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コラム:情報リーク追及は地獄への道、ウォーターゲート再来も
2017年3月4日 / 00:28 / 8ヶ月前

コラム:情報リーク追及は地獄への道、ウォーターゲート再来も

[28日 ロイター] - 米国のトランプ政権は、飛躍的なペースで歴史に残る成果をあげようとしている。しかし残念ながら、そのなかには合衆国の憲法と法律の精神や文言に反するものが含まれている。

 2月28日、米国のトランプ政権は、飛躍的なペースで歴史に残る成果をあげようとしている。しかし残念ながら、そのなかには合衆国の憲法と法律の精神や文言に反するものが含まれている。写真はトランプ大統領。ホワイトハウスで1月撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

トランプ大統領は25日、ツイッターに次のように投稿した。「FBIは、長年政府に浸透している国家安全保障に関わる『情報漏えい者』を、まったく阻止できていない。FBI内部の漏えい者でさえ見つけられていない。今すぐ発見を(FIND NOW)」。トランプ大統領が大文字ばかり使うときは注意した方がいい。

見識ある市民なら、ロシアによるサイバー攻撃と2016年大統領選におけるトランプ陣営の選挙運動との関わりについて、FBIが防諜捜査を進めていることを知っている。この件を巡る米国の代表的な報道機関による一流の報道に接しているからだ。

大統領が疑っているのは、こんな情景だろう──。コロンビア特別区の薄暗い駐車場のどこかで、中折れ帽を被り人目を気にしながら速記でメモをとる記者たちに対して、FBI関係者が情報を漏らしている。もしくは最新の暗号化機能付きアプリを使っているのかもしれないが、これについては後述しよう。

トランプ大統領はこの疑惑が消えることを願っている。それを誰が責められるだろうか。このツイッター砲の最高責任者は、それを「まったくの政治的な魔女狩り」と呼ぶ。だが、トランプタワーの金ぴかの部屋と、シャンデリアで飾られたクレムリン宮殿のスイートルームを結ぶ証拠の痕跡があれば、米連邦捜査局(FBI)はそれを追うだろう。

どうやら大統領が目指しているのは、FBIを威圧し、ホワイトハウスの職員を怯えさせ、議会を黙らせ、情報漏えいを食い止め、メディアを阻止することのようだ。トランプ大統領は、記者たちを「人民の敵」と攻撃し続けている。この簡潔なフレーズが最後に流行ったのは、100年前、レーニンがロシア革命を推進していた頃だ。

プリーバス首席補佐官は先日、コミーFBI長官と会談した。それはプーチン大統領配下のスパイとトランプ陣営の選挙運動に関する報告、そしてこの件について大統領が激怒している、という内容だった。

コミー長官は、石のように沈黙を守るという正しい対応を見せた。もちろん、彼はプリーバス首席補佐官が「きわめて軽率」だったなどとは言わなかった。考えてみれば、そう言うこともできただろうが。

大統領を脅かすようなFBI捜査を、大統領首席補佐官が妨害しようとした最新の例は、1972年6月、ウォーターゲート事件の発覚から数日後のことだ。当時のハルデマン首席補佐官はニクソン大統領の命を受けて行動したが、それはオープンリール式のテープで録音されていた。このテープが、捜査妨害の決定的な証拠とされ、ハルデマン首席補佐官は有罪判決を受け、ニクソン大統領は辞任した。

筆者は特別検察官ではなく、プリーバス首席補佐官の行為が、21世紀に入って最も深刻な対外諜報事件についてコミー長官と連邦議会に圧力をかける司法妨害だとは断言できない。(司法妨害に関する連邦法は、連邦レベルにおける捜査について「影響を与え、妨害し、又は介入しようとする試み」を対象としている)。

ただ、大統領がFBIにケンカを売り、中央情報局(CIA)をナチス呼ばわりする状況は、ある意味で、犯罪よりも性質が悪い。これは大変な失態だ。今のホワイトハウスが、こうした失敗を続けることは許されない。メディアとの戦いをエスカレートさせるのも、愚かな考えだ。

