[北京 19日 ロイター] -在北京米国商工会議所は19日、大気汚染が原因の煙霧により、中国で活動する外国企業の多くが現地で働く幹部の確保に苦労しているとする調査結果を公表した。
中国北部の各都市で活動する企業を対象とした年次調査によると、回答した外国企業365社のうち約48%が、大気汚染への懸念から人材の確保が難しくなっていると回答した。
調査報告書は「(汚染問題が)幹部人材の採用やつなぎとめの障害になっている」と指摘。煙霧が採用活動の障害になっているとの回答の割合は2010年調査の19%から大幅に拡大した。
中国の大気汚染問題が自身や家族の健康に及ぼす影響を懸念する現地駐在の外国人幹部が増えており、これを理由に中国を離れる経営幹部も相次いでいる。特に中国北部は石炭や鉄鋼、セメントの生産設備が集まっているほか、冬季には暖房用に石炭を使用することが多いため、大気汚染が最も深刻だ。
こうした事情を背景に、中国の李克強首相は環境汚染問題に「宣戦布告する」と発言している。
国際的な人材紹介会社ロバート・ウォルターズ・チャイナの北京オフィスのアソシエイト・ディレクター、ルル・ヂョウ氏は、一部の外国人幹部は大気汚染問題を報酬をつり上げる材料に利用していると指摘する。
パナソニック6752.Tがこのほど労働組合に対し、大気汚染を理由に中国駐在者の手当てを見直すと伝えるなど、企業の間では大気汚染問題に対する懸念が高まっている。
<経済減速が依然最大リスク>
在北京米国商工会議所の報告書は、中国経済の減速が依然として企業にとって最大リスクとなっていると指摘。過去数年と比べて営業利益率が停滞もしくは低下している企業の数が増えており、その結果、中国を「投資対象となる可能性がある多くの選択肢の1つにすぎない」とみなす外国企業が増えているとした。
とはいえ、調査対象となった企業の大半は向こう2年間のビジネス環境見通しを引き続き楽観視しており、米国商工会議所のマーク・デュバル中国部門会頭は「こうした楽観的な見方は、会員企業の困難に対処する能力に関する自信が原動力になっている」と述べた。中国の経済改革に対する会員企業の期待も高いという。
一方、回答社の2割が多国籍企業にとって中国のビジネス環境は悪化したと回答。価格操作や汚職に対する当局の調査では、医薬品や粉ミルクを扱う多国籍企業や米ハイテク企業がターゲットとなっている。
さらに回答社の77%は、中国の国有企業優遇政策が自社に悪影響を与えているとして不満を示した。
このほか、企業秘密の保護や社名の盗用、法律や規制の運用をめぐるあいまいさも中国ビジネスをめぐる懸念となっている。
(Natalie Thomas記者、執筆協力 Ritsuko Ando inTokyo 翻訳:川上健一 編集:山川薫)
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