December 15, 2018 / 4:36 AM / 3 months ago

コラム:狭まる「トランプ包囲網」、訴追の可能性は

[10日 ロイター] - 米国大統領は在任中に刑事責任を問われることはない。だが、トランプ大統領については、退任して民間人になった時点で起訴される可能性が浮上してきた。

 12月10日、米国大統領は在任中に刑事責任を問われることはない。だが、トランプ大統領(写真)については、退任して民間人になった時点で起訴される可能性が浮上してきた。フィラデルフィアで8日撮影。提供写真(2018年 ロイター Danny Wild-USA TODAY Sports)

ニューヨーク州の連邦検察官は7日、2016年の大統領選を有利に進めることを意図した口止め料の支払いが選挙資金法に違反していた、という重罪の容疑でトランプ大統領を告発した。

検察側は特に、トランプ氏の元個人弁護士で自称「黒幕」だったマイケル・コーエン被告が、トランプ氏と性的関係にあったと主張する2人の女性に口止め料を払った経緯についての詳細を明らかにして、この目的はトランプ氏を大統領選に勝たせるためであり、トランプ氏自身もこれを完全に了解していた、と主張している。

モラー特別検察官がすでに提示している文書によれば、トランプ氏が「選挙運動の開始からかなりたつ頃」、共和党の候補指名を得る直前に、モスクワで数億ドル規模に上る可能性のある不動産取引に関与していた、とコーエン被告が語ったという。

コーエン被告は、この件でトランプ氏と協議したことについて議会に偽証した容疑で有罪を宣告されている。

米国民は、今やコーエン被告が「個人1と調整しつつ、その指示を受けて(これらの違法な支払い)を行った」ことを知った。「個人1」とは米国大統領のことだ。またコーエン被告は、モスクワ不動産プロジェクトについて議会で虚偽の宣誓供述を行った時点で、ホワイトハウスや大統領の弁護士らと「緊密、かつ定期的な連絡」をとっていた。

モラー氏が率いる検察側は、モスクワ不動産プロジェクトは「ロシア政府からの支援を求め、かつそれを必要とする可能性の高い、利益の大きいビジネスチャンスだった」と記している。

その交渉は、「ロシア政府が米国大統領選挙に干渉しようと努力を続けていた時期に行われた」という。2016年6月、米民主党の全国委員会などのコンピューターネットワークに対するロシアのハッキング行為が初めて明らかになった数時間後、モスクワ不動産プロジェクトを巡る協議は中止された。

米連邦捜査局(FBI)はこの年の夏、ロシアによる選挙介入疑惑の捜査を開始した。秋に入ると捜査担当者は、ロシア攻撃に対して米国民の支援や扇動があったかどうかを注目し始めた。

そして今、私たちは、諜報戦の悪夢に直面している。お気に入りの候補者を米国大統領の座に就けようと動いたロシアの画策、そしてその副産物として当該人物が、アメリカの民主主義を傷つけ、北大西洋の同盟を攻撃しているのだ。

就任18カ月のモラー特別検察官による捜査は、トランプ大統領の就任時にまで及んでいる。モラー氏を中心とする検察当局は、トランプ氏を大統領の座に押し上げたのは、政治面だけでなく犯罪に当たる「嘘」の力だ、という明白で説得力のある論拠を構築した。

いずれ民間人に戻るトランプ氏は、いつの日か、こうした論拠や大統領による司法妨害についてモラー特別検察官が現在も継続している捜査によって、国を欺いた広汎な共謀容疑で訴追される危険がある。この法令は、はるか昔の連邦最高裁による判断によれば、「政府省庁の合法的機能をき損、妨害又は無効化することを目的とした、あらゆる共謀」を対象としている。つまり、選挙関連法や税法に対する違反、そしてあらゆる形の詐欺が対象となるのだ。

モラー特別検察官とその指揮下にあるFBI捜査官らの仕事は、この先何カ月も続くだろう。彼らはいずれ、「米国対ドナルド・J・トランプ」と銘打った、封印された起訴状を埋めるに足る事実を集めているのではないだろうか。

