の審判と歴史解釈という未解決の問題は、今も根深く残っている」と語る。

「時がすべての傷を癒やしてくれるだろうか。じきに太平洋戦争経験者は一人もいなくなる。問題は消え去るだろうか」とスナイダー氏は問う。「いや、消えない。なぜなら戦争の遺産は、これらの国々すべてのアイデンティティー形成にすっかり組み込まれているからだ」

韓国は8月15日を「光復節(解放記念日)」と定めており、多くの国民は1910年から45年の日本の植民地支配に今でも憤りを抱いている。中国には、31年から45年にかけての日本の侵攻と占領という苦い記憶がある。中国は、日本が降伏文書に署名した翌日の9月3日を「対日戦勝記念日」として祝う。

<長い影>

コロナ禍に注目が集まっていることもあり、日本の戦争責任を巡る論議は終戦70年の時に比べると静かだ。当時、安倍首相は物議をかもす談話を発表した。首相は談話で「痛惜の念」を示しつつも、将来世代は過去の過ちについて謝罪を続ける宿命を背負うべきではないとし、改めて謝罪することは避けた。

米コロンビア大学のジェラルド・カーティス名誉教授は「軍事衝突に引きずり込まれることへの懸念は日本の世論に強く影響し続けている。(中略)一方で日本の保守派政治指導者らには、戦時中の日本の行為について弁護的な姿勢があり、それゆえ日本が心から後悔していると近隣諸国に納得させるような言動を控えている」と解説。「日本が第2次大戦の影から抜け出すにはたぶん100年かかるだろう」と述べた。

戦時中の元徴用工および慰安婦を巡る日本と韓国政府との論争は今なお、両国間の火種だ。

日本製鉄(旧新日鉄住金)が2018年の韓国最高裁による徴用工への賠償支払い判決に応じなかったため、原告側が差し押さえた同社資産について、韓国の裁判所は先週、売却に向けた手続きを進めた。

日本政府は徴用工問題について、1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場であり、資産売却に向けた動きに対しては報復措置をちらつかせるなどしている。この問題を巡る日韓の反目は昨年、通商と安全保障の問題にまで発展した。

元韓国大統領秘書官のシャン・ホジン氏は「日韓関係は今すぐではなくとも、再び危機に直面するだろう」と語る。

慰安婦問題について日本政府は、安倍首相による「おわびの気持ち」が表明され、韓国の財団に元慰安婦への資金が拠出された2015年の日韓合意によって解決済みと見なしている。しかし韓国の文在寅(ムンジェイン)政権は、この合意には欠陥があると宣言した。

<日中関係>

日中関係は習近平・国家主席の訪日計画を控えて改善していたが、新型コロナの感染拡大で訪日は延期された。

中国政府が香港への統制を強化し、東シナ海で領有権を一方的に主張していることに鑑み、日本の与党の一部には訪日を中止すべきだとの意見もある。一部日本メディアが報じている通り、中国側が今月、尖閣諸島周辺海域を含む東シナ海での休漁期間を終え、尖閣周辺に中国漁船が押し寄せれば、同諸島を巡る論争が過熱しかねない。

中国は今、人権・貿易・安全保障問題を巡る米国との対立の渦中にあり、日本との歴史的な対立を棚上げしている。

「歴史問題を取り上げると日中関係に良くないことを彼ら(中国)は知っている。彼らにとって本当の問題は安全保障だ」。東京大学の高原明生教授(中国政治・国際関係学)はこう語り、「安全保障は日中関係の発展を阻むものであり、関係の発展には限界がある」と付け加えた。

日本政府は中国を巡る懸念を米国と共有しているが、日中経済は深く絡み合っている。

城西国際大学のアンドリュー・ホルバート招聘教授は「歴史問題は未解決だが、今は保留中だ」と述べた。

安倍首相は2013年以来、靖国神社の参拝は見送っている。しかし反目が再燃するリスクはくすぶり続ける。

中国人民大学の日本専門家、フアン・ダフイ氏は「何十年もの時が過ぎたが、戦争でわれわれが負った傷は完全には癒えていない」と語った。

(記者Linda Sieg)

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