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焦点:米緩和縮小見送り、インドの改革を遅らせる可能性も

[ムンバイ 19日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が緩和縮小を見送ったことで、これまで下落基調にあったインドルピーは息を吹き返し、インド中銀が20日に決定する金融政策では実行中のルピー安是正策を一部後退させる余地も生まれた。

9月19日、米緩和縮小見送りで、これまで下落基調にあったインドルピーは息を吹き返し、インド中銀が20日に決定する金融政策では実行中のルピー安是正策を一部後退させる余地も生まれた。写真はインドルピーを数える男性。8月撮影(2013年 ロイター/Vivek Prakash)

しかし、インドの危機が最悪期を脱したとのシグナルを送ることにもなりかねない。そうなればただでさえ来年5月の総選挙に気を取られている政策当局者が、より投資家に開かれた経済の実現に向けた厳しい改革をないがしろにするリスクもはらんでいる。

ニューデリーの財務省では一部当局者が、夜遅くまで残り、米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定をテレビの生放送で確認。安堵(あんど)の胸をなで下ろした。

これまであった米緩和策が縮小されるとの懸念が新興国市場からの資金流出を引き起こし、大幅な経常・財政赤字に苦しむインド経済と困難な経済改革に向けた意欲に乏しいインド政界の現状をあぶりだしていた。

通貨ルピーは8月に年初来で約2割下落し、過去最安値を更新。中銀などのインド当局は緊急策を打ち出し、ルピーはそれ以降、11.4%上昇。18日に発表された米緩和縮小見送りの決定を受け、ルピーは19日に2.6%上昇した。

クレディ・スイスのシンガポール駐在エコノミスト、Robert Prior-Wandesforde氏は「次に米緩和縮小が懸念されるまで政策当局者の緊張が緩む危険は確かにある。彼らは、米緩和縮小見送りを単に2─3カ月の猶予とみなすべきだ」と指摘。「インド中銀は金融環境を緩和するために米緩和縮小見送りを利用すべきではない。ルピーは1カ月分の下落を取り戻しただけであり、間違いなく強固でもなく、安定もしていない」としたうえで、「私の感覚では、インド中銀は主要金利に手を付けないだろうが、声明のトーンは幾分ハト派的になるのではないか」と述べた。

インド財務省の首席経済アドバイザー、ディパク・ダスグプタ氏は、FRBの決定について「大きなサプライズ」であり、「非常に前向きな決定だ」と評価。短期的にインドの経済成長率を0.5%ポイント押し上げる可能性があるとの見方を示した。

同氏は「成長率が2014年3月までに6.5%に加速するチャンスが生まれた」と指摘。「持続可能なレベルで成長率を押し上げる方策を再考する機会となる」と述べた。

今年4─6月期のインド成長率は4.4%となり、4年ぶりの低水準となった。

<経常赤字に新たな圧力>

しかし、インド経済の根本的な不均衡は変わらず。シン首相率いる連立政権も基盤が弱く、保険分野をめぐる外資規制緩和や製品・サービス税の実行といった、不均衡を修正するとみられる改革を推し進める機運に欠けている。

通信やエネルギーといった産業における外国からの投資自由化など、最近の改革は前向きにとらえられているが、税制や労働法制の大幅な刷新の代わりとはならない。

インドの事情に詳しい外資系ヘッジファンドのマネジャーは「一段の改革の必要性や堅実なマクロ経済政策に関し、米緩和縮小見送りがインドの政策当局者に間違ったシグナルを送るのではないかと心配している」と指摘した。

インド経済は以前のような2桁成長から後退。インフレ率は上昇し、企業は苦境にあえぎ、銀行資産の質は悪化している。経常赤字は過去最悪の水準にあるほか、国の信用格付けもジャンク級すれすれだ。

米緩和縮小見送りを受け、インドの主要輸入品目である原油や金の価格も上昇しており、インドの経常赤字は新たな圧力にさらされる可能性があるほか、原油価格の高騰はインフレ率を押し上げ、補助金の拡大につながり、インド財政を圧迫する。

野村のエコノミスト、Sonal Varma氏は、米緩和縮小見送り後に出したリポートの中で、「政策当局者は充足感を抱き、改革機運がしぼむかもしれない」と指摘した。同氏は今年のインド経済成長率が4.2%にとどまると見込んでいる。

就任間もないインド中銀のラジャン総裁は、20日に金融政策に関する初めての声明を公表する。今回のFOMCの結果を見極めるため、総裁は政策決定会合を2日延期した経緯があり、ルピー下支え策の一部を緩和し始める可能性がある。

インド財務省高官は、FRBの決定には安堵したが、最終的には米緩和縮小は開始されることになると指摘。米緩和縮小が始まった際にはインド経済の構造が改善していることを望む、と述べた。

高官は「得られた教訓とは、改革を進め、成長を押し上げ、経済を強化することだ」と語った。

( Tony Munroe記者 執筆協力 Subhadip Sircar, Swati Bhat, Neha Dasgupta and Archana Narayanan in MUMBAI and Rajesh Kumar Singh, Manoj Kumar and John Chalmers in NEW DELHI;翻訳 川上健一;編集 吉瀬邦彦)

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