[ワシントン/アンマン 10日 ロイター] - シリアは10日、ロシアが前日提案していた化学兵器の国際管理を受け入れる意向を示した。一方、軍事行動回避に向けた国際的な機運が高まる中で計画をめぐる米ロ間の溝も浮き彫りとなり、シリア問題を解決に導く国連安保理決議案が承認されるかは依然不透明な情勢だ。
シリアのムアレム外相は声明で「われわれは化学兵器禁止条約への加盟を希望する。化学兵器に関する全ての情報提供など条約が定めたあらゆる義務を順守する用意がある」と表明。「化学兵器の製造を中止し、保管場所を明らかにし、製造施設をロシアや他の国連加盟国の代表に公表する用意がある」としている。ロシアの国営テレビが伝えた。
ケリー米国務長官はロシアの提案について、必要とされる効力を伴っているとの信頼感を得るため、安保理の承認を得る必要があるとの考えを示した。
米政府は同時に、シリア軍事介入決議案の承認を引き続き議会に求めていく方針。
ヘーゲル米国防長官は上院軍事委員会に対し、「この外交的解決策が成功するためには、米国による軍事行動の確かな脅威が継続する必要がある」と述べた。
これに対し、ロシアのプーチン大統領は、兵器の国際管理案について「米国、およびこの問題で米国を支持する国々が武力行使を否定した場合のみ機能する」と主張。米国などが軍事行動の可能性を排除した場合に限り機能するとの考えを示した。
米当局者によると、ケリー国務長官とロシアのラブロフ外相は12日、ジュネーブで会談する予定。
<国連安保理決議案の行方は不透明>
米国やその同盟国は、ロシアの提案について懐疑的な姿勢を崩していない。オバマ大統領は外交的解決策を模索しながらも、軍事行動に関する決議案の承認を議会に求め続けることでシリアへの圧力を維持する構えだ。
フランスは化学兵器の管理、廃棄に向けた枠組みを定めた拘束力のある安保理決議を望んでおり、シリアがそれに違反した場合には「極めて深刻な」結果に直面するとしている。
仏当局者によると、フランス案は、アサド政権が非協力的な場合に軍事行動を認めることで、ロシアの提案に効力を持たせようとしている。
英米も決議案の策定を急ぐ意向を示している。
ロシアの要請を受け、国連安全保障理事会はこの日、緊急非公開会議を開催する予定だったが、開催を要請したロシアが取り下げたため取り止めとなった。
ロシア外務省によると、ラブロフ外相はファビウス仏外相に対し、ロシアが化学兵器の国際管理実現に向けた国連決議案を策定する意向を伝えた。その上で、シリア政府が化学兵器を使用したと断定する安保理決議の採択は容認できないと伝えた。
オバマ米大統領、キャメロン英首相、オランド仏大統領の3カ国首脳はシリア問題をめぐって電話協議し、外交的解決を図ることが望ましいが、引き続き「あらゆる対応」への準備を進める必要があるとの意見で一致した。米ホワイトハウスが明らかにした。
複数の上院議員によると、オバマ米大統領はこの日、軍事行動決議案の採決を先送りするよう議会に要請した。シリアに化学兵器の受け渡しを促すための時間をロシアに対し与える狙いがある。
上院軍事委員会のカール・レビン委員長は記者団に対し、「オバマ大統領はシリアの真剣さと、化学兵器廃棄に向けたロシアの意欲を見極めたい意向で、そのための時間を求めている」と述べた。
オバマ米大統領は同日予定している国民向け演説で、米国が軍事介入に踏み切る構えを見せていたことがシリアに圧力をかけ、化学兵器を国際管理下に置くとのロシア提案の受け入れにつながったとの考えを示す。自身の軍事介入計画が外交的解決の可能性を導き出したとし、一方で議会に対しては軍事介入を認める決議案を承認するよう引き続き求めていく方針を説明する。
演説は東部時間午後9時(日本時間11日午前10時)に行われる。
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」