[ジュネーブ/国連 12日 ロイター] - シリアの化学兵器の国際管理について協議する米ロ外相会談が12日、スイスのジュネーブで始まった。冒頭から双方の間の溝が浮き彫りとなる中、シリアは化学兵器禁止条約(CWC)の加盟に関する文書を国連に提出した。
ケリー長官は会談の冒頭、「オバマ大統領は、外交努力が失敗すればアサド政権の(化学)兵器供給能力を抑制し低下させるために武力が必要になる可能性もあると明言している」と述べ、外交努力が実を結ばなかった場合には武力行使が必要になるとの立場を明確にした。
「これは駆け引きではない。最初にラブロフ外相にも話したが、本物でなければならない。包括的かつ検証可能であり、信頼できるものでなければならない。適切な時期に実施されるとともに、実施されない場合には、その結果どうなるかが盛り込まれる必要がある」としている。
一方、ラブロフ外相は「われわれは、この問題の解決策がシリアへのいかなる攻撃も不要にするという事実から進んでいく」と発言。「オバマ米大統領も述べているように、米国はシリア問題について平和的解決策を模索すべきとの立場であると確信している」と述べた。
シリアのアサド大統領はロシアのテレビに対し「シリアは向こう数日以内に、国連および化学兵器禁止機関(OPCW)に申請書を提出する」と表明。「申請書には、条約署名に必要な技術的な資料が含まれる。その後、化学兵器禁止条約の署名に向けた作業が始まる」とした。
インタビューが放映された数時間後、国連のハク報道官は、シリアから化学兵器禁止条約への加盟に関する文書を受理したことを明らかにした。
シリアのアサド政権は、米国による軍事介入回避に向けた措置の一環として同条約への加盟を確約している。同条約は加盟国に化学兵器の完全な廃棄を要求するもので、非加盟国はシリアやエジプト、北朝鮮など7カ国のみとなっている。
OPCWは化学兵器禁止条約に基づき設立された国際機関で化学兵器の廃棄などを監督するなどの活動を行っている。
これに対し、米国務省のハーフ副報道官は、シリアが化学兵器禁止条約に加盟するための申請書を提出したことは非武装化の代替にはならないとの立場を示し、シリアの化学兵器の国際管理下への移管をめぐるロシアとの協議が続けられている間は武力行使の選択肢は排除されないと述べた。
米政府は慎重姿勢を崩しておらず、軍事介入回避に向けた単なる時間稼ぎを行わないよう、シリアをけん制した格好。
またオバマ米大統領はこの日、このところ対応に追われていたシリア問題から国内問題へと軸足を移す考えを示した。
シリア問題については「(現在外相会談を行っている)ケリー国務長官とラブロフ露外相、その他の関係者が具体的な結果を出すと期待している」と述べた。
<安保理決議案の青写真となるか>
ロシアのコメルサント紙によると、ロシアが策定した化学兵器の国際管理案は4段階で構成されている。まず、シリアによる化学兵器禁止条約への加盟、次に兵器の生産・保管場所の報告、その後に査察官の受け入れ、最後に兵器の破棄を誰がどのように実施するのかを査察官と共に決定する段取りを描く。
米ロ外相会談を前に、匿名を条件にブリーフィングを行った米当局者は、ロシアの提案が「本物であるかどうかを見極めること」が会談の目的だと明らかにした。
外相会談で化学兵器の国際管理に関する青写真について合意し、主要部分が国連安保理の決議案に盛り込まれることを米国側は期待しているという。
ロシアの提案を冷戦後の米ロ間の武装解除協定に沿って具体化するための突っ込んだ協議が行われる場合に備え、ケリー長官には多くの専門家が同行している。協議は2日間の予定だが、延長される可能性もある。
また長官に同行している米当局者は、シリアの化学兵器インフラに関して米情報機関が作成した資料をロシア側に提出すると述べた。
その上で「紛争地域で化学兵器を廃棄することは可能だか、困難かつ複雑」だと指摘した。
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