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焦点:国の命運握るヤンゴン開発、日本の協力で描く「メガシティー」

[ヤンゴン 11日 ロイター] - ミャンマー最大の都市ヤンゴンにある市庁舎最上階の1室。会社員がすし詰めのバスで帰宅する時間が過ぎても、この部屋は毎晩遅くまで明かりが消えることはない。

9月11日、改革の進むミャンマーの経済は、ヤンゴン開発がその命運を握っている。同市で7月撮影(2013年 ロイター/Soe Zeya Tun)

そこにいるのは元陸軍少佐のトー・アウン氏(46)。同氏は改革が進むミャンマー最大の責務の1つを偶然にも負うことになった。それは、ヤンゴンを一都市から東南アジア最大級の都市へと変貌させる開発計画だ。

都市計画を担当する部署は2011年にトー・アウン氏が設置するまで存在しなかった。軍事独裁政権下で約半世紀続いた不況の象徴とも言えるヤンゴンは、今も電力不足、洪水、交通渋滞、汚染、スラム問題などを抱え、同氏の任務は誰からもうらやましいと思われるものではない。

約500万人の市人口は、急速な都市化の推進で2040年までに倍増するとみられている。雇用創出の見通しは、多数の村民たちが受け入れ準備ができていない都市に流入することにつながる。

「問題は山ほどある。優先すべきものは何か」。トー・アウン氏の悩みは尽きない。それでも、いくつかの答えは日本の国際協力機構(JICA)の協力で作成された852ページに及ぶ計画書にある。

このヤンゴン・マスタープランは、12月に最終決定される予定だ。ただ、市内の地価上昇が海外からの投資を遠ざけているほか、ヤンゴン市とJICAの密接な協力関係が、インフラプロジェクトの入札で日本企業に有利に働くとの懸念も生まれている。

旧首都のヤンゴンは同国最大の商業都市で、マスタープランによると、ヤンゴン地域は2010─11年の国内総生産(GDP)の約22%を占めた。また、同市はミャンマー最大の港を有し、観光客の玄関口にもなっている。

つまり、同国経済はヤンゴン開発がその命運を握っている。JICAは、103の「優先プロジェクト」に54億ドル(約5400億円)が必要と試算し、専門家は長期的にはさらに数十億ドル必要との見方を示している。

<恩恵>

JICA主導のマスタープランには100万戸規模の住宅建築、沿岸地区や現空港南部の中核ビジネス地区(CBD)の整備など、様々なプロジェクトがある。ヤンゴン市開発委員会(YCDC)はすでに、CBD内の借地権入札に参加する国内外の企業を募っている。

こうしたプロジェクトからの恩恵を期待しているのが日本だ。同国は今年に入って、1761億円の対日延滞債務を免除したほか、資金援助の拡大を表明した。

米国の都市設計家のアンドリュー・グルブランドソン氏は、日本の援助機関は欧米と違い、二面的なアプローチを行っていると説明。「第一に彼らは支援を行い、第二に投資機会を特定したいと考えている」と述べた。

ヤンゴン市とJICAは今年2月、上下水道の整備に関するセミナーを開いたが、参加者はクボタ6326.Tなどの企業や東京都職員らで日本関係者のみだった。

大韓貿易投資振興公社のSungmin Ko氏は、「オープンな入札であっても、日本企業の方が時間も情報も多い」とし、ヤンゴンのプロジェクトの入札は日本企業が優位に立っていると分析する。

一方、JICAの三條明仁氏は、ミャンマー政府関係者が日本企業に個人的に好意を示したとしても、入札が成功するとは限らないと指摘する。

8月、ヤンゴンに新設される国際空港の建設・運営事業は韓国の仁川国際空港を中心とする企業連合が受注。日本勢は新関西国際空港会社などが共同で入札したが敗れた。三條氏は「わわわれにとって、この結果は不運だった」と振り返った。

<貧困>

ヤンゴンでは、都市部の貧困拡大が大きな問題となっており、国連人間居住計画によると、少なくとも市民の40%が貧困層だとされている。急速な人口増加は医療・教育制度を圧迫し、公立学校に通えない子どもも増えている。

貧困問題も開発を急ぐトー・アウン氏の肩に重くのしかかる。それでも、18年間軍に所属していた同氏は「私の夢はヤンゴンを都市開発のモデル都市にすることだ」と語る。

同氏の夢は実現不可能に聞こえるかもしれない。ただ、経済停滞などによって、ヤンゴンには他のアジアのライバル都市より有利な点も残された。歴史的な建物は荒廃しているが取り壊されておらず、開発業者に魅力的な緑地地帯も整備されていないからだ。

しかし、時間は刻一刻と過ぎている。新たな開発エリアの多くが生産性の低い農地であるものの、さまざまな憶測が土地の価格を引き上げていると、トー・アウン氏は言う。「われわれは地価をコントロールできない」

<鉄道>

ヤンゴンでは、公共交通機関の拡充も課題の1つ。通勤客の少なくとも8割が旧式の路線バスに頼っており、ピーク時間以外でも混雑している。

他のアジアの都市ではバイク通勤という手段もあるが、ここでは選択肢にない。旧軍事政権がバイクを使った暗殺行為を避けるため、バイクを禁止したという。トー・アウン氏は、混雑の激しいヤンゴンの道路でバイクを解禁することは「不可能」と話す。

ヤンゴンには環状線を含む鉄道路線があるが、古い車両を使っており、スピードも遅く利用客は少ない。そこで、日本の専門家が環状線の近代化に向けた調査を行っている。

JICAの三條氏は、鉄道に関する契約は結ばれていないものの、日本は「このプロジェクトにぜひ参加したいと考えている」と述べる。

ヤンゴンに欠けているものは、他にも2つある。第一に資金だ。2012─13年の開発委員会の予算は約5600万ドル。人口がヤンゴンの半分しかない米シカゴで昨年承認された予算は65億ドルだった。

さらに、米ニューヨークのブルームバーグ市長や、ジャカルタ特別州ジョコ・ウィドド知事らのようなカリスマ性を持った市長がいないことも、同市に足りないものとして挙げられるだろう。

(原文執筆:Andrew R.C. Marshall記者、翻訳:野村宏之、編集:橋本俊樹)

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