for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

焦点:EU首脳会議、欧州委員長指名めぐる衝突を回避できるか

[パリ 22日 ロイター] - 26─27日の欧州連合(EU)首脳会議では次期欧州委員長が指名され、今後5年間の政策課題が示される見通しだ。ここに至る道筋は、大半の加盟国首脳を乗せた列車と、キャメロン英首相を乗せた列車がユンケル前ルクセンブルク首相の委員長選出をめぐって衝突するのを、スローモーションで眺めているかのようだ。

 6月22日、今週開催の欧州連合(EU)首脳会議では次期欧州委員長が指名され、今後5年間の政策課題が示される見通しだ。写真は委員長への就任が有力視されるユンケル前ルクセンブルク首相。ブリュッセルで5月撮影(2014年 ロイター/Eric Vidal)

メルケル・ドイツ首相がけん引する列車はEU28カ国の大半を乗せて進み、キャメロン首相の列車からは、ただでさえ数少ない乗客が注意深く飛び降りようとしている。

どちらかが最後に軌道を修正しない限り、政策課題ではなくユンケル氏の指名をめぐって衝突が起こるだろう。いずれの側からも軌道修正の兆しは見えないが、だれかが緊急ブレーキを踏んで対決が先送りされる可能性はわずかながら残る。

首脳会議で衝突が起これば、EU統合への禍根が尾を引くだろう。

キャメロン首相が画策するユンケル氏追い落としが失敗に終われば、英国はEU離脱に一歩近づく。首相は来年の総選挙で再選された場合、2017年にEU加盟継続の是非を問う国民投票を行う前に、大規模なEU改革を進めると国民に約束している。

しかし反EUを掲げる英独立党や、首相自身が率いる保守党内のEU懐疑派がこう主張するのは必至。「守旧派」の連邦主義者であるユンケル氏の委員長就任さえ阻止できない首相が、EU本部から国家に主権を取り戻すことなど望むべくもない、というわけだ。

キャメロン首相の権威は内外で弱まることになる。EUが企業寄りの政策を採用したり、改革を司る欧州委員ポストを英国に与えるなど、「残念賞」を恵んでくれるとしてもだ。

<欧州議会が権力掌握>

ユンケル氏の欧州委員長指名は欧州議会の勝利を意味する。議会は先月の選挙において、主要派閥が欧州委員長の「Spitzenkandidaten(最有力候補者)」を擁立する制度を採用することによって、権力基盤の強化を目指してきた。

キャメロン首相はこう主張する。EU首脳は欧州の民主政治の合法性の源泉は各国政府にあるという原則に則り、リスボン条約でEU首脳に与えられた使命権限を欧州議会が侵害するのを許すべきではないと。

リスボン条約の規定では、EU首脳は欧州委員長の指名において欧州議会選挙の結果を考慮に入れるとしか定められていない。指名された人物は議会の過半数の承認を得る必要がある。

とはいえ列車はもう出発してしまった。キャメロン首相は1年前に「最有力候補者擁立」制度が創出される前に、メルケル首相など懐疑的とされる首脳らと連携しておくべきだった。

EU各国の大使らは昨年何度か行われた非公式の朝食会合で、欧州議会が権力を握ることの危険性について協議していた。これは出席者の1人が明らかにしている。彼らは首脳らに懸念を具申することで合意したが、首脳らは行動を起こさなかったという。

結局メルケル首相その他の首脳らは、自らの派閥が推す最有力候補に同意。今さら後戻りすると国内で混乱を巻き起こすことが避けられなくなった。事実、メルケル首相が欧州議会選の2日後、ユンケル氏支持から距離を置くことでキャメロン首相をなだめようと試みた際にはそうした事態に陥った。

メルケル首相は英国がEUに留まることの重要性を強調してきたが、政治的ダメージを最小限に抑え、何カ月もくすぶり続けかねない欧州機関同志の衝突を避けることにも心を砕いている。

EU首脳会議の準備に当たる外交官は「欧州議会選以来、メルケル首相がキャメロン首相に手を差し伸べる度、彼は翌日決まってもっと大きな騒動を巻き起こした」と憤懣やるかたない様子だ。「メルケル氏はスウェーデンまで出向いてキャメロン首相と共にボートに乗る写真にまで納まったというのに」。

民主政治の合法性をめぐる英政府の主張に同調するEU外交官らも、キャメロン首相の戦術に首をかしげる。例えばユンケル氏の指名拒否を野党労働党が支持した際、首相はしてやったりと言わんばかりのつぶやきをツイッターに投稿した。

ある古参のEU筋は「キャメロン氏はあまりにも強気の態度を示すことで多くの友人と善意を失った」と話す。オランダとスウェーデンの首相は英国側の陣営から静かに立ち去り、残る味方は独裁主義的でEU内でも浮いた存在であるハンガリーのオルバン首相ただ一人になってしまった。

EU首脳会議では通常、全会一致で物事が決まるが、条約では賛成多数での可決も許されている。採決によりキャメロン首相の主張が却下されれば、それが「首相の威信と英国の影響力の指標」(前出の古参EU筋)になるだろう。

そうした結果になればEU機関内の権力バランスにも変化が生じるかもしれない。欧州議会の権力が増し、欧州委員会に対する大国の影響力が従来よりやや薄れることになる。

とはいえ、EUの権力と資金源の大半を握るのは各国政府であるため、劇的な変化は起こりそうにない。四半世紀にわたってEU首脳会議の柱を成し、欧州経済通貨同盟(EMU)においてドイツとフランスの重要な仲裁役を果たしてきたユンケル氏は、大きな加盟国に逆らって欧州を治めるのが不可能なことを、だれよりも知り抜いている。

英国当局者らはユンケル氏に「古臭い連邦主義者」のレッテルを張っている。しかしフェルホフスタット・ベルギー元首相が冗談交じりに言ったように、欧州委員長は連邦主義者であってはならないと主張するのは、次期ローマ法王はカトリック以外から選ぶべきだと言うのに近い。

(Paul Taylor記者)

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up