March 9, 2018 / 9:51 AM / 6 months ago

ブログ:ベネズエラ危機、記者が見た「涙の脱出行」

Carlos Garcia Rawlins

 3月2日、何十万ものベネズエラ人が昨年、南米各地に移住している。アレクサンドラ・ウルマー記者と私は、そのような人たちの少なくとも数人の実状を浮き彫りにしたかったので、約8000キロに及ぶチリへのバスの旅に同行することに決めた。首都カラカスからチリに向かうバスの中で昨年11月撮影(2018年 ロイター/Carlos Garcia Rawlins)

[カラカス 2日 ロイター] - バスターミナルはまるで葬儀場のようだった。家族が涙を流しながら抱き合い、別れを告げていた。

誰もが嘆き悲しみ、おびえていた。去る者は、先の見えない将来に直面していた。あとに残る者も、強盗や食料不足、そしてさらに不確かな将来に直面していたからだ。

何十万ものベネズエラ人が昨年、南米各地に移住している。アレクサンドラ・ウルマー記者と私は、そのような人たちの少なくとも数人の実状を浮き彫りにしたかったので、約8000キロに及ぶチリへのバスの旅に同行することに決めた。

カラカスで昨年11月撮影(2018年 ロイター/CARLOS GARCIA RAWLINS)

同胞のベネズエラ人とこの旅を共有することで、国民の多くが日々直面していることを世界に示す一助となることを期待していた。

わずかな所有物や希望を奪われたり、仕事や収入を失ったりして、友人や家族がベネズエラを去る──。この日常的な現実は、私にとっても身近なことだ。最も近しい人たちの助けになろうと私も努力している。さもなければ、食べることができない人もいるからだ。

バレンシアで昨年11月撮影(2018年 ロイター/CARLOS GARCIA RAWLINS)

乗客が安価な中国製の旅行かばんと共にバスに乗り込むと、重苦しい空気が漂った。だが同時に、そこには期待感もあった。この大きな第一歩を踏み出した彼らの力強さを観察しながら、私はただ静かに彼らの写真を撮った。

エクアドルのトゥルカンで昨年11月撮影(2018年 ロイター/CARLOS GARCIA RAWLINS)

自動車用バッテリーの営業をしていたエイドリアンさんは、祖父母や母親、きょうだいが暮らす家で、恋人と一緒に生活していた。皆働いてはいたものの、十分に稼ぐことができなかった。エイドリアンさんは母親を助け、恋人と将来を築きたかった。それには、ベネズエラを去るしか他に方法はないと思ったという。

エイドリアンさんにとって、家を離れることは非常につらいことだった。コロンビアを通過中、曽祖母が亡くなっていたことが分かると、彼の目に涙があふれた。だが、心がはちきれんばかりにつらくても、前に進まなくてはいけないと、エイドリアンさんは私に言った。家族にとって、エイドリアンさんは唯一の希望だった。

ペルーのトゥンベスで昨年11月撮影(2018年 ロイター/CARLOS GARCIA RAWLINS)

また、バスには元銀行管理者のアルバロさんも乗っていた。アルバロさんの最も大事な所持品は、サンタクロースと一緒に、彼と妻、そして2人の子どもたちと撮影した1枚の写真だ。

写真の裏には妻が書いたメッセージが記されている。アルバロさんを愛していること、家族は皆アルバロさんを恋しがっていること、世界で最も偉大な父親であること、またすぐに再会できることを願っていると書かれていた。

写真に写るアルバロさん一家は皆、幸せそうで健康に見えた。今ではその写真は、見捨てられた人のように、あるいは救命用具のように、アルバロさんがしがみつく思い出となっている。

ペルーのSUPE PUERTOで昨年11月撮影(2018年 ロイター/CARLOS GARCIA RAWLINS)

バスの中では皆が所持金を計算し、慎重に使っていた。バスターミナルでトイレを使用したり、温かい食事に硬貨数枚を使うのは本当に必要だろうかと検討していた。イワシの缶詰やツナ缶にマヨネーズ、数日に及ぶ移動中にビニール袋の中で砕けてしまった白パンなど、ベネズエラから持参した食べ物でしのいでいる人もいた。

ベネズエラのサン・アントニオ・デル・タチラで昨年11月撮影(2018年 ロイター/CARLOS GARCIA RAWLINS)

国境を通過するたびに、彼らの不安が感じ取れた。多くがベネズエラを離れるのは初めてだった。国境警備隊を恐れ、帰国を余儀なくされるような巧妙な質問を受けることを心配していた。

チリのアントファガスタで昨年11月撮影(2018年 ロイター/CARLOS GARCIA RAWLINS)

景色は常に変わるが、何日もたつと、繰り返される映画を見ているようだった。乗客は何時間もぼんやりと自分の座席に座り、窓の外を眺めていた。時間の感覚は完全に失われていた。

ペルーのウアルメイで昨年11月撮影(2018年 ロイター/CARLOS GARCIA RAWLINS)

実際のところ、そのような変わらない光景は私の仕事を視覚的に難しくさせた。最初の数日間がたつと、写真はバスの中に座っている人たち、という同じシーンを繰り返すようになった。だが何時間か経過し、彼らを知るようになると、彼らの夢や希望、そして不安を視覚化できるようになった。

チリのアリカで昨年11月撮影(2018年 ロイター/CARLOS GARCIA RAWLINS)

最後の一行がチリ国境を渡るまで、彼らの中で高まる不安を感じることができた。チリに入ると、バスの中の空気はすぐさま変化した。彼らは涙を流し、互いに抱き合った。今回は完全に喜びからだ。

同じベネズエラ人として胸が痛くなったが、9日間にわたる旅に同行する中で彼らの苦しみを目の当たりにした後では、彼らの決断は正しかったのだと思う。人生を変える絶好のチャンスを彼らはものにしたのだ。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below