その起訴状は、トランプ氏が大統領の職を離れたとき、連邦裁判官によって封印を解かれる可能性がある。トランプ大統領はモラー特別検察官を妨害しようと試みるかもしれない。だが、以前も書いたように、FBI自体をクビにすることはできない。

モラー特別検察官はすでに、コーエン被告やトランプ陣営の選対本部長を務めたポール・マナフォート被告、そしてトランプ政権の大統領補佐官(国家安全保障担当)だったマイケル・フリン被告が、ロシア当局者やロシア情報機関の関係者と接触していたことについて、FBIと連邦議会に虚偽の供述をしたことを立証している。

もし、彼らがトランプ大統領の指示で虚偽の供述をしたのであれば、そのこともモラー氏の目を逃れられないだろう。

こうした嘘や、モラー特別検察官の捜査線上にある、さらに多くの嘘には、1つの共通点がある。そのいずれにも、ロシアのプーチン大統領とそのスパイ組織の影が見え隠れすることだ。

2016年、ロシアはトランプ氏の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏と娘婿ジャレド・クシュナー上級顧問に接近し、それぞれに「魅力的な餌」を提示したと見られている。トランプ・ジュニア氏には違法に入手した対立陣営の不祥事、クシュナー氏にはロシア政府との情報機関を通じたこれまた違法な連絡ルートだ。

これらは、獲物が食いつくかどうかを試すための情報機関の古典的な手法だ。そして、彼らは食いついた。彼らはFBIに電話で通報しただろうか。いや、していない。

その後、彼らはこの接触について連邦議会に虚偽の説明を行った容疑で偽証罪に問われている。つまり、大統領の家族が司法の手にかかる可能性がある、ということになる。

トランプ大統領はすべて否定している。新たな告発が明らかになったとき、彼は「大統領は完全に無罪放免だ、ありがとう!」とツイートした。国家指導者から、またもや虚偽の声明だ。ワシントンポスト紙のファクトチェック(事実確認)チームによれば、トランプ氏は大統領就任後6400回以上も国民を欺いており、モラー特別検察官、FBI、司法省をたえず激しく攻撃している。

こうした攻撃が示すように、米国における法の支配にとって、大統領は「今そこにある危機」だ。

ここで問われているのは、連邦議会、裁判所、刑事司法制度といった米国制度にトランプ大統領を制止する力があるのか、またその場合、米国の政治や司法制度に対する攻撃を理由に彼を告訴することができるのか、という点だ。

1月に入れば、新たに選ばれた下院の民主党議員は、歴代大統領が誰も体験しなかったような厳しさで、トランプ大統領の調査に取りかかるべきだろう。

大統領弾劾という問題については、ひとまず棚上げする方が得策という結論になるかもしれない。圧倒的な事実によって少なくとも20人の共和党上院議員が造反して民主党の上院議員47人に加わらない限り、重大犯罪を理由とする大統領弾劾に必要な上院3分の2の議決を確保できないからだ。

1974年にはその1歩手前まで行った。当時のニクソン大統領は、ウォーターゲート事件の司法妨害における未起訴の共謀者として名指しされた。下院では弾劾の発議が行われた。上院における主なニクソン擁護派は、ギリギリになるまで態度を変えなかった。

「動かぬ証拠」の録音テープ公開によって、ようやく、米政界で最も強硬な保守派のバリー・ゴールドウォーター上院議員がホワイトハウスに足を運び、ニクソン大統領に対して、議会にはもう彼を支持する人間はいない、と告げた。辞任するしかない、と。

当時のゴールドウォーター上院議員に相当する人物は、どこにいるのだろうか。

現在、トランプ大統領に抗う共和党議員が1人でも存在することを示す証拠は、どこにも見当たらない。彼らが沈黙を続けるならば、米国の法と制度に対する継続的な攻撃に加担していることになる。彼らも共謀者であると言うべきかもしれない。

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*筆者はピュリツァー賞を受賞した著述家。著書に「CIA秘録─その誕生から今日まで」(原題:Legacy of Ashes: The History of the CIA)など。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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