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焦点:イラン核科学者殺害、イスラエル関与なら「対決不可避」

[エルサレム 11日 ロイター] イランの首都テヘランで11日に核科学者が爆殺された事件は、イスラエルの対外特務機関モサドが関与していた場合、同国による対イラン工作の新たなケースとなり、核開発問題をめぐるイラン情勢がさらに緊張する可能性がある。

 1月11日、イランの首都テヘランで核科学者が爆殺された事件は、イスラエルの対外特務機関モサドが関与していた場合、核開発問題をめぐるイラン情勢がさらに緊張する可能性がある。写真は爆発現場を警戒する治安当局者(2012年 ロイター/IIPA/Sajad Safari)

この事件は、イラン核科学者のムスタファ・アハマディロウシャン氏(32)が乗った車にオートバイが接近し、ドアに取り付けられた爆弾が爆発。同国メディアによると、同氏と運転手の2人が死亡した。

イスラエル当局はこれまで起きた類似のケースと同様、事件への言及を避けているが、イラン側は直ちにイスラエルが関与していると非難した。

専門家らは倫理的な立場からこうした攻撃を批判し、暗殺の長期的な効果を疑問視している。しかし、こうした「闇の作戦」を長年続けてきたイスラエル当局は、自国防衛には不可欠な役割を担っていると考えている。

核開発や弾道ミサイル開発を推し進めるイランに関しては、モサド元長官のメイル・ダガン氏が最近のテレビインタビューで、「彼ら(イラン)が思うようなスケジュール通りに行っていない」と、一連の妨害工作の効果を暗に語っている。

アハマディロウシャン氏のような科学者の殺害は、明らかにイラン側の核専門家の数を減らすものと言える。またイスラエル当局者は、他の専門家にもパニックが広がり、モサド情報員が呼ぶ「バーチャル・ディフェクション(実質的な離脱)」現象も生み出すと指摘する。

イラン情勢に詳しいこの当局者はロイターに対し、「大量の辞職者が出るというわけではないが、自分たちの安全が脅かされるという妄想が拡大する」と述べ、核開発から距離を置く専門家が増える効果などが期待できるとの見方を示した。

<殺害の歴史>

国際原子力機関(IAEA)は9日、イランが中部コム郊外フォルドウの地下施設で、ウランの濃縮作業を開始したと発表した。この動きには、主要国のほか、中東湾岸諸国の多くも、核兵器に転用される可能性があるとして非難。一方でイラン側は、ウランを医学研究の原子炉に使用すると主張し、平和的な利用が目的だと訴えた。

過去2年間でイランの核開発にかかわる専門家が殺害されるのは、アハマディロウシャン氏で少なくとも3人目。

イスラエル軍のスポークスマンはフェイスブックに、「誰がイランの科学者を殺害したのか分からないが、その件で涙を流すことはない」と投稿。また、モサド元幹部のイラン・ミズラヒ氏も、イランで活動する国はイスラエルだけではないとした上で、「反イランの動きは非常に強力で、そうした勢力はイラン国内で活動する能力を持っている」と語る。

イスラエルはこれまで、国家として暗殺や脅迫に関与してきたことを認めており、最近では1995年にマルタでイスラム過激派組織のパレスチナ人指導者が殺害された事件のほか、2010年にドバイのホテルでイスラム原理主義組織ハマスの司令官が殺害された事件への関与が疑われている。

ミズラヒ氏は「テロと戦う場合、テロ組織の幹部を標的とすることには賛成だ」と語り、暗殺行為を正当化している。

<逆効果>

イランの核開発をめぐって、イスラエルは米国と同様、軍事攻撃に踏み切る可能性を示唆している。しかし、両国とも中東地域のさらなる不安定化は望んでおらず、専門家も、イスラエルの単独攻撃1回でイランの核開発計画を消滅させることはできないとみる。

また、暗殺作戦には計算できないリスクもある。イスラエルは1997年、ハマス指導者殺害ためにヨルダンの首都アンマンに刺客を送ったが、発覚して当局が逮捕。当時1期目だったネタニヤフ首相は、イスラエルで収容されていたハマスの精神的指導者アハメド・ヤシン師を釈放し、ヨルダンとの関係修復を図らざるを得なくなった。

イランは、昨年11月に同国の革命防衛隊幹部が殺害された事件について、イスラエルの妨害工作であるとの見方を否定。しかし、今回の事件では直ちにイスラエルの関与を非難しただけでなく、死亡したアハマディロウシャン氏が中部ナタンツのウラン濃縮施設で勤務していたという情報も明らかにした。

テルアビブ大学の中東専門家ウジ・ラビ教授は、イランの情報公開の姿勢について、国内外に論理的根拠や正当な理由を提供し、将来の政治的・軍事的な実力行使に備えていると指摘。

イランは現在、欧米諸国が同国の原油輸出に制裁措置を取ればホルムズ海峡を封鎖すると警告しているが、ラビ教授は「避けられない対決の場」として、こうした問題がイスラエルと欧米諸国によるイランへの空爆に波及する可能性があると予想している。

(ロイター日本語ニュース 原文執筆:Dan Williams記者、翻訳:橋本俊樹、編集:宮井伸明)

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