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中国の輸出規制で希土類調達が危機、液晶用ガラスの生産綱渡りに

 [東京 15日 ロイター] 中国政府が今年7月、レアアース(希土類)の輸出に急ブレーキをかけたことで、液晶パネルやハードディスクドライブ(HDD)に使われるガラス製品の生産・出荷に支障が出るリスクが浮上している。

 9月15日、中国政府の希土類輸出規制で、液晶パネルなどに使われるガラス製品の生産・出荷に支障が出るリスクが浮上している。写真は中国の国旗。深センで昨年7月撮影(2010年 ロイター/Bobby Yip)

 希土類の生産は中国が世界で9割以上のシェアを握っているが、中国国内の需要拡大もあり、毎年更新される輸出許可枠が来年以降、かつての水準に戻るめどは立っていない。 

 <ガラス研磨剤、価格4倍に> 

 中国政府は今年7月、2010年の希土類の輸出許可枠を前年比4割減の約3万トンにすると決定した。10年下期(7─12月)の許可枠は約8000トンで、前年同期比7割の大幅削減となる。これにより必要量の調達が危ぶまれているのが、液晶パネルやHDDに組み込まれるガラス基板の生産過程で使われる、セリウム(希土類の一種)を原料とする研磨剤だ。希土類輸入で日本トップクラスの双日2768.Tの担当者は「数量的に需要が大きいランタンやセリウムの供給は、かなりひっ迫している状況だ」と話す。 

 セリウムの価格は8月に1キログラム当たり40─50ドルで、前年同月比で4─5倍に高騰。これを受けて、セリウム研磨剤の国内最大手、昭和電工4004.Tは13日、11月出荷分から現行比4倍に値上げすると発表した。同社は「中国の輸出規制で量的な調達が厳しくなると同時に輸入価格も急騰しており、コストアップを転嫁しないと事業が成り立たなくなる」(広報担当者)と説明する。原料の必要量の調達については、「年内、来年の量の確保はある程度めどがたっているが、一部の顧客向けには多少、出荷量を削減する必要が出てくる」としている。 

 <在庫は底をつく懸念も> 

 セリウム研磨剤の国内の主要な需要家が、液晶パネル用のガラス基板を製造する旭硝子5201.Tと、HDD用ガラス基板で70%の世界シェアを握るHOYA7741.Tだ。旭硝子は液晶パネル用ガラス基板で世界シェア25%を有するが、競合する米コーニングGLW.Nや日本電気硝子5214.Tは研磨剤を使用しない製法のため影響はない。旭硝子は「液晶用ガラス基板の生産を当面は続けられるだけの研磨剤の在庫はある」(広報担当者)と説明するが、「当面」の具体的な期間については明らかにしていない。

 旭硝子は、1)生産歩留まりの改善、2)ガラス1枚当たりに使う研磨剤の使用量を減らす──などの方法で供給ひっ迫に対応している。また、セリウムに代わる研磨剤の使用に関する検討も進めているという。HOYAも「HDDガラス基板の供給については必要量を確保できるよう努力している」(広報)と説明している。同社も効率的な利用による使用量の削減を進めるほか、代替品の利用を検討中としている。

 とはいえ、希土類の調達状況が改善する兆しはない。双日の担当者は「希土類の中国国外の需要量は約5万7000トン(年間、以下同)で、これに対する中国の輸出許可枠は2010年で3万トン。リサイクルや他国からの供給が1万トンとみており、世界で差し引き1万7000トンが不足する」との説明する。日本国内ではレアアースの需要としては研磨剤用が年間1万トンと最も多い用途となっており、世界的な供給不足の影響が続くのは必至とみられる。 

 <増大する中国内需、代替調達先の開発急務> 

 中国側の輸出規制に対して、日本政府と経済界はいまのところ「お手上げ」の状態だ。8月末、北京で日中両国政府による「日中ハイレベル経済対話」が開かれ、日本側は希土類の輸出枠拡大を求めたが、中国側は「資源や環境保護の観点から(輸出規制は)やむを得ない」と回答し、日本側の要望を事実上拒否した。9月には、日中経済協会(会長:張富士夫・トヨタ自動車7203.T会長)による「1975年以来、過去最大の人数」(同協会)による財界訪中ミッションがあり、日本側が輸出規制に対する懸念を表明して輸出枠拡大を促したが、中国側から輸出量拡大に向けた言質は得られなかった。

 希土類は、研磨剤だけでなく、ハイブリッド車や家電に使われるモーター用の磁石(ネオジム、ジスプロシウム)、自動車排気ガス浄化用触媒(セリウム、ネオジム、プラセオジム)、代表的な電子部品で携帯電話などに使われるセラミックコンデンサー(ネオジム)など幅広いハイテク製品に必要不可欠な資源だ。「すでに中国では希土類の需要が6万トン以上で、日本の倍以上」(双日)となっており、内需の急拡大に伴い国外に出せなくなっているという事情もある。

 旭硝子の子会社で、セリウム研磨剤を中国で合弁生産するAGCセイミケミカル(神奈川県茅ケ崎市)の永山俊男・中国研磨剤事業統括室長は「米アップルAAPL.Oのアイフォーンのディスプレーの研摩も中国で行われていて、中国国内の研磨剤市場は非常にホットな状態になっている。中国政府にすれば、(希土類は)自国の需要だけで精一杯ということだ」と指摘する。

 経済産業省は今後の対策として、「海外の鉱山開発、代替材料の開発、リサイクルの促進」(製造産業局非鉄金属課)の必要性を挙げる。「オーストラリアや米カルフォルニア、ベトナムなどで生産再開や鉱山開発の計画がある。オーストラリアでは12年から、カリフォルニアは12年半ばから、ベトナムは13年といった時間軸で採掘が進むと思う」(双日)と、価格高騰により代替地の開発計画もここにきて具体化してきた。ただ、今年末から来年にかけて中国外の開発計画が供給不足の状況を打開するには至らず、希土類の調達は中国政府の方針次第という状況が続きそうだ。

 (ロイター日本語ニュース、浜田健太郎)

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