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焦点:中国がEUに秋波、協力関係の「新時代」幕開けか

[ブリュッセル 1日 ロイター] -ユーロ圏危機が頂点に達していたとき、ある中国当局者は、欧州は観光客にとっての「素敵なテーマパーク」に成り下がりつつあると皮肉を言っていた。しかし、この見方は過去のものだ。中国政府は現在、世界最大の貿易圏である欧州との関係を再構築しようとしている。

4月1日、中国政府は現在、世界最大の貿易圏である欧州との関係を再構築しようとしている。写真右は中国の習近平国家主席。ベルギー北部ヘントで代表撮影(2014年 ロイター)

中国政府はこのところ、欧州の事実上の首都であるブリュッセルでの強い影響力が必要との認識を強めている。そのことは、習近平国家主席が今週、中国首脳として初めてブリュッセルにある欧州連合(EU)の本部を公式訪問したことでも裏付けられた。

習国家主席とファンロンパイEU大統領らとの会談では、具体的な中身の濃い話し合いは行われなかったが、EU当局者らによると、両者のトーンが対立から協調へ変わったこと自体が、中国と欧州の新たな関係の幕開けになる可能性がある。

中国の在ブリュッセル大使館が主にベルギーとの関係を取り扱う地味な存在で、大使が昼食会などへの招待も断っていたのは遠い過去のことだ。今年1月に駐EU中国大使に着任した楊燕怡氏は、現地のカクテルパーティーに頻繁に顔を見せ、携帯電話の番号も記載された名刺を配りながら、欧州と中国の関係について積極的に話して回っている。

EU駐在の中国使節団は現在約90人で、米IT大手ヒューレット・パッカードのビルだったブリュッセル市内の大きな建物を拠点に活動している。大使らは中国の旧正月時にはブリュッセルで働く外交官らを招いてパーティーを開いたほか、ベルギーへのジャイアントパンダ2頭の貸与でも尽力した。

楊大使はロイターの取材に「欧州と中国の協力関係に火種がないなどという幻想は抱いていない。見解の相違や論争は当たり前で、解決は可能だ」と語った。

<ワシントン、北京、ブリュッセル>

こうした言葉は、1年前には聞かれなかった。中国とEUは当時、太陽光パネルのダンピング(不当廉売)問題をめぐって貿易戦争寸前の状態にあったからだ。

中国と欧州の間で史上最大の貿易摩擦となったこの問題は、約6週間にわたる協議の末に和解案で合意したが、中国側には、EUにも自国の利益に対する影響力があることを再認識させる格好となた。

実際に欧州委員会や欧州議会は、人口約5億人のEU域内に関する政策を決めるだけでなく、世界中に欧州の影響力を働かせることを目的とした組織でもある。

元米高官の1人は「国際的な規制や意思決定に関して言えば、世界で重要な都市はワシントン、北京、そしてブリュッセルの3つだ」と述べた。

中国の当局者らは、ユーロ圏危機の最中にはこうした見方に懐疑的な目を向けていたものの、今ではEUの重要性を十分認識している。

中国の当局と企業は、ルクセンブルクの欧州司法裁判所による判決やEUの貿易政策に関する決定に目を光らせ、EUならではの用語や商習慣を学び、取るべき最善策を定めている。

中国企業はかつては欧州での交渉事は商務省任せだったが、世界第2位の通信機器メーカーとなった華為技術(ファーウェイ)002502.SZは今では現地に自社の渉外部門を持っており、他社もそれにならいつつある。

また、新華社や人民日報、チャイナ・デイリーなど中国の国営メディアも、貿易や金融、法律など多岐にわたる中国とEUの関わりを追うべく、現地でのプレゼンスを拡大している。

例えば新華社は現在、EUに50人規模の記者を派遣しているが、これは世界のどの報道機関に比べても多い人数だ。

2009年にブリュッセルに事務所を開いたファーウェイの欧州渉外部門の責任者、レオ・サン氏は「移ってみてブリュッセルの重要性に気が付いた。なぜならここが欧州の中心であり、すべての首都は結び付いているからだ」と語った。

<残る火種>

ブリュッセルでは中国の政府機関もPR会社やロビー会社を使って活動しており、商務省は、EU当局の調査対象になった中国企業を支援するなど万全の体制を敷く。

しかし、関係の再構築に向けては、避けては通れない痛みもある。

EU当局者らは、ブリュッセルでの高官レベルでの会談後、中国当局が記者会見を開きたがらないことが、常に火種になっていると指摘する。EUは、メディアの取材を積極的に受け入れる姿勢を重視しているからだ。

昨年にブリュッセルで行われた閣僚級会合後の記者会見では、EU側は中国当局者を車まで見送る代わりに、追加の質問に受け答えした。

また欧州委員会は、こうした会談などでは内容や発言が正しく通訳されるよう、EUの最良な通訳者を北京からブリュッセルに戻すよう主張している。

EUは、中国が求める自由貿易協定(FTA)についても、中国政府の補助金を受けた安い輸入品が欧州市場にあふれることを警戒している。

ブリュッセル現代中国研究所の政治アナリスト、ダンカン・フリーマン氏は「(中国と欧州の)関係には深い溝と摩擦がある。しかし、これらは正常化しつつあり、当然のことに過ぎない」 と語った。

(原文:Robin Emmott記者、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)

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