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焦点:英政府の財政緊縮路線は正念場、成長促す支出求める声も

[ロンドン 2日 ロイター] 1930年代の大恐慌以来という長期経済不振に直面する英政策担当者は、1930年代当時の状況から教訓としての打開策を探し求めている。しかしその答えは、財政緊縮に専念している政府にとって、意にそぐわないかもしれない。

7月2日、1930年代の大恐慌以来という長期経済不振に直面する英政策担当者は、当時の状況から教訓としての打開策を探し求めている。写真は6月撮影(2012年 ロイター/Paul Hackett)

保守党と自由民主党の連立政権が発足した2010年5月、大規模な財政赤字を減らすことが最優先の目標だった。それが今では経済成長が政策課題として浮かび上がりつつある。

英経済は過去4年で2回目の景気後退局面にあり、ユーロ圏の債務危機によって国内企業の投資意欲や雇用創出の前途はさらに覚束なくなってきた。イングランド銀行(英中央銀行、BOE)のキング総裁は、ユーロ圏危機のせいで英経済の低迷が一段と深刻化するリスクがあると警告し、民間需要だけでは経済成長には不十分というのが1930年代の教訓だとの見方を示した。

こうした発言は、景気回復で民間セクターを当てにするのが果たして適切なのか、また政府がタブーを破って緊縮路線から公共投資拡大へ軸足を移す必要があるのか、といった疑問を生み出している。

コンサルタント会社キャピタル・エコノミクスのチーフ英国エコノミスト、ビッキー・レッドウッド氏は「政府の赤字削減意思よりも、弱々しい景気回復こそが財政上の主たるリスク、と市場が認識するような地点に、われわれは恐らく立っている」と指摘した。

連立政権発足時にはオズボーン財務相にとって、5年以内に国内総生産(GDP)の11%を超える財政赤字をほぼ一掃するという目標が、暗闇を照らす灯火だった。その後政府が期待したような投資や輸出が成長をけん引するという局面は実現せず、2015年の総選挙前に緊縮策の成果を出すにはもう時間はほとんど残っていない。

政府はこれまでのところ、政策変更をするにしても、投資促進のために借り入れコストを引き下げることに重点を置いている。それはBOEによる国債買い入れであり、また直近ではオズボーン財務相とキング総裁が金融機関に対して打ち出した、企業融資に回す資金を低利で貸し付ける信用緩和スキームである。

ただ、過去において同じような措置が成功した例は乏しい。

<乗数効果高い支出を>

このほかオズボーン財務相は現在、住宅建設やインフラ整備に関して民間セクターが関与するリスクを減らすため、政府保証を拡充する政策を頼みとしている。

しかしユーロ圏の危機が英企業の景況感に致命的な影響を与えているので、元財務省エコノミストのIan Mulheirn氏は、政府が介入して政府自らが新規インフラ投資資金を手当てする必要があると主張する。

これに対して財務省は、今は政府の借り入れコストはほぼゼロだが、もし財政緊縮計画を放棄することで赤字削減の決意に対する市場の信頼が損なわれれば、コストは急上昇しかねないとの見解を持っている。

それでも、たとえ政府が国債増発という手段を望まない場合でも、Mulheirn氏や国際通貨基金(IMF)が提唱するような代替策は存在する。すべての政府支出は等価値ではなく、ある種類は成長をもたらす上でより有効な役割を果たす。経済学の専門用語で言うなら、それは乗数効果の高い支出だ。

Mulheirn氏の見積もりでは、乗数効果の低い支出を削ってその財源をインフラ整備に回せば、10億ポンド規模のこうした支出内容切り替えを行うたびにGDPが7億ポンド増える可能性があるという。

同氏は、テレビの無料視聴や比較的豊かな年金受給者への暖房補助、高所得者の年金拠出に対する課税免除といった項目の支出を削ることができるとの見方を示す。IMFは、公務員給与の支払いを減らすことを提案している。

こうした分野は財政赤字目標達成のためにいずれは支出が削られるだろうと同氏は話すが、今すぐに減らしてより生産的な投資に財政資金を回すことが、成長の配当をもたらすとみられる。

ただ、目先の政治的な痛みを甘受して長期的な成果を得ようという方法に、オズボーン財務相は今は魅力を感じそうにはない。

財務相は6月、英国名物で低所得層に人気のあるパイの一種である「パスティー」への消費増税案を撤回。最近では燃料税の税率引き上げ延期を発表している。

(David Milliken記者)

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