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焦点:アルゼンチン債務危機、デフォルトでも前回ほど深刻な影響なし

[ブエノスアイレス 17日 ロイター] - アルゼンチン政府と債務リストラ提案を拒否した投資家との争いは、金融市場への復帰を目指す同国の努力を台無しにする新たなデフォルトを引き起こすリスクがある。しかし、経済に壊滅的打撃を与えた2001─02年ほどの影響は出ない見通しだ。

 6月17日、アルゼンチン政府と債務リストラ提案を拒否した投資家との争いは、新たなデフォルトを引き起こすリスクがあるが、経済に壊滅的打撃を与えた2001─02年ほどの影響は出ない見通し。写真は同国の国旗。昨年3月撮影(2014年 ロイター/Paul Hanna)

米最高裁は16日、下級審の判断を不服とするアルゼンチンの上訴を棄却した。米連邦地裁はアルゼンチンに対し、2005年と2010年に1000億ドルの債務交換に応じなかったヘッジファンドへの全額支払いを命じていた。

デフォルトのリスクが高まる中、アルゼンチン政府は自らが「ハゲタカ」と呼ぶヘッジファンドとの交渉をまとめるか、もしくは最高裁の決定を擦り抜ける方法を速やかに探さなければならない。決定は、アルゼンチンが債務再編に応じなかったホールドアウトの債権者への支払いに合意しない限り、他の債権者への支払いはできないという内容だ。

アルゼンチンのアクセル・キシロフ経済相は17日、再編後の債務について国内法の下で国内向けの支払いを実施するため、政府が債務交換に向けた一歩を踏み出したと発表した。経済相はまた、アルゼンチンの弁護士をニューヨークへ派遣し、米連邦地裁のトーマス・グリーサ判事と決定について協議させることも明らかにした。判事自身はデフォルトを必ずしも望まなかったと言いつつ、決定は同国をデフォルトへ近づける形となった。

とはいえ新たにデフォルトが発生しても、2001─02年のデフォルトの際のようにな悲惨な結果を経済にもたらすことはないと、政治家やエコノミストは指摘する。

2002年当時に経済副大臣をつとめたホルへ・トデスカ氏は「経済状況は当時と異なる」と指摘。当時は経済が3年間で10%縮小し、貿易収支は赤字だった上、「コモディティ価格は現在の半分だった」と述べた。

国家と銀行は多額の債務を抱え、産業界は10年間のドルペッグ制によって打撃を受けていた。

2001年末には、システム全体が破綻寸前だと気づいた数千人のアルゼンチン国民が、預金の引き出しを求めて銀行に行列をなした。実際に同国はデフォルトに陥って通貨は暴落、2002年に経済は10.9%のマイナス成長を記録している。

現在に目を転じると、ことしは景気後退が見込まれ、インフレ率も高水準だが、過去10年間は平均6.2%の成長が続いている。

銀行の自己資本比率は低水準ながら健全な状況で、大豆価格の上昇が一因で貿易収支の黒字は縮小傾向にはあるものの、依然として貿易黒字を維持している。国際的に食料需要が増大する中で、アルゼンチンは大豆とトウモロコシの輸出が世界3位だ。

ゴールドマン・サックスのアナリスト、マウロ・ロカ氏は「債務返済能力のないデフォルトではなく、裁判所の決定によるテクニカルデフォルトになるだろう」と話す。

<市場復帰の阻害要因>

ロカ氏をはじめエコノミストは、デフォルトによって景気後退に陥る可能性はあるが、経済崩壊の事態にはならないとみている。

企業や公的金融の金利が上昇し、不透明感を背景に鈍化している消費や投資に一層のブレーキがかかるおそれもある。通貨ペソもさらなる圧力にさらされるだろう。一方でコモディティ輸出はあまり影響を受けないとエコノミストたちは指摘する。

資本市場から締め出されることは何も新しいことではない。アルゼンチンはグローバルな資本市場から10年以上排除されている。キシロフ経済相は17日、対外債務は低水準だとし、ドル換算では国内総生産(GDP)の8%に達する水準だと述べた。

とはいえ、外貨準備高が昨年3割減少するなど減少傾向にあることを考えると、新たなデフォルトが発生した場合に国際金融市場への復帰に向けたアルゼンチンの最近の努力は水の泡と消える。

ここ数か月間アルゼンチンはスペインのレプソルや主要債権国会議(パリクラブ)との間で海外投資家の信頼回復に向けた合意にこぎ着け、株価や債券価格は上昇していた。

ロンドンに拠点を置くキャピタル・エコノミクスのニール・シアリング氏は「全くタイミングの悪い時に起きた」と指摘。アルゼンチン経済の足かせは、政府が資本規制と通貨切り下げを迫られる国際収支の状況だとした上で「市場アクセスさえ回復できていれば、国際収支危機にも終止符が打たれていたはずだ」と語った。

近いうちに市場復帰の見通しがほとんど立たず、外貨準備高が縮小する中で、政府はさらに資本規制や輸入規制を厳格化する可能性があるとピグナネリ元中銀総裁は指摘した。

前出のシアリング氏は、アルゼンチンが経済の総点検を迫られた2001年の状況には陥らないとし、資本市場へのアクセスや財政支出の引き締めなどいくつかの政策調整によって、強い経済状況を回復することは不可能ではないと指摘。「アルゼンチンはそれができそうでできないところが腹立たしい点だ」と話した。

(Sarah Marsh and Eliana Raszewski記者)

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