[ワシントン 25日 ロイター] 米シンクタンク、科学国際安全保障研究所(ISIS)は25日、核開発疑惑が深まるイランについて、2012年に核兵器を製造することはないとの見通しを示した。核兵器製造に必要なだけのウランを生産する能力を保有していないことが理由だという。
ロイターが入手した報告書の草案によると、ISISは「イランのウラン濃縮能力は限定的であることから、同国が早急に核兵器を製造する可能性は低い」と説明。イランが核爆弾開発を決定したとする証拠は出てきていないとし、イランが核兵器製造に必要なウランの量を早急かつ秘密裏に生産できるようになるまで、そのような証拠は入手できないとした。
ISISは、イランの核開発を調査するには情報機関の活動が「極めて重要だ」と強調。一方で、イランへの軍事攻撃や核科学者の暗殺などは、同国の核開発阻止には有効でないとの見方を示し、一般市民を標的にした報復攻撃など「深刻な結果」を引き起こす可能性があるとした。イランの核開発計画には数千人の専門家が関与していることから、暗殺行為の効果は見込めないとの考えを示した。
ISISは核問題専門家のデービッド・オルブライト氏が所長を務める研究機関。報告書は、ISISが米国立平和研究所(USIP)の委託を受けて作成するもので、現時点では一般公開はされていない。
国際原子力機関(IAEA)は昨年11月の報告書で、イランが核兵器設計に取り組んでいるとみられることや、秘密裏に研究を進めている可能性を指摘していた。米国や欧州連合(EU)はイランに対する制裁措置を決定する一方で、イランは原油輸出に制裁が科された場合のホルムズ海峡封鎖を警告するなど、緊張状態が続いている。
ISISは、イスラエルがイランの核施設を攻撃するとの懸念や対イラン制裁については、同国の核開発計画に対して抑止効果があると指摘した。
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」