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コラム

コラム:EUの女性取締役登用法案、踏み込み不足否めず

[ミラノ 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州連合(EU)が10年にわたる論争の末、上場企業に対して一定割合以上の女性取締役を登用するよう義務付ける法案に合意した。これは正しい方向への一歩だ。しかし慢性的な女性比率の低さに対処できるかと言うと、踏み込み不足の感が否めない。

  6月8日、 欧州連合(EU)が10年にわたる論争の末、上場企業に対して一定割合以上の女性取締役を登用するよう義務付ける法案に合意した。写真は欧州航空大手エールフランスKLMの経営幹部ら。2021年9月にシャルルドゴール空港で開かれた同社式典で撮影(2022年 ロイター/Gonzalo Fuentes)

7日に合意した法案は上場企業に対し、取締役会で人数が少ない方の性――通常は女性――の比率を、2026年6月末までに最低40%とするよう義務付ける。企業が執行取締役と非執行取締役、両方の取締役会を有する加盟国については、この下限を全体で33%とすることを認める。

EU共通の規則はとっくに採用されてしかるべきだったが、ドイツなど主要国の反対によって遅れていた。ジェンダー平等指数によると、2019年時点で取締役会の性別比率について規則を導入している加盟国はフランス、イタリアなど6カ国にとどまっていた。これらの国では2010年に女性取締役会の比率がわずか10%だったのが、拘束力のある法律の施行によって2018年には40%近くに高まっている。

対照的に、こうした規則を導入していないEU加盟国では女性取締役の比率が約10年で1.5ポイントしか上がらず、15%にとどまっている。非執行取締役の女性比率が平均10%に満たないエストニアやキプロスなどの国では、新たな規則の導入によって状況が改善するはずだ。両国の数字はラーラ・ウオルターズ欧州議員が明らかにした。

今回合意した法案は9月に正式決定される見通しだ。ただ、見かけほど野心的な内容ではない。取締役会にしか女性比率を導入していないため、取締役会に相当する監査役会とは別に執行役会のあるドイツのような国々では、男女格差が放置されかねない。また、執行・非執行役員全体で33%という数字は、フランスとイタリアが既に導入している40%よりも低い。EUの方針では、義務を達成できなかった企業への罰則を各国が独自に決めることを認めているため、罰則を緩く設定する国が出てくる可能性もある。

職業上の適格条件を備えた女性の数が増えていることに照らしても、今回の目標は低すぎるようだ。欧州委員会によると、EU全体で大卒者の60%を女性が占めている。

女性取締役の多い企業の方が業績は良くなることを示すデータにも逆行する。経営陣に女性がいる大企業の方が、そうでない企業よりも好業績を上げる確率が25%高いことが、マッキンゼーの調べで分かっている。ムーディーズによると、女性経営幹部の多い企業の方が信用格付けも高い傾向がある。

女性取締役を増やすことの難点よりも利点の方が大きい以上、EUは率先して取締役会におけるジェダー平等を進めるべきだ。大卒女性が増えているのだから、女性比率50%を義務付けても人材、経験者の不足に直面することはない。EUは完全なジェンダー平等達成の目標期日を設けるべき時に来ている。

●背景となるニュース

*EU加盟各国と欧州議会は7日、加盟27カ国すべての企業に一定割合以上の女性取締役を登用するよう義務付ける法案で合意した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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