「メディアは民主主義にとって必要不可欠だと考えている」。NBCの番組「トゥディ」に20日出演したジョージ・W・ブッシュ元大統領はそう語った。「権力には中毒性があり、腐敗しやすい。メディアが権力を乱用する者を批判することは重要だ」。知っている。筆者も2度、読み返さなければならなかったからだ。

ホワイトハウスはさまざまな機会を捉えて、メディアを、そして政権内の情報提供者を攻撃している。先週、スパイサー大統領報道官は、部下の職員たちに対し、彼らの通話が監視されていると通告した。彼は特に、「Signal」や「Confide」といった暗号化通信アプリを使わないよう警告。トランプ大統領は、今や法執行機関のトップとも、にらみ合っている。

 2月28日、米国のトランプ政権は、飛躍的なペースで歴史に残る成果をあげようとしている。しかし残念ながら、そのなかには合衆国の憲法と法律の精神や文言に反するものが含まれている。写真はトランプ大統領。ワシントンで2日撮影(2017年 ロイター/Carlos Barria)

ホワイトハウスが最も避けたいのは、情報漏えい源を必死になって追及することだろう。特に、大統領による権力乱用を示唆するわずかな証拠でもある場合にはなおさらだ。そうした追及は、米国政界では地獄につながる道なのだ。そして私たちは過去にもその道を通ったことがある。

当時のニクソン大統領は就任から55日後、B52爆撃機の大編隊をカンボジアに派遣し始めた。米国はカンボジアとは戦争状態になく、この攻撃は機密とされた。だが、その情報はやがて漏えいした。

1969年4月25日、ニクソン大統領は国家安全保障問題担当のキッシンジャー補佐官を執務室に呼び、情報漏えい対策を担当するよう命じた。キッシンジャー補佐官は命令に従い、J・エドガー・フーバーFBI長官の助けを借りて、自分の部下である国家安全保障会議(NSC)スタッフたちの電話の盗聴を開始した。

盗聴の対象は広がり、NSC、国防総省、国務省の連邦政府職員ら13人、新聞記者4人が含まれるようになった。彼らは外国のスパイではなく、米国市民だった。

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ホワイトハウスは盗聴内容の書き起こし記録を受け取ったが、何の役にも立たなかった。後にニクソン氏は「噂話やくだらないものばかりだった」と述べている。

当時、国家安全保障局(NSA)も独自の監視リストを作成していたが、その対象は2人の上院議員を含むまでに拡大していた。1人はフランク・チャーチ上院議員で、インドシナ半島における戦争に反対する最初の超党派法案を推進していた。もう1人はハワード・ベイカー上院議員で、1973年のウォーターゲート事件をめぐる公聴会で「大統領は何を知っていたのか、そしていつそれを知ったのか」と質問したことで知られている。

これらはすべて(ウォーターゲート事件で、情報リークを防ごうとしたため「配管工」と称されたコソ泥チームを含め)、言論や報道の自由を定めた合衆国憲法修正第1条に対して大統領が仕掛けた戦いの一環だった。当時は、「ペンは剣より強し」が実証された。今日ではどうだろうか。近いうちに分かるだろう。

トランプ大統領は、多くの自由な助言を受け付けていない。しかしこの問題に関しては忠告を受け入れるべきだろう。彼は、大統領職の権限を振りかざして、記者たちと行政府や立法府内の情報提供者のあいだに割り込むべきではない。情報漏えいをめぐって、FBI、連邦議会、報道機関に対して戦いを挑むことはできない。

これら3つの勢力はたえず対立している。だが、自由なメディアが連邦捜査官と協調して働くことは可能だ。彼らが一致してホワイトハウスに対抗すれば、決定的な量の共有情報が集められるだろう。

その情報はいつか、明白な証拠の痕跡を追及する召喚状という形を取るかもしれない。FBI捜査官が、その召喚状をホワイトハウスに突きつける可能性もある。1973年に起きたことだ。再び起きないとは言い切れない。

*筆者はピュリツァー賞を受賞した著述家。著書に “Legacy of Ashes: The History of the CIA”(「CIA秘録─その誕生から今日まで」)など。